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主人公の話

学校にて、覚醒の時

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 学校に来た。
 とてもとてもざわついている。クソぼっちキメてる俺にとってこれ程辛いものはない。男子からも女子からも睨まれ心が折れそうだ。俺が来るたびざわついている感じがする。キツイ。泣きそう。助けてシスターズ。もうやだ黒天お家帰る!お家帰りたい……。
 廊下を歩くとモーゼの海割りの様に人が割れる。そんなに俺のこと嫌いな人ばっかりなの?泣いていいよね。キャー!とか悲鳴上げてる人もいる。俺は珍獣かよ。君はとても嫌われてるフレンズなんだね!すごーい!すごーい……。すごいし、俺すごいし、すごいからこんな事で心折れないし、真面目に学生するし、部活だって学校来たんだからするし!(涙目)
 教室に入るとシンと雪が降ってる夜みたいに静かになる。俺が入ったからですかそうですか死にたい。死にたくない生きたい。どうせなら童貞を捨ててから死にたい。死因:<絶望>転生すると魔法使い見習いみたいなの嫌なんですけど、どういう当てつけですかねぇ?そんな事考えながら席に着く。うんうんそれもまたアイカツだね。自分のことを愛する活動略してアイカツ。じゃないと俺が死んじゃう。
 机の中にはたくさんのプリントやプリントじゃないものが絶対この便箋間違えて入れてるでしょ、透さん?男じゃん。後ろの席の人に入れようとして間違えたんだな。入れ直しておいてあげよう。俺、優しい。他のも隣の席や前の席に。優しさの塊。さて俺宛なんてあるわけないから渡しちゃってもいいですよね、確認しても『読んでください』って書いてあるだけだったし。毎回入ってるよなそろそろ隣の席の人だって分かってくれないかな。なんか男子の声で「アイツ……やべぇ……」とか聞こえた。気のせい気のせい俺に向けて言ったんじゃない。はいはい自意識過剰。おkおk。
 隣の人来たみたいだな。おっ手紙見つけたか……ってなんだその顔悲しそうな顔。大丈夫?おっぱい揉め?なんで俺のことみたの?えっちょなんで便箋捨てたの。相手に失礼じゃんって睨まれたー!俺睨まれたー!えっごめんて、何かしたの俺。哀しい。黒鉄ディスコ聴こ……はぁよいしょ……。
 キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り響く。さぁ始まりました。誰からも睨まれる事の無い最高の時間。教師には睨まれるけど、オラが何したダァ!という訳でHRだ。前に隣の人に「朝の会……じゃなくてHRって何してるの?」って俺不登校だから聞いたらニヤニヤされた。だって中学の頃朝の会って言ってたんだよ!もう誰もお前を愛さない。
 「起立!礼!ちゃくせっ!」
 おい待て、ちゃくせって、皆座ったあああああ!えっ何これ座ればいいの座るしかないなこれ。っていうか俺が噛んだ時の挨拶じゃんかよおおおおお!!今日なんなの皆して俺のこと虐めてくる。辛いよ。ここにいじめがありまぁす!おめぇの席ねぇから!・ヮ・お前の席ないです?
 「えー今日は何の日だ?」唐突に何を言うんだこの教師。仕事しろよ。つうかお前もちゃくせに文句言わないのかよ。そんなの絶対おかしいよ!
 「「「先生の結婚記念日ー!」」」
 知っるっかっよっ!もうやだ帰りたい。なんでクラスメイトこんなに結託してるの?そんな仲良しなの?っていうか俺のこといじめてガス抜きしてるんじゃないの?うぅありそう。クラスラインとか入ってないから知らねぇよ。もう君らとはやってられんわ!ほなさいなら!

 少し凹みながらホームルームが終わった。
 その後特に突っ込むことも無く、俺も静かに過ごせたため特筆することはなかった。ホント良かった。……良かった……ぞ。そして昼休みに。授業?ははっ、指名された瞬間またクラスがざわついたよ。それだけだよ泣いてないよ。
 「……お腹空いた」そうポツリと言葉を零す。
 周りの人達が全員こちらを見ていた。これが恐怖か、狂気か、苦しみか。何故彼らは俺のことを見ているのだろうか。酷く恐ろしい。目が目玉が俺のことを。すぐに立ち上がり部室に向かった。あ、弁当持ってた。良かった。

─おなかすいたって、それだけ呟いてどこかに行くところ本当にミステリアスだよね。
─ホント、好きだよねぇ。彼もなんで他の人と話さないのかな。
─そういう子なの!ついネガティヴに考える難しいお年頃の子なの!

