1 / 7
序章 天才双子、異世界へ行く。
天才の死亡、そして序章
しおりを挟む
この世には、〝ギフテッド〟と呼ばれた限られた天才がいることをご存知だろうか。...うん。定番で言うならば『小学生ながらにフェルマーの最終定理を解いた。』や、『小学生でありながら相対性理論を理解した...』だとか。その人らは私ら一般人とは違い、年不相応の考え方をしている為、周りと馴染めず疎外感を感じることが多い。そして周りの人間も異物感を感じ、接しづらく、結果として孤独となる。この現象が日本では多い。いや...多かった、と言うべきか。何故多かったと言うべきなのか。それはとある天才双子がこの国の認識を変えたからである。
東京某所───。
「ねぇねぇ...あの人ってさ...」
「え!?マジじゃん...」
東京の公園にただ立っているだけで話題になってる人が1人...。それもそうだ。恵まれたビジュアル。そして何よりずっとニュースでその話題が流れているのだから。
誰かが言った、〝彼は神の子だ。〟そしてまた誰かが言った、〝人類最高傑作だ。〟なぜそう呼ばれるのか。彼は歴代最高のIQ450の超天才だからだ。
雲龍 神。年齢16歳。身長178.3cm。体重57.2kg。髪色は白髪、そして赤と紫のオッドアイと、日本人とはかけ離れた姿をしているが、純粋な日本人。なぜこの見た目をしているのかは現代の科学では解明できず、この症状は流石の神本人も解明できなかった。
「ヤバ...超カッコイイ...」
「同じ人間には見えないくらいビジュいい...」
「あの人...神さんだ...」
「すげぇリアルで初めて見た...」
(...普通にそこら辺歩いてるんだがな...)
16歳ながらに平日で大丈夫なのか?と聞かれるかもしれないが、彼は世界一の天才。特例により高校は飛び級をした。その為社会人として今はいる...が、とはいえ16歳。どうやら普通に遊びたいらしい。
(しかし遅いな...天...大丈夫か?)
と、心配気味な神。
...そういえば、最初にも言ったが、天才双子なのだ。
「...ん」
(来たか...)
「はぁっはぁっ...」
片方が天才な訳ではなく、〝天才双子。〟
「ご、ごめんね...にぃ...ま、待たせちゃった?」
「いや、待ってないよ天」
つまりこの双子は2人ともが天才と言う極めて稀な存在だ。
「よかった...!」
雲龍 天。年齢16。身長163.4cm。体重49.8kg。握力は秘密♡。髪色は白髪、神とは左右対称で同じ色のオッドアイ。神と同じで人とは思えない美貌を持っている。そして彼女も前述の通り天才であり、天はスポーツにおいての天才と呼ばれている。全てのスポーツを世界レベルで出来、中でも陸上が得意で、天が中学の時に出した50m以上の世界新は、未だに自分以外の誰にも破られておらず、今後確実に...いや、現在進行形で歴代最強のランナーと呼ばれている。
「や、やば...天神兄妹だ...」
「あそこだけ別空間...?」
「美しすぎるだろ...」
などなど賛美の声がチラホラと聞こえるが、そんな声を無視しながら2人は買い物へと向かう。
「今日の夕飯何にしよっか」
「んー...そーだなぁ」
食材を見ながら考える天。玉ねぎを手にし、
「ハンバーグ!」
天の顔の前に出した後
「なんてどう?」
(可愛い...!!)
玉ねぎからひょこっと。まるでひょっこり...いやなんでもない。
「そうだな...ハンバーグにしようか」
天才だからと言って、人と大きく変わっている訳では無い。その為、偏見無く見れば仲の良い双子なのだ...。
「ねぇねぇにぃ?」
レジに並んでいる最中、天は神に話しかける。
「ん?どうした?天」
「にぃってさ異世界って信じたりするの?」
純粋に超絶頭がいい人は異世界というファンタジーを信じるのか...と天は神に質問を投げかける。
「異世界か...」
「そ、そんなに考えなくていいんだよ?」
「いや...確かにあった方が面白いと思うぞ?」
「え...っと?」
予想外の答えに困惑する天。
まぁ神は頭は全く固くない。なんなら超絶柔軟な考え方をする人間だ。更に受け入れ型の為、新しい物は全て受け入れる。
「異世界。つまりパラレルワールドの類があるのなら、そりゃ学者としては気になるに決まってる。もちろん行ってみたいしな」
「なるほど...?」
(マズい、天が理解出来ていない...もうちょっと噛み砕くか...)
「俺は、現代の科学や数式では解明出来ないものを解明するのが好きなんだ...だからあって欲しいとは思うかもな」
「なるほど!!」
(お、理解出来たか...?)
「つまりどゆこと?」
(Oh...天よ...いつもの如く...)
