聖・黒薔薇学園

能登

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I

XLVII

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「...あ...?」

「人間とヴァンパイアが共存を目指す現代において、貴方の発言はあまりにも目に余る。
人間の血を貪り、罵倒し、利用する貴方は...ハンター協会から目を付けられるのも時間の問題でしたが...」

四季の角度からだと良く見えないが加賀美の声はいつになく静かで、それでいてどこか楽しそうにも感じられる。

「くっ...。」

太腿の間に割り入れた膝で目をギラつかせた男の下腹部を刺激すると、百目鬼の唇から苦痛の声が漏れた。

「おめでとうございます。
この度、貴方を監視する任務が僕に与えられました。
不振な行動や発言をした場合、即刻排除していいとのお許しも出ています。」

「っ、んなの...百目鬼家が許さねェぞ...。」

「百目鬼家...?はは、笑わせてくれる...。
ハンター協会は司法に基づいています。
どれだけ権力を持った家だとしても、司法の前では無力同然。

貴方の命はこの僕が握っていますので、言うことを聞いた方が懸命かと。」

「ふざけるな、俺が何をしたって言うんだ!
俺はただ、ヴァンパイアとして本当のことを...っ、!」

バチン、と空気をさくような音が響き渡った。

四季は恐怖のあまりに思わず口を抑える。

物陰から見た光景は、百目鬼の頬を容赦なく平手打ちし前髪を鷲掴む加賀美の後ろ姿だった。


「...ヴァンパイアが一強の、お前らの時代は終わったんです。
いつまでも過去の栄光に縋ってないで、人間と手を取りあって生きていきましょう。」

「誰が...!ぐっ...。」

痛みに顔を歪める百目鬼の首を絞めた加賀美の声は、どんどん弾んでいく。
恐怖心を抱いているのは明らかに四季だけでは無かった。

「ぁ...ぅ、...離っ...。」

「細い首...、少し力を入れたら折れてしまいそうだ。
大事にしないとすぐに壊してしまうな...。」

「ッ...は...貴様...ぜってェ...殺、す...!」

「口のきき方には気を付けるんだな...。」

どれだけ強く首を絞めていたのか、加賀美が手を離した瞬間存分に咳き込み床へ崩れ落ちる百目鬼は大きく肩で呼吸をしている。

「おやおや...、貴方は床で這い蹲る姿がお似合いですね。
さあ、僕の部屋へ参りましょう...躾の時間です。」

「...っ、誰がお前の言うことなんて聞くか...!」

「...あまり時間を無駄にしたくないのですが。

まあいいでしょう、その足りない脳みそにどちらが格上の存在であるかをハッキリと叩き込んでやりますよ。」

「!!てめェ...っ、今すぐに殺してやる...!」


牙を剥いたヴァンパイアに対し、加賀美は身を翻し慣れた手つきで百目鬼の首の後ろを叩いた。

「...に僕がやられるわけないだろ。」

ずるりと体から力が抜けて、再び床へ崩れ落ちた百目鬼を軽々しく担ぎ上げる加賀美は、新しい玩具を見付けた子供のように目を輝かせながら上機嫌で闇の中へと消えていく。

170cm前後で、誰しもが認める花のある可愛らしい男の存在が今では幻のように思えて仕方ない。

口調も、雰囲気も、声色も、少しだけ見えた表情さえも四季の知っている加賀美とは違っていた。

(悪夢か...?)

四季はよろよろと立ち上がりながらも、現実に向き合えないまま何とか寮の部屋まで辿り着き独房のドアノブに手をかける。

「はぁ...、帰ってきた...。」

今の自分の姿とは打って変わったみすぼらしい、だがいつも通りの部屋に安心感を覚えすぐさま服を脱いだ。

空気を入れ替えるために窓を開けてからシャワーを浴び、施されたメイクを落とす。

魔法が解けた四季はいつものパジャマ姿に戻り、布団を乱雑に敷いてすぐに眠れる準備をする。

「...、...。」

「......ん?」

濡れた髪のまま西園寺に借りた衣装を畳み、しっかりと箱の中へ押し込んでいると隣の部屋から声が聞こえてくることに気付いた。

開けた窓から身を乗り出し、西園寺の部屋を覗き込む。
薄暗い闇の中にぼんやりの浮かび上がる輪郭をゆっくりとなぞっていくと、次第に声もハッキリ聞こえてきた。

「...!」

ベッドの上で足を組んで座る西園寺の姿と、その足下で西園寺の足にキスを落とす大きな男の存在に気付く。

(西園寺は自分にファンが居るって言ってたけど、本当に夜な夜な男を連れ込んでるんだな...。
窓開いてて丸聞こえだって教えてやりたいが...。)

「...、...これ...外して欲しい...。」

「まだですよ。
ほら...足舐めて。」

「んっ、...はぁ...密...。
もう、ち‪○こ痛いよ...。」

「貞操帯を着けさせてから、二週間ですね。
私の中ですぐ達してしまう如月様のためのトレーニングですが、足を舐めただけで我慢汁なんか零して......もう一週間追加で着けた方が良さそうかな。」



(あ、あの足下に居るのって如月!?)

バスローブを羽織った西園寺とは対照的に、一切の布を身に付けない如月の股間にはキラリとシルバーの貞操帯が輝く。

「あっ、ぅ...、」

「足で小突いただけなのにビクビクしてる。
如月様の優秀な遺伝子、このまま無駄打ちするんですか?」

「っしない...、しない...っ密の中で出したい...。」

西園寺が恍惚の表情を浮かべながら足を組み替えると、その姿に釘付けになりながらも如月は貞操帯に包まれたペニスを無様に床へ擦り付けた。

「中に挿入れたいなら、なんて言うんだっけ...?」

大柄な男が無様な格好のまま腰を揺らし、西園寺の足を舐める。

服従し切ったその姿は、普段の掴みどころの無い飄々とした如月のイメージをまんまとぶち壊した。

「密の...、密のおま○こに挿れさせて下さい...。
お願いします...、テストも...やりたくない舞踏会も頑張ったから...オナ禁も、密のためだけに......っは、...ああ...♡」

手の内に隠されていた鍵で貞操帯を外すと、無理矢理抑え込まれていた如月の凶器並みのペニスがぶるんっと勃ち上がる。

「うんうん...♡
よく頑張りました、いい子ですね。

じゃあ、二週間分溜めた如月様の精子、空っぽになるまで私の中に注いで...?」

「密っ...♡」

勢い良く西園寺に飛び乗った如月の後ろ姿を見て、四季は窓を閉めた。




「悪い夢だ、きっとそうに違いない。」

頭を抱え、壁を背にずるずると座り込んで目を閉じると、走馬灯のように加賀美や如月の姿が思い浮かぶ。

四季は彼らのことを友達だと思っていたからこそ、加賀美の豹変ぶりや、西園寺が純血の如月を完璧に手付けている様子に驚いた。

彼らの隠された一面を知ってしまったことが、少し怖かったのだ。

「次会った時、どんな顔して接すればいいんだよ...。」


四季の声は虚しく小さな部屋の中に消え、この学園に来て以来、初めての孤独感を味わった気がした。
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