 聞こえてるぞ、どっかの誰かさんよ。泣くぞ。

───

 わたしが いいこに している と おじさん は えほんを くれた。
 その えほんは あおい みず と あかい おんなの ひとが いた。
 あかい おんなの ひとは ひとの ことを ふんで けって なぐって いたい いたい した。
 わたしは とっても おこった。
 だから わたしは えほんの ひとたち に。
 ぶきを もたせた。
 おもいを ちからに する あかい おんなの ひとを たおす ちから。
 おなじ おもいを ちからに する ちから。
 ありすは とっても いいこ でしょ? ね おじさん。

───

 抉る抉る抉る。トランプ兵達を抉る。腕を剣に変化させ、斬る斬る斬る。トランプ兵達を切断する。
 それは俺達が行ってきたとてもとても長い百年以上続く戦いだ。赤の王が死んでから奴らの侵攻も激しくなっていった。元々温厚だった赤の王のお陰で俺達は技術的に奴らとも互角に渡れる力を得た。トランプ将軍が奇声を上げると赤の女王がトランプ兵をレッドカーペットにしてこちらまで近づいてくる。俺達のギルドマスターは赤の女王を睨みながら仁王立ちしていた。
 「世界の塵芥共よ。久しいのう」
 「ああ、久しぶりだなフアッキンビッチの女王」
 「減らない口だのう。たかが塵芥共に何が出来ると思うのかえ?」
 「てめぇの腐った子宮をファック出来るくらいは、アリスの面倒を見ながらでも出来るぜ」
 「呵呵…愛いやつよのう塵芥共の癖に、名を名乗れ塵芥」
 「すまねぇけどよ、お前に名乗る名前なんてねぇんだよ」
 「ほぉ……言うではないか塵芥共、面白い。妾が快感というのを教えてやろうではないか」
 「すまねぇが、俺はロリコンなんだよ。帰りなBBA」
 マスターそれは余計だよ。そう思うと直ぐに戦闘は再開された。

───誰かの記憶

 「おお、やっと来たか寂しかったぞ一号よ」
 「だーれが一号だよ」
 「くっくっくっ、我が研究に必要不可欠な被験者の一号ということさ」
 「この人の厨二病付き合うのやだな俺」
 「おいおい、くろてん君イヤイヤ言いながら体は正直じゃないか」くぅ~と可愛らしくお腹が鳴る。そりゃ先輩のお腹だ。
 「結花先輩、正直なのは貴女でしょ?ほら弁当ですよ」
 「くっくっくっ、助かるぞ被験者のくろてん君……うまし」
 「そらようござんした」
 先輩、霊山寺結花先輩は名前がオカルトなのに理系の天才だ。どのくらい天才かと問われると、こう返すしかない『二人目のアインシュタイン』それ位有能な人物だ。
 しかし、この先輩何故か研究というのをしない。毎日学校に来て俺と会って家に帰るくらいだ。不思議な先輩だ。意味が分からないから理解したくない。そこに意味は多分あるだろうけど俺はそれに気が付かなくていい。
 キガツキタクナイ。
 キズツキタクナイ。
 トラウマを思い出した。先輩は美味しそうにお弁当を食べてくれる。何も先輩には迷惑をかけない。今回も何も。ずっとこういう何も無いただほのぼのとした空間が続けばいいのに。心の底からそう思う。
 「ÆTHERってなんだと思う?」
 先輩の要領の得ない唐突の質問だ。これは良くあることで答えないと結花先輩は不機嫌になる。こうして俺の理系の知識が増えていく。
 「ÆTHER、エーテル。霊的身体でしたっけ」
 「ASTRALはなーんだ」何故か無理矢理英語みたいに発音する。
 「多分アストラルの事ですよね。アストラル体、精神的身体ですよね」
 「そうそう、どちらも人間が存在すると思っている物だよ」
 「言われてみれば霊とか魔法とか本当はあったかもしれないって思うところもありますね。そういったものに関係しているものですし実は魔法も奇跡もあるでしょうし」
 「では、質問を変えよう。エーテルとアストラルは一体なんだと思う?」
 「……どちらも訳が分からない物なのでダークマターかと」
 「エーテル、アストラル。ああ、面倒だからEとAで略そう。まずEAがあると仮説する。すると君の仮説では人間は存在するだけで未発見の原子を纏っている事になる。それは人間だけではなく意思を持つ物全般が持っているという事にもなるね」
 「あれ?」俺そんな事言ったっけ。あぁ魔法も奇跡もあるって所か。そりゃ信じてますよ。童貞で30なると魔法使いになりますし。
 「命が途絶える時21gの何かが抜ける。ここまでの仮説を実際にあるということにすると、命はダークマターであると言える」
 「ほほう。宇宙の恩恵で命は構成されていると」
 「じゃあ霊体や精神体はダークマターで構成されていると言えるよね」