「つまり、異世界の存在は信じてるよ」
優しい笑顔で答える神。
「ほー!!そうなの!!嬉しい!私も同じ考えだった!」
あ、そういえば言うのを忘れていたが...
(やばー!!にぃと同じ考えだ~!!)
「そうなのか...!それは良かった!」
(天と意思疎通が出来てる...!!)
この双子、お互いがお互いの事を大好きなシスコンブラコンの相思相愛双子なのだ。
(好きだ...天...)
(好き...にぃ...)
「もう買う物無いよな?」
「うん!全部買ったよ!」
2人は買い物を済ませ、デパートから出ようとした瞬間。刀を持った男が天に目掛け刀を刺そうとする。
「ふんっ...!!」
「っ!!危ない!天!!」
その瞬間。神が天の前に出て来て、庇う。
「はっ...!!にぃ!!」
が...
「に、にぃ...」
「そ、天...ごめん...な...守れなかった...」
日本刀だった為庇っても意味が無いことになってしまった...
「何が天才だ...!何が人間離れしてる。だ...!ちゃんと人間じゃねぇか...!!」
刺した相手はすぐさまに警察に捕まり、即座に救急車に運ばれる2人。
「───生きてください!!神さん!!お願いします!!」
(声がぼんやりと聞こえる...天は...生きているだろうか...それとも...いや...そんなことは考えるな...だがこの血の量...現代の医学では治せないな...例え世界トップの医療技術があったとしても...嗚呼...視界が...暗く...もう意識が...最期までずっと天と一緒が良かったな...)
「───天さん!!気をしっかり!!お願いします!!生きてください!」
(にぃ...生きてるかな...私を庇ったのに...ナイフだったらまだ生きてたかもだけど...日本刀じゃ流石に...無理かも...視界が...ぼやけて...私...ここで死ぬんだな...嫌だな...死ぬ時もにぃと一緒がいい...)
転生準備────。
2人を同じ場所。そして2人の服を正装時の服にします。ステータスの振りは、前世のを残しつつ転生先に合わせた振り方をします。そして能力は前世のものを引き継ぎます────。
(な...なんだ...この声...と言うか天は大丈夫なのか?)
(何...この声...頭の中で響いて...うるさい...にぃ...大丈夫かな...)
転生準備完了致しました────。
これより2人の転生を開始致します────。
(転生を開始...?)
(えっ?な、何!?)
3────
(おそらく俺は死んだ...だが意識の中では生きている...そして転生と考えると...これは異世界転生...というものか?)
(ヤバいヤバいヤバい!!!)
2────
(と考えると、やはり異世界は存在するのか...それはそうか宇宙はとてつもなく広い。地球に似た環境の星だって、可能性で言えば無くはない。)
(なななななな、何が起こるの!?)
1────
(となると、次、すべき事は異世界での時間関係が気になるところだ...死ぬ直前の時間は2062年10月31日の17時29分。ただこれは日本の時間...異世界で通じる可能性があるとは限らないが...)
(こ、怖い!!にぃ!!助け───)
0────。
「ヒャッ...」
(そして言語の壁もある...異世界なのであれば、もしかしたらファンタジー系統の種族もいる...果たしてそこがどうなるかだが...って...ん?)
自分と同じ速度で落ちていく人を見つける神。
「あれは...天?!」
落ちていたのは自身の妹、天だった。
「ビャァアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
(急降下の中だとまともに声が通らないからな...まずは天の方へ向かわなければ...)
重心を天の方向に寄せ、徐々に近づいていく。
「助けてぇぇぇえええ!!!!!!」
「天!!」
「はっ!!にぃ!!」
2人は急降下の中ぎゅっとハグをした。そして2人は抱きついたまま話を始める。
「天、落ち着いて聞いてくれ」
「な、何...?にぃ」
「十中八九ここは異世界だ」
「えぇっ!?」
「あ、唐突に異世界なんて言うから変な声が出ちゃった...」
「すまん」
「だが実際、見たこともない地形をしているし、あの植物も地球で見た事がない。」
(あの遠くに見える国のような所も、外壁がヨーロッパみたいだが街並みがヨーロッパっぽくないしな...)
「ま、マジィ?!」
「あぁ、大マジだ。そして今俺たちは急降下をしているな?」
「あ、うん...そうだね...」
「普通に行ったらこのまま死ぬが...」
「な、何かあるの?」
「おそらくスキル的な奴が何かあるはずだ。この世界に召喚される前、謎の声が言っていた。能力も前世のものを引き継ぐと」
「た、確かに言ってたような...」
(あ、あんまり覚えてないや...)
と眉をしかめる天。
「前世、つまり日本での俺達のことだ」
「う、うん」
「という事はだ、天は運動神経がとてつもなく良い。だから、もしかしたら、天の力なら俺たちはこの状況でも助かるかもしれない」
と神は提案をする。
「な、なるほど!!」
「1回、地面に向かってエアパンチかなんかしてくれないか?」
「わ、分かった!」
(エアパンチ...つまり空振りのパンチってことだよね?誰にも当たることないから本気でいいよね!)
