未成年囚人達のソーシャルサービス

SAKAHAKU

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第百八話(テイルのお気に入りの場所)

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ここのところ、俺の生活は充実している。
便利屋のヘルプではあるが、ほぼ無職の状態だった時と比べて明らかに仕事に出掛ける回数が多くなった。
最初こそ数日の約束だったコンビニの仕事は、通い慣れたせいかレジ打ちも陳列も朝飯前。
もちろん抵抗のあるトイレ掃除もそつなくこなし、今や立派なコンビニ店員へとなりつつある。


「テイル……別に構わないが、今日もついてくるんだな」

「行く。だって、お家に居てもテイルと遊んでくれる人誰もいないから暇」

「いいね、お前は自由で。そんなにイートインでだらだら過ごすのが好きか?」

「すき。あそこは冷房も効いててすずしーし、テレビも見れる。それに食べ物もすぐ買える位置にある最高の場所」


慈愛ちゃんは夏休みだけど登校日。うたちゃんは仕事三昧でほとんど家に居ないしな。
慈愛ちゃんの方は登校日といっても午前中だけで帰ってくるだろうが、それまで待てないんだろう。昨日昼寝し過ぎて全く眠くないらしいし。

「これ、全部買う」

テイルはコンビニに着くなり、店内を物色し始めた。
惣菜パンやら菓子類を両手いっぱいに抱えてレジの前まで運んでくる。
しかも、俺が仕事用の制服に着替える前に。
カゴに入れて持って来いよといつも思う。


「おお……こりゃまた多いな。どんだけ食うんだよ。朝飯食ったばかりだろ」

「食べきれる。日影待ってる間にちびちび食べるからへーき」

「そっか。まあ自分の金で何を買おうが自由だし、止めはしないが」

こいつは俺の退勤時間までずっと二階のだだっ広いイートインコーナーで過ごしている。
買った食べ物を食べたり備え付けてあるTVをぼーっと眺めていたり、眠くなってくるとカウンター席で突っ伏して夢の中。
帰りはだいたい寝落ちしたテイルを起こして一緒に帰路に着く。
俺がコンビニで働くたびにそんな生活を何度も繰り返した。
客の中には頭から獣耳を生やすテイルに興味を抱く者が当然いて、スマホで写真を撮られる回数も少なくない。
これって盗撮じゃね?と思わなくもないが、皆、芸能人にカメラを向ける感覚なのかもしれない。テイルはテイルで、スマホを自分に向けてくる相手にピースしたりと案外ノリがいい。テイルが嫌じゃなければそれでもいいのか。
そのおかげかどうかはわからないが、このコンビニの売り上げが最近上がったらしい。
つまるところ、此処によく出没するという獣耳の少女の噂を耳にした多くの客が来店、ついでに商品を購入していった結果だろう。客寄せパンダみたいな感じだな。

「肉まんとあんまんも買う。あとからあげ棒とコロッケも」

「別にいいんだけどな、こんなに買って金は足りるのか?」

「大丈夫。うたがお小遣いくれるから、好きなだけおなかいっぱい食べられる」

うたちゃんが一度にくれる小遣いって、最早お年玉の合計レベルで度肝を抜かれるんだよ。
ベルウッドの一件が片付いて以来、俺にもくれるようになったんだが、貰いすぎて何だか悪い気さえするくらいだ。
うたちゃんは完全に金銭感覚がマヒしてる。
テイルが毎日食べ歩きを満喫できる理由はそこにある。

「それじゃ、テイル二階でだらだらしてる」

「これから労働に縛られる身としては、非常に魅力的な言葉だな。あんまり食べ過ぎるなよ~」

「努力する」

何を努力するんだよと心の中で呟きながら、俺は会計を終えたテイルの背中を見送った。


テイルが二階へ行ってみると、そこにはまだ誰一人として客のすがたはなく、俗に言う貸し切り状態。
席も選びたい放題だったが、テイルの腰を下ろす場所はいつも決まって窓ぎわのカウンター。
外の景色をなんとなく眺めながらのんびりするのが好きらしい。

「どれにしよう。迷う」

ここのイートインにはドリンクバーが設置してあり、誰でも無料でジュースやお茶が飲み放題だったりする。
これ目的で来店し、飲み物をタダでいただいて何も買わずに去っていく者も少なくない。
この行為はトイレだけ使って出ていく客よりもさらにタチが悪く感じる。

「オレンジ、グレープ、モモも捨てがたい……」


その三択でしばらく黙考していたテイルだったが、

「……決めた」

悩んだ末、最初にメロンソーダを選びボタンを押した。
時間ならたっぷりある。悩む必要はなかった。

「マンガでも読もう」

パンやお菓子で腹を十二分に満たした後、テイルが取り出したのはさっき食べ物と一緒に買った漫画雑誌だ。
毎週月曜日発売の漫画雑誌にテイルの目に止まった漫画がある。
風貌と横暴な態度がツクネとそっくりな主人公が活躍するバトル漫画だ。作者の名はヨッシーというらしい。
ちなみにテイルがハマっているだけで、人気はそんなにない漫画のようだ。
これを読むと自然と未だ牢の中に囚われている二人のことを思い出す。
二人と再会出来るのはいつになるのか考えない日はない。

「……なんか、眠くなってきた」

読み終わった漫画をパタリと閉じる。
突然の睡魔がテイルを襲った。


「ふぅ……やっと一息つけるかぁ」

朝の時間帯は仕事や学校に向かう連中で非常に混み合うコンビニだが、ピークを乗り越えてしまえばそこまでキツくはない。レジと向き合い格闘している内に時間があっという間に過ぎていった。

(そろそろ交代の店員が来る時間か……今日の昼飯、どうすっかな)

時間は昼時を優に超えている。
いつもなら此処で手頃な弁当を買って二階のイートインで食べていくんだが、テイルが起きてるなら家に持ち帰って食べてもいい。
と言っても、だいたいは寝落ちしてぐっすりなんだよな。
とりあえず様子を見に行ってみるか。

「お、やっぱり寝てやがったか」

二階に上がってすぐ、いつものあたりにテイルを見つける。
こいつはこの場所が好きだと公言しているが、ほとんどの時間を此処で寝て過ごしているんじゃないだろうか。
気持ち良さそうに寝ている手前、無理に起こすのも可哀想な気もするし、此処で食っていくとするか……。

椅子を引いて隣に腰掛ける。
ちょっと見ると、食べきれると豪語していた食べ物がわずかに残っていた。
何か買おうと思っていたがちょうどいい。パンでも一つ貰って食っちまおう。

「これ、テイルが面白いとか言ってた漫画だな。どれどれ……」

パンに手を伸ばそうとしたところで、テイルが買った漫画雑誌に目が留まった。
俺がぱらぱらとめくったページでは、ツクネによく似た主人公とデブちゃんこと吉澤大地にこれまたよく似た相手が死闘を繰り広げていた。
なんだろうか、これは……。
似ているというレベルを超越しているような、まさにそんな感じがした。



























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