 「「なるほど、分からん」」

 先輩も俺も基礎が分からないのに応用を使おうとして行き詰まった。
 「宇宙ってのは偉大だねぇ、実は宇宙生きてるんじゃない?」
 「俺らが生きてるんですからダークマターでたっぷりの宇宙は生き生き生きてるでしょうね」
 「1人なのかな宇宙は」
 「そろそろ片田舎にある地球の交信も届いて1人じゃない事に気がつくでしょう」
 「浪漫だね」
 「お茶飲みます?ミルクティーですけど」
 「頂こう。くろてん君が作ったのならね」
 こういうまったりした空気が大好きだ。先輩、気を紛らわしてくれたんですねありがとうございます。
 「空はなんで青なんだろうねくろてん君」
 難しい事を聞きますね。先輩。答えとして出るのは落ちた時に見えた物。
 「……冷たいからですかね。人の心みたいに」

俺の心みたいに。

──

 甘味処REI「カッカッカッ」

 甘味処羅刹大臣「カッカッカッ」

 甘味処エリエリサバクタニ「ホント、笑ってますけどね。こっちは大変だったんですよ!」

 甘味処REI「青春を感じた」

 甘味処羅刹大臣「若いっていいなぁ」

甘味処REI「それで、愛しの君はどうなったんだい?」

甘味処エリエリサバクタニ「1位でしたよ!ミスコンでね!」

甘味処羅刹大臣「wwwwwwwwwwwww」

甘味処羅刹大臣「ところでりゅうたんとおてんこは」

甘味処REI「デートじゃないですかね」

甘味処エリエリサバクタニ「私、知ってますよ。マッドハッターのお茶会に行ってるそうですよ」

甘味処羅刹大臣「なんかイベントあったっけ?」

甘味処REI「結婚式場でも見てるんじゃない?」

甘味処羅刹大臣「はーんそゆことネ」

甘味処REI「察し」

──

 「空はなんで青なんだろうねくろてん君」
 「……冷たいからですかね。人の心みたいに」

 彼は怖がりだ。昔何があったかなんて一切分から
ないし、知ってはいけないのだろうけど、彼がとても寂しそうで見ていられない。
 「─お姉さんに甘えていいんだよ」なんて言えたら彼は甘えてくれるだろうか。彼が抱えている黒い靄を払えるだろうか。数学や科学が解決してくれない事を、私は解決できない。
 もし解決出来たとしても数学や科学なんかで彼を満足させたくない。それら以外で解決しなければ意味を持たない。『私』が解決しなければならない。統計学から見て解決出来るのかも知れない。最適解を出せるのかも知れない。それでも、だとしても、私は私の本心で関わらなければ彼が悪く変わってしまうかも知れない。
 最悪の場合を考えると限りがない。

 私の考えの解決方法は一つだ。
 ─彼に抱きつけ。

 分かってるわよ、そんな事。それでも身体は動かない。
 辛いわ、くろてん君。
 「……また難しい事考えてます?」
彼は直ぐ気づくのね。
 「そうよ、最近考えている事の中で最高に難しい事について何度もね」
 あなたの事よ。
 「ぁ、あの俺、何も出来ないかもですけど」
  ─ダメよその先は予知出来たわ。
 「俺でよければ幾らでも頼っていいですし、甘えてくれてもいいですから」
 「少しは……ダメですかね?ははっ恥ずかしい事言ってしまった消えてなくなりたい」
 ─私、ダメになっちゃう。