「しっかり掴まっといてね!にぃ!!」
「あぁ...っ!」
神は天を強く抱きしめる。
「エアーパーンチ!!!!」
天が変な技名(?)を叫びながら空気を殴った瞬間。強烈なダウンバーストが発生した。そして神たちは無事死なずに着陸できた。
「ふぅ...なんとかギリ間に合ったか...」
(あともうちょっとで弾けるところだった...)
「凄い!!あんなの咄嗟に出来るなんて!」
「褒めてくれてありがとう...天」
「えへへ」
「だが...次は人を探さなければな」
「...人?」
「あぁ、この世界の情報を知らなければならない」
(ついでに言語も気になるしな)
「そ、そっか!!」
(私たち、転生してきたから情報ないのか!)
「とりあえずこっちに行こう」
「えっ?う、うん...」
「なんで街の方向がわかるの...?にぃ」
「急降下中に近くの街がどこにあるのか探してたんだ」
「そ、そこまで!!流石にぃ!凄い!」
(そこまで褒められると嬉しいな...)
数時間後────。
「つ、疲れた...」
「おんぶするよ?にぃ」
「た、頼む...天」
天の背中に乗っかかる。
(相変わらず細い体だ...こんなに細いのに力は俺より強い...なんならそこら辺の鍛えてる人より強い...なんなんだこの差は...)
「にぃ、体力は人並みだから私に任せといて!」
「あぁ、ありがとう。天」
数十分後、遂に大道路に出た。
「...どうやらここはこの世界の国道的な物っぽいな」
「そうだね~」
微かに笑われているのを感じる。
(そんなに女性におんぶされてる男性が面白いかってんだ...)
「もうそろそろ着く頃なんじゃないか...?」
「あ、うん!あそこだよ!にぃ!」
「あぁ、門だな...!」
(だがその前には...検問だな。今がいつか分からないが、街の前の門で検問がされているとなると...時代的には結構前になるか...?ただ今の時代でも検問はするし...これだけでは分からないな...だが、車が見当たらない点を見ると...地球基準の技術で1770年以前...か?いやこの世界が魔法が使える世界なら、もしかしたら車が要らないという可能性も...)
「にぃ...どうしたの?」
ずっと考え事をしていた為、天に心配されてしまう。
「あぁ...ごめんな天。」
(あまり長いこと考え事をしないと昔、天に言ったじゃねぇか...何してんだ...俺)
「とりあえず、ここからは歩けるよ天」
「そう?わかった!」
おんぶから下ろしてもらい。2人で街に向かう。
(さて...どうしたものか...検問という事はおそらく、何か許可証のようなものが必要なはずだ...)
「とりあえず並ぶ?」
「ん?ああ、並んでおこうか」
長い列で1番後ろへと並ぶ。
(いやしかしすごいなこの世界...待機列が綺麗だ...日本みたいだな)
待機列の綺麗さに感心する神。
「なんで検問なんかあるのかなぁ...ちょちめんどくさーい」
天は萎える。が、その天に対して神は検問する理由を教える。
「検問ってのは基本的に治安維持の為に行われてるから仕方ないことだよ。」
「分かってるけどさ~」
なんて話しているとモンスターが現れてしまう。
「な、何あれ!!」
列に並んでいた皆が騒ぎ始め、皆各々その場から離れ始める。
「あれは...」
(おそらくモンスターと呼ばれる存在か...ゲーム等でチラッと見た事がある...ただ何のモンスターか弱点が何なのかが分からない以上...無闇に攻撃は...)
なんて考えているとモンスターがこっちに全速力で来る。
「ね、ねぇ!にぃ!近づいて来るよ!!」
「ま、マズいな...」
「うぅっ...」
「えっ!?子供!?」
「くっ!!」
声がする方向を見ると、そこには子供の姿が。だが、親の姿が見えない。
(子供...?ってかマズいな...あいつあの子を狙って...)
「天!!」
「もう向かってるよ!にぃ!!」
流石双子と言ったところか、2人は同じことを考えていたようだ。子供を助けるということを。
「お、おいあの女の子...大丈夫なのか?子供を守るようにして...助かるのか?」
「あのモンスター...確か...」
周囲がざわつき始める。
(考えろ...この場での最適解を...ってこれは...)
その場に落ちていたものを広い、天に渡す
「天!!」
「おっ...?っし!!おっけーい!理解!!」
しっかり受け取る天。
「シューート!!」
天は神から貰ったものをモンスターに目掛けてデコピンで弾いて弾丸のように吹き飛ばす。
「...ガゥッ!?」
デコピンしただけのはずが、弾丸の挙動をしてしまった物体はモンスターを貫通し無事モンスターは倒れた。
「へへっ!ありがと!にぃ!」
「あぁ、なんとか助かったな」
「す、すげぇ...あの子達」
「まだ俺たちより若く見えるけど...」
周りが2人の事を話しているが、そんなことを無視し2人で会話し始める。
「ところで、なんで鉄の塊を私に渡したの?」
「おそらく、あいつは何も属性がないと思ってな。じゃなければこっちに近づいてこないしな...なのであれば銃に近いものなら余裕で倒せるだろうと考えてあれを渡したんだ。」
「ほぇ~...」
「あ、ありがとうお姉ちゃん...お兄ちゃん...」
「ううん。良いってことよ!」
「そうだ、君、親御さんはどうしたの?」
そうして襲われそうになっていた子に質問をする神。
(さっきから気になっていた...もしかしたらこの子は...)
「お母さんとお父さんは...」
と俯いてしまう...。
「...いないのか」
子供は静かに頷く。
「どうする?にぃ」
「そうだなぁ...」
(この世界には養護施設的なのがないっぽいな...だがこの子だけでは確実に生活できないだろう...なら...)
「やっぱりそうする?」
「あぁ...そうだな」
2人は覚悟を決め、その子に問いかける。
「私たちと一緒に来る?」
「俺たちと一緒に来るか?」
「えっ...?」
(俺達も親とは会ったことがない...昔から国の支援だけで生きていた...親がいないという境遇は似てるからな...せめてこの子と一緒に居てあげたい...)
「ほ、ほんとにいいのですか!?」
「うん!勿論だよ!」
「親になる。とまでは行かないが...俺たちは君の支えになりたい」
「う、うん!!」
(...見たところ、この世界には奴隷制度があるようだしな...検問で並んでいた人の中に奴隷のような子が何人かいた...おそらくこの子は奴隷になろうとしていたのかもしれない...子供では稼ぎに限界があるからな...)
「い、一体なんの騒ぎだ...!」
と門の中から兵士と共に出てきた。
「フィルロッテ伯爵...!!」
(伯爵か...どうやら偉い人が現れたようだな...)
「なんとか一件落着だねっ!にぃ!」
「そうだな」
「...あ、そうだ。ところで君...名前は?」
「えと...名前は無いんです...」
(そうなのか...いや...そりゃそうか...生まれた時から親がいない。と考えると妥当だ...)
「なら、名前決めよ!」
「そうだな」
「じゃあテイでどうだ?」
「...テイ??」
「テイ...テイ...!!」
嬉しそうなテイと名付けられた子。だが
「な、なんでテイ...?」
小声で天は聞いてくる。
「いやだって俺らの名前、神って書いて神。天って書いて天なら似たような名前の方がいいだろ?」
「いやぁ...それはわかるけど何でテイ?」
「帝のテイだよ」
そう神が話した瞬間。
「!!」
パァアアアッと目をかっぴらき、そしてキラキラと輝かせる天。
「そういうこと!!流石にぃ!!」
バシンバシンと叩かれる神。まぁ本気なわけないので痛くない。
(あ、そうだ。これだけは聞いておかなければ...)
「なぁ、テイ。」
「は、はい!なんでしょうか」
「性別はどっちなんだ?」
「テイの性別は女です...!」
「えー!!女の子なのー!!」
と天は大喜びをし、テイに抱きつく。
(なるべく知っておかないと後で大変なことになるからな...)
「貴殿ら」
門から出てきた伯爵は神達に話しかける。
「っ!!」
「は、はい!?な、なんでしょう!!」
「どうかなさいましたか。伯爵様」
といち早く跪く神達。
「頭を下げんで良い...下げるのはこちらの方だ...」
「フィルロッテ伯爵!?」
「えっ...」
「っ...!?」
「嘘...だろ」
「伯爵が頭を下げた...」
(周りが騒ぎ始めている...当たり前だ...伯爵が頭を下げるだなんて...)
「な、なんで伯爵が頭を...」
「そ、そうですよ!お偉い方ですよね!?」
と2人は困惑する。
「あのモンスターには昔から迷惑をかけられてばかりでな...だがここら辺には中級以上の冒険者や剣士などが少なく倒そうにも倒せなくてな...だが貴殿らがあのモンスターを倒してくれただろう...?だから感謝しているまで...」
「そ、そんな...」
「お礼として、是非とも我が屋敷に来てくれないか?」
「えっと...どうする?2人とも」
「テイは、お2人に着いていきますよ!」
(このまま断るのも申し訳ない。それに断ったとして検問を通れるとも限らない...。後、テイにお風呂浴びさせ、普通の服も着させたいしな...ここは厚意に甘えて)
「分かりました。では私、神と妹の天。テイも一緒で構いませんか?」
「あぁ...良かった...本当にありがとう...神様...」
街をフィルロッテ伯爵と一緒に3人は歩いていると
「フィルロッテ伯爵ー!」
と民から手を振られ挨拶されている。それに対し伯爵も小さく手を振って返している。
(民から愛されているのか...信頼出来るまともな伯爵で良かった...)
「す、凄いね...伯爵様人気者じゃん...」
「確かにそうですな...わたくし達は街のために動いていただけに過ぎないのに...」
「街のために動くの凄い!!」
「そ、そうですよ!!」
(天とテイ似てる...超可愛い)
など思っていると
「着きましたよ」
「ここがわたくしの屋敷です。」
「で...」
「うわぁ...」
「でかーーい!!」
(ヨーロッパの建築に近いが...だが要所要所でヨーロッパの建築らしくない...この世界独自の建築法か...)
「ではどうぞお入りください」
「お邪魔致します」
神がそういうと
「お、お邪魔致します...?」
「お、お邪魔致します...!」
2人とも真似をする。
(真似っ子可愛すぎ...死ねる)
2人の可愛さに食らう神。
「ところで伯爵様」
「フィルロッテで宜しいですよ」
「ではフィルロッテさん」
「なんでございましょうか」
「子供用の動きやすいけどちょっとオシャレな服ってないですか?」
「子供用の服ですか...少々お待ちください」
とフィルロッテ伯爵は離れていく。
「も、もしかしてテイの服だったりしますか...?」
おずおずとテイは聞いてくる。
「うん。そうだよ?」
俺はテイに対し優しい笑顔で答える。
「な...テ、テイにそこまでして頂けるなんて...」
「当たり前でしょ!」
「だって私たち家族じゃん!」
「...っ」
(天の言った通り俺たちは家族だ。)
「ってかやっぱりにぃの表情って、普通の人より動かないよね」
「...しょうがないだろう」
(普通の人より動かない...ってなんならほとんど動いてない気がする...)
テイは心の中で思う。
「お待たせしました」
とフィルロッテ伯爵が帰ってくる。
「こちらでどうでしょうか」
「伸縮自在でほんのり可愛い女の子用の服でございますが...」
「可愛い!!普通に私も着てみたいかも!」
「これでいい?テイ」
「は、はい...!!」
(2人が選んだものならなんでも良いです...!)
「もっと欲を言っていいんだぞ?」
「...えっ?」
「そうだよ!テイ!」
「テ、テイは...」
「お2人が選んだのでしたら何でも嬉しいです...!」
と満面の笑みで答える。
(グッ...ダメだ可愛すぎる...)
(テイちゃん...!!いい子過ぎ!!可愛い!好き!)
2人はテイに心を鷲掴まれた。
「女の子用の服全部くれたりできませんかね」
神は真剣な眼差しでフィルロッテ伯爵に問う。
「お願いします。フィルロッテ伯爵さん。全部下さい。」
天も同じ顔でフィルロッテ伯爵様に言う。
「そ、そんな...良いですよ!」
と遠慮するテイ。すると
「勿論です!あなた方は街を救ってくれた人ですので、全てあげますよ」
「やったー!!」
(ん?思ったけど...冷静に考えてどうやって外に持っていくんだ?例えば国に行くとする...街を出なければならないが...全部となると服の量は...)
「服を全部持ってきました」
「多!?」
「凄い量...」
「こ、こんだけの量どうやって持っていけば...」
と呟くと、フィルロッテ伯爵は
「そう言うと思いまして、こちらの魔道具をどうぞ」
「えっ?」
(なんだこれ...)
「こちらは、亜空間を利用し物を収納出来る魔道具で、ポジットと言いまして、遠出に行く人や冒険者様はほとんど持っております」
「はぇ~!凄!」
(こんな便利なものがあるのか...すごいな異世界は...作った人に話し聞きたいが...生きてるかわからんな...)
「このポジットに全て入れておきますね」
「何から何までありがとうございます。フィルロッテさん」
「いえいえ!わたくし達の恩はこの程度ではまだ返しきれていませんよ」
(じゃあ...)
「とりあえず、お風呂を借りても良いですかね...?」
「良いですとも!」
「まぁたしかに女性はお風呂に入らないとな...」
(気持ち悪くて耐えられない人もいるしな...)
「でしょ?」
「だから一緒に入ろ!テイ!」
「えっ?あ...はい!」
「ところでお風呂場はどこですか!?」
「お風呂場は右の通路に行って、手前から4番目のドアにございますよ」
「ありがとう!!」
「行こ!テイ!」
2人は手を繋いで全速力でお風呂場へと向かう。
(それにしても不思議だ...言葉が通じるとはな...もしかしたら日本語と近いのか?それとも...俺たちが日本語を忘れたのか...?)
(何にせよ...異世界転生してしまったんだ...この世界を旅し情報を知らなければな...)
東京某所───。
「ねぇねぇ...あの人ってさ...」
「え!?マジじゃん...」
東京の公園にただ立っているだけで話題になってる人が1人...。それもそうだ。恵まれたビジュアル。そして何よりずっとニュースでその話題が流れているのだから。
誰かが言った、〝彼は神の子だ。〟そしてまた誰かが言った、〝人類最高傑作だ。〟なぜそう呼ばれるのか。彼は歴代最高のIQ450の超天才だからだ。
雲龍 神。年齢16歳。身長178.3cm。体重57.2kg。髪色は白髪、そして赤と紫のオッドアイと、日本人とはかけ離れた姿をしているが、純粋な日本人。なぜこの見た目をしているのかは現代の科学では解明できず、この症状は流石の神本人も解明できなかった。
「ヤバ...超カッコイイ...」
「同じ人間には見えないくらいビジュいい...」
「あの人...神さんだ...」
「すげぇリアルで初めて見た...」
(...普通にそこら辺歩いてるんだがな...)
16歳ながらに平日で大丈夫なのか?と聞かれるかもしれないが、彼は世界一の天才。特例により高校は飛び級をした。その為社会人として今はいる...が、とはいえ16歳。どうやら普通に遊びたいらしい。
(しかし遅いな...天...大丈夫か?)
と、心配気味な神。
...そういえば、最初にも言ったが、天才双子なのだ。
「...ん」
(来たか...)
「はぁっはぁっ...」
片方が天才な訳ではなく、〝天才双子。〟
「ご、ごめんね...にぃ...ま、待たせちゃった?」
「いや、待ってないよ天」
つまりこの双子は2人ともが天才と言う極めて稀な存在だ。
「よかった...!」
雲龍 天。年齢16。身長163.4cm。体重49.8kg。握力は秘密♡。髪色は白髪、神とは左右対称で同じ色のオッドアイ。神と同じで人とは思えない美貌を持っている。そして彼女も前述の通り天才であり、天はスポーツにおいての天才と呼ばれている。全てのスポーツを世界レベルで出来、中でも陸上が得意で、天が中学の時に出した50m以上の世界新は、未だに自分以外の誰にも破られておらず、今後確実に...いや、現在進行形で歴代最強のランナーと呼ばれている。
「や、やば...天神兄妹だ...」
「あそこだけ別空間...?」
「美しすぎるだろ...」
などなど賛美の声がチラホラと聞こえるが、そんな声を無視しながら2人は買い物へと向かう。
「今日の夕飯何にしよっか」
「んー...そーだなぁ」
食材を見ながら考える天。玉ねぎを手にし、
「ハンバーグ!」
天の顔の前に出した後
「なんてどう?」
(可愛い...!!)
玉ねぎからひょこっと。まるでひょっこり...いやなんでもない。
「そうだな...ハンバーグにしようか」
天才だからと言って、人と大きく変わっている訳では無い。その為、偏見無く見れば仲の良い双子なのだ...。
「ねぇねぇにぃ?」
レジに並んでいる最中、天は神に話しかける。
「ん?どうした?天」
「にぃってさ異世界って信じたりするの?」
純粋に超絶頭がいい人は異世界というファンタジーを信じるのか...と天は神に質問を投げかける。
「異世界か...」
「そ、そんなに考えなくていいんだよ?」
「いや...確かにあった方が面白いと思うぞ?」
「え...っと?」
予想外の答えに困惑する天。
まぁ神は頭は全く固くない。なんなら超絶柔軟な考え方をする人間だ。更に受け入れ型の為、新しい物は全て受け入れる。
「異世界。つまりパラレルワールドの類があるのなら、そりゃ学者としては気になるに決まってる。もちろん行ってみたいしな」
「なるほど...?」
(マズい、天が理解出来ていない...もうちょっと噛み砕くか...)
「俺は、現代の科学や数式では解明出来ないものを解明するのが好きなんだ...だからあって欲しいとは思うかもな」
「なるほど!!」
(お、理解出来たか...?)
「つまりどゆこと?」
(Oh...天よ...いつもの如く...)
「つまり、異世界の存在は信じてるよ」
優しい笑顔で答える神。
「ほー!!そうなの!!嬉しい!私も同じ考えだった!」
あ、そういえば言うのを忘れていたが...
(やばー!!にぃと同じ考えだ~!!)
「そうなのか...!それは良かった!」
(天と意思疎通が出来てる...!!)
この双子、お互いがお互いの事を大好きなシスコンブラコンの相思相愛双子なのだ。
(好きだ...天...)
(好き...にぃ...)
「もう買う物無いよな?」
「うん!全部買ったよ!」
2人は買い物を済ませ、デパートから出ようとした瞬間。刀を持った男が天に目掛け刀を刺そうとする。
「ふんっ...!!」
「っ!!危ない!天!!」
その瞬間。神が天の前に出て来て、庇う。
「はっ...!!にぃ!!」
が...
「に、にぃ...」
「そ、天...ごめん...な...守れなかった...」
日本刀だった為庇っても意味が無いことになってしまった...
「何が天才だ...!何が人間離れしてる。だ...!ちゃんと人間じゃねぇか...!!」
刺した相手はすぐさまに警察に捕まり、即座に救急車に運ばれる2人。
「───生きてください!!神さん!!お願いします!!」
(声がぼんやりと聞こえる...天は...生きているだろうか...それとも...いや...そんなことは考えるな...だがこの血の量...現代の医学では治せないな...例え世界トップの医療技術があったとしても...嗚呼...視界が...暗く...もう意識が...最期までずっと天と一緒が良かったな...)
「───天さん!!気をしっかり!!お願いします!!生きてください!」
(にぃ...生きてるかな...私を庇ったのに...ナイフだったらまだ生きてたかもだけど...日本刀じゃ流石に...無理かも...視界が...ぼやけて...私...ここで死ぬんだな...嫌だな...死ぬ時もにぃと一緒がいい...)
転生準備────。
2人を同じ場所。そして2人の服を正装時の服にします。ステータスの振りは、前世のを残しつつ転生先に合わせた振り方をします。そして能力は前世のものを引き継ぎます────。
(な...なんだ...この声...と言うか天は大丈夫なのか?)
(何...この声...頭の中で響いて...うるさい...にぃ...大丈夫かな...)
転生準備完了致しました────。
これより2人の転生を開始致します────。
(転生を開始...?)
(えっ?な、何!?)
3────
(おそらく俺は死んだ...だが意識の中では生きている...そして転生と考えると...これは異世界転生...というものか?)
(ヤバいヤバいヤバい!!!)
2────
(と考えると、やはり異世界は存在するのか...それはそうか宇宙はとてつもなく広い。地球に似た環境の星だって、可能性で言えば無くはない。)
(なななななな、何が起こるの!?)
1────
(となると、次、すべき事は異世界での時間関係が気になるところだ...死ぬ直前の時間は2062年10月31日の17時29分。ただこれは日本の時間...異世界で通じる可能性があるとは限らないが...)
(こ、怖い!!にぃ!!助け───)
0────。
「ヒャッ...」
(そして言語の壁もある...異世界なのであれば、もしかしたらファンタジー系統の種族もいる...果たしてそこがどうなるかだが...って...ん?)
自分と同じ速度で落ちていく人を見つける神。
「あれは...天?!」
落ちていたのは自身の妹、天だった。
「ビャァアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
(急降下の中だとまともに声が通らないからな...まずは天の方へ向かわなければ...)
重心を天の方向に寄せ、徐々に近づいていく。
「助けてぇぇぇえええ!!!!!!」
「天!!」
「はっ!!にぃ!!」
2人は急降下の中ぎゅっとハグをした。そして2人は抱きついたまま話を始める。
「天、落ち着いて聞いてくれ」
「な、何...?にぃ」
「十中八九ここは異世界だ」
「えぇっ!?」
「あ、唐突に異世界なんて言うから変な声が出ちゃった...」
「すまん」
「だが実際、見たこともない地形をしているし、あの植物も地球で見た事がない。」
(あの遠くに見える国のような所も、外壁がヨーロッパみたいだが街並みがヨーロッパっぽくないしな...)
「ま、マジィ?!」
「あぁ、大マジだ。そして今俺たちは急降下をしているな?」
「あ、うん...そうだね...」
「普通に行ったらこのまま死ぬが...」
「な、何かあるの?」
「おそらくスキル的な奴が何かあるはずだ。この世界に召喚される前、謎の声が言っていた。能力も前世のものを引き継ぐと」
「た、確かに言ってたような...」
(あ、あんまり覚えてないや...)
と眉をしかめる天。
「前世、つまり日本での俺達のことだ」
「う、うん」
「という事はだ、天は運動神経がとてつもなく良い。だから、もしかしたら、天の力なら俺たちはこの状況でも助かるかもしれない」
と神は提案をする。
「な、なるほど!!」
「1回、地面に向かってエアパンチかなんかしてくれないか?」
「わ、分かった!」
(エアパンチ...つまり空振りのパンチってことだよね?誰にも当たることないから本気でいいよね!)
「しっかり掴まっといてね!にぃ!!」
「あぁ...っ!」
神は天を強く抱きしめる。
「エアーパーンチ!!!!」
天が変な技名(?)を叫びながら空気を殴った瞬間。強烈なダウンバーストが発生した。そして神たちは無事死なずに着陸できた。
「ふぅ...なんとかギリ間に合ったか...」
(あともうちょっとで弾けるところだった...)
「凄い!!あんなの咄嗟に出来るなんて!」
「褒めてくれてありがとう...天」
「えへへ」
「だが...次は人を探さなければな」
「...人?」
「あぁ、この世界の情報を知らなければならない」
(ついでに言語も気になるしな)
「そ、そっか!!」
(私たち、転生してきたから情報ないのか!)
「とりあえずこっちに行こう」
「えっ?う、うん...」
「なんで街の方向がわかるの...?にぃ」
「急降下中に近くの街がどこにあるのか探してたんだ」
「そ、そこまで!!流石にぃ!凄い!」
(そこまで褒められると嬉しいな...)
数時間後────。
「つ、疲れた...」
「おんぶするよ?にぃ」
「た、頼む...天」
天の背中に乗っかかる。
(相変わらず細い体だ...こんなに細いのに力は俺より強い...なんならそこら辺の鍛えてる人より強い...なんなんだこの差は...)
「にぃ、体力は人並みだから私に任せといて!」
「あぁ、ありがとう。天」
数十分後、遂に大道路に出た。
「...どうやらここはこの世界の国道的な物っぽいな」
「そうだね~」
微かに笑われているのを感じる。
(そんなに女性におんぶされてる男性が面白いかってんだ...)
「もうそろそろ着く頃なんじゃないか...?」
「あ、うん!あそこだよ!にぃ!」
「あぁ、門だな...!」
(だがその前には...検問だな。今がいつか分からないが、街の前の門で検問がされているとなると...時代的には結構前になるか...?ただ今の時代でも検問はするし...これだけでは分からないな...だが、車が見当たらない点を見ると...地球基準の技術で1770年以前...か?いやこの世界が魔法が使える世界なら、もしかしたら車が要らないという可能性も...)
「にぃ...どうしたの?」
ずっと考え事をしていた為、天に心配されてしまう。
「あぁ...ごめんな天。」
(あまり長いこと考え事をしないと昔、天に言ったじゃねぇか...何してんだ...俺)
「とりあえず、ここからは歩けるよ天」
「そう?わかった!」
おんぶから下ろしてもらい。2人で街に向かう。
(さて...どうしたものか...検問という事はおそらく、何か許可証のようなものが必要なはずだ...)
「とりあえず並ぶ?」
「ん?ああ、並んでおこうか」
長い列で1番後ろへと並ぶ。
(いやしかしすごいなこの世界...待機列が綺麗だ...日本みたいだな)
待機列の綺麗さに感心する神。
「なんで検問なんかあるのかなぁ...ちょちめんどくさーい」
天は萎える。が、その天に対して神は検問する理由を教える。
「検問ってのは基本的に治安維持の為に行われてるから仕方ないことだよ。」
「分かってるけどさ~」
なんて話しているとモンスターが現れてしまう。
「な、何あれ!!」
列に並んでいた皆が騒ぎ始め、皆各々その場から離れ始める。
「あれは...」
(おそらくモンスターと呼ばれる存在か...ゲーム等でチラッと見た事がある...ただ何のモンスターか弱点が何なのかが分からない以上...無闇に攻撃は...)
なんて考えているとモンスターがこっちに全速力で来る。
「ね、ねぇ!にぃ!近づいて来るよ!!」
「ま、マズいな...」
「うぅっ...」
「えっ!?子供!?」
「くっ!!」
声がする方向を見ると、そこには子供の姿が。だが、親の姿が見えない。
(子供...?ってかマズいな...あいつあの子を狙って...)
「天!!」
「もう向かってるよ!にぃ!!」
流石双子と言ったところか、2人は同じことを考えていたようだ。子供を助けるということを。
「お、おいあの女の子...大丈夫なのか?子供を守るようにして...助かるのか?」
「あのモンスター...確か...」
周囲がざわつき始める。
(考えろ...この場での最適解を...ってこれは...)
その場に落ちていたものを広い、天に渡す
「天!!」
「おっ...?っし!!おっけーい!理解!!」
しっかり受け取る天。
「シューート!!」
天は神から貰ったものをモンスターに目掛けてデコピンで弾いて弾丸のように吹き飛ばす。
「...ガゥッ!?」
デコピンしただけのはずが、弾丸の挙動をしてしまった物体はモンスターを貫通し無事モンスターは倒れた。
「へへっ!ありがと!にぃ!」
「あぁ、なんとか助かったな」
「す、すげぇ...あの子達」
「まだ俺たちより若く見えるけど...」
周りが2人の事を話しているが、そんなことを無視し2人で会話し始める。
「ところで、なんで鉄の塊を私に渡したの?」
「おそらく、あいつは何も属性がないと思ってな。じゃなければこっちに近づいてこないしな...なのであれば銃に近いものなら余裕で倒せるだろうと考えてあれを渡したんだ。」
「ほぇ~...」
「あ、ありがとうお姉ちゃん...お兄ちゃん...」
「ううん。良いってことよ!」
「そうだ、君、親御さんはどうしたの?」
そうして襲われそうになっていた子に質問をする神。
(さっきから気になっていた...もしかしたらこの子は...)
「お母さんとお父さんは...」
