鉄騎の破城槌 麗しき工兵は戦場に橋を架ける

米ちゃん

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PROLOGUE

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​ よく晴れた空の下、エルフ耳の女工兵ランスローネは、右手の五指を広げて天に翳した。
​「風の精霊ドゥーフ・ヴェトラ、うちに力を貸しや!」
​ 呼応するように中空へ、半透明な裸身の乙女が舞いながら現れた。
 精霊はランスローネに微笑みかけると、歌うような所作で空に溶け込んでいく。
 上空を吹く風の流れが、劇的に変わった。
 川下から川上へ、あるいは不規則に渦巻く乱気流となる。
「よっしゃ、これで敵さんの弓兵も、狙いを定めるんは出来へんで!」
​ ランスローネが腰の鞘から、鍔元に翡翠色の魔宝石が埋め込まれた長剣『アロンダート』を抜き放つ。
「エーリカ、やったれ!」
 ランスローネの号令と共に、女術士エーリカは流れる川面に右手の人差し指を向け、指先に魔力を集中させた。
 指先がカッと発光し、放たれた青白い光が川面を撫でる。
 パキパキパキッと硬質な音が響き渡り、本来凍るはずのない流水が一瞬にして凍結し、対岸へと続く、太い氷の橋が形成された。
​「よっしゃ行くでぇ!」
​ ランスローネがアロンダートの発光する刀身を振り下ろすと、騎士ロランドが角笛を吹き鳴らし、待機していた冒険者たちが一斉に動き出す。
 彼らは木杭や木槌、敷板を抱えて氷の橋へと殺到した。

​ ──これが、後に語り継がれる『鉄騎の衝角』と、その隣に立つ『氷の聖女』の最初の伝説である。
 しかし、それはまだ少し先の話。今はまだ、辺境の泥にまみれた街での物語から始めよう。
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