 こうして私は彼の深みに嵌っていく。心地好くて気持ち良くて嬉しくて幸せな盲目的に幸せな彼の保護欲に。

 「これがママみ……」
 「ふぁっ!?何を言ってるんですか!」

──

 昼休みが終わり席に戻ると流石に朝よりは静かになる事は無かった。良かったぁ……ハブるのいいけどイジメだったら訴えてた所だよ??先輩が居るおかげで心のささくれも少し減ったし。……先輩卒業したら俺どうしよう。死ぬかも。っていうか先輩死んだらどうしよう。どうもならないじゃん。答えは一つ既に出ている。俺が廃人になる。
 いや、ね?だってあんなに優しい先輩だぜ?俺みたいな社会不適合者にも優しい結花先輩が死ぬんだぜ?俺が死ぬわ。心にダメージ少なくても俺は毎日自傷行為をするか毎日家を焼く。刑務所で抜け殻になり生涯を遂げる。確定された未来、円環の理には逆らえない。
 妹達か先輩が居ない世界か、何そのクソ世界。人生が本当にクソゲーになる。人生がクソゲーになるにはその1好きな人が全員他界。もしくは最初から存在していなかった。その2自らの努力を怠る。どんなことだって自分は努力しているのにそれを努力と呼ばないことも同様にクソゲーになる。しかしそれに驕ってはいけない。驕りは人をダメにする。謙虚に知識欲を深めていくと人生は神ゲーになる。その3悪いのは自分ではなく周りだと思うこと。それは間違いではないかも知れない、しかし他人を思いやる気持ちがなくては人は人として生きる道から外れ畜生以下の餓鬼の様な存在になる。外道・ゾンビみたいな。合体にも使いにくいしステータスも低いし、使えるの麻痺ひっかきか毒ひっかきしかなくなる。やめちくり。
 そんな事言ってもクソゲーだと思うならクソゲーだと思ってればいいのさ他人のことなんか気にしないでさ。可哀想な人と思われるだけさ。
この人生っていうゲームのいい所はジョブ選び放題高いグラフィックスで未知が多くやろうと思えばなんでも出来て更に運も必要っていう最高のゲームだ。悪い所はリセット出来ないところそれ位だ。
 んで、なんだっけ。そうだイジメだ。イジメられてんなら今すぐボイスレコーダー買って胸ポケットに入れておけ、見えないようにね?殴られたならその時の状況録音出来るから警察に届けろ。教師はそういうの隠して「イジメはありません」とか言うからな。そういう教師はクソ、はっきり分かんだね。
 俺の場合ボッチかハブられてるだけだから、イジメじゃないから誰からも無視されるのキツイけどイジメじゃないから!……俺ボッチじゃなくね?結花先輩いるじゃん。圧倒的勝ち組非リアからリア充にクラスアップ。コロンビア。
 よく考えたら俺はリア充じゃなくてオタ充だった。
 「んひぃ……」
 ガタッと隣の席の奴が立ち上がる。めっちゃ驚いてるじゃん。ってなんだなんだそんなに俺の顔見つめて、目と目が合う瞬間そいつ駆け出した。おい脳内再生してた歌がめちゃくちゃになったじゃん。っていうか俺が隣に来たの今気がついたの?泣くぞ?んひぃって言っただけじゃん独り言もダメなのかよ辛すぎ。そして五時間目のチャイムが響く。
 ─キーンコーン、ガーンゴーン─
 おいおい音ズレてるじゃんと思い軽く外を見るとこちらに走ってくる卵に手足が生えたかの様な生物が学校の外壁にぶつかり爆発していた。何あれ自爆テロ?は?
 「じばく てろ じゃないよ にき」
 「ファッ!?ちょ誰」
 見ると赤い甘ロリといった様な服を着た美幼女がこちらを見つめていた。
 「おじいちゃん は おこしたよ」
 「えらい?」
 「お、おう何の事かはよく分からないけど偉いぞ」
 そんな幼女あやす暇あったら逃げろと思われるシチュエーションだったが、俺はどうにもその幼女から目を離せずにいた。既視感、デジャヴュというものが何度も何度も起きる。
 「えらい! ありすは えらい!」 
 「だから にき も おっき しようね」
 は?何がおっきとナニがおっきと???そういうのは妹で充分です。
 「アリスは命じる」
 瞬間目が燃える。とても熱い。抉りとりたいほど熱い。
 「にき だいじょぶ もーまんたい」
 「なに、ごれ……死ぬ!死ぬ!ああああ!!」
 何も考えられなくなると、記憶が流れ込んできた。それは妹達と遊んだ記憶、親に拾われた記憶、「前世」の記憶。

 「きらきら光る太陽は星屑を落としウルツァイト窒化ホウ素の壁とロンズデーライトの床に大きな穴を空けた、降ってきたのはきっとヒヒイロカネの戦士であろう。ワニが泣きながらそう言ったのだから間違いがない」
 「おきて にき あさだよ」

 俺は起きるとアリスの頬にキスをする。
 「おはよう、アリス」
 アリスも真似て頬にキスをする。
 「おはよっ! にき!」
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