聖・黒薔薇学園

能登

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I

XXVI

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「あのさ...。」

その手から手紙が渡されることはない。
おずおずと月城の隣に座り直した四季は、相手の顔色を伺うように忙しなく視線を泳がせている。

「どうしたの?」

自らが手を伸ばし手紙を寄せ集めては、封のあいていないものを選出する。
中からは丹精込めて書かれたであろう大量の文字と、一枚の顔写真が出てきた。

「...どうせ一緒に踊るなら少しでもタイプの子がいいんだけどな...。」

「...ねぇ、俺は...?」

思ってもないことを口にした矢先、四季は不安そうに眉尻を下げる。
重ねられた四季の手は熱く、月城を映す熱の篭った黒い瞳に体の底からゾクリとした。

「四季が僕と踊ってくれるの?」

「...、百目鬼と...踊る予定がないのであれば...。」

「ああ...勿論だよ。
向こうは僕と踊るつもりみたいだけど、僕は何度も断っている。

こんな行事自体参加したくないのに無理強いさせられてるんだ...、好きな子と踊ることくらい許して欲しいね...。」

「好っ...。」

みるみるうちに顔が赤くなる四季を、抱き締めたくて堪らない。

ドロドロに甘やかして虐めて、自分だけに依存させて...あわよくば...ーーーーー。



「僕と踊っていただけませんか?四季...。」

キメ細かい手の甲に口付けを落とす。

唇から伝わる肌の滑らかさと感触に鳥肌が立った。
頬に垂れる髪を耳にかけ言葉を失う四季に視線を送ると、口元に手を当てながら顔を真っ赤にしている。

「っ...はわ...、......カッコ良......っじゃなくて...。」

頭を左右に振りながら、照れくさそうに笑うと

「...、ん...。」

深く頷いて見せた。


「てっきり君は、僕じゃなくて加賀美と踊りたいものだと思っていたんだけど。」

「うっ...ま、まあそれは置いといて...!

それより月城...お腹すいてるだろ...?」

体に擦り寄る四季がジャケットを脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンを外していくと、白い肌が視界に飛び込んだ。

それと同時に、弄りすぎて赤くなった二つの突起が小さく揺れる。

すり、と柔らかな四季の唇を親指で擦り目を細めると、反射して熱っぽい吐息を漏らした。

「...僕にくれるの...?」

ワイシャツの隙間に指を差し込むと、冷たさでヒクリと体が反応する。
その過敏な体が愛しくて、もう片方の手で腰を抱き寄せた。

「ぅん...月城に飲んで貰いたい...。」

「は...、何それ...やらし...。」

「月城のために鉄分が多い物を食べてたんだ...。

だから俺のこと...食べていいよ...?」


息が荒くなる。
固く結ばれた口が、吊り上がりそうになる。


人間とは、なんて美しいのだろう。


残酷な反面、それと同等の優しさを兼ね備えた生き物は、今正にヴァンパイアの手中で自らを食べて欲しいと懇願している。

ゴクッ


喉が鳴った。


四季の手を引いてはベッドへ引きずり込み、ネクタイとジャケットを荒々しく脱ぎ捨てる。

「僕のボタン外して...。」

「う、うん。」

四季の指先から心音が伝わってくると、妙にこちらも緊張してしまう。

覚束無い指先でボタンを外している間、月城は自分のベルトに手を掛けた。

シルバーのバックルから革を引き抜き、ベッドの上に投げ捨てる。

「月城の体、綺麗...。
触っていい...?」

「どうぞ。」

「ん...、ひんやりしてて気持ちいいね...。」

ぺた、ぺたと腹筋や脇腹を撫でる四季は嬉しそうにはにかむ。

「着痩せするタイプだよな...、結構筋肉あるの意外...。」

「体だけでも鍛えておかないと、すぐ倒れてしまうからね。」

「あはは、そっか。」

「んっ...。」

四季の親指が乳首を掠めると、油断していたこともあり無意識に声が零れた。

それに気付いた途端、嬉しそうに上目遣いで此方を見つめる。

「月城も乳首感じるんだ...?」

「感じない、擽ったいだけ。」

「ムキになってる。」

「っ、あ...四季...。」

ワイシャツを脱いだ四季は、あろうことか自分の乳首を月城の乳首に押し付けて恍惚の笑みを浮かべた。

「月城が長い間弄ったせいで、俺の乳首こんなに腫れちゃったんだよ?
色も違うし...やっぱり乳輪自体が盛り上がってる気がする...。」

ぷに、ぷに

乳首同士が触れ合う度に、変な気を起こしそうになる。

少し会わないだけでここまで四季が大胆で、誘惑的になるとは誤算だった。
後ろはもう少し時間が経ってから、と思っていたが、このままでは月城の理性が無くなるのが先だろう。

徐々に芯を持ち、硬くなる乳首は相手の乳頭を押し潰し、抉る。

「は、ぁ...♡んっ...んっ...♡
俺、月城好みの体に近付いてる...?」

「っ、...ああ..。」

しっとりと汗ばんだ肌がキラリと光った。
艶やかで、淑やかで...なまめかしい体。


首、二の腕、胸、脇腹、臍、内腿、尻、脹脛...どこから血を吸ってやろうか。

こっちの気も知らないで、こんなに煽りやがって...。

フツフツと湧き上がる苛立ちにも近い感情に、月城は四季の体を押し倒した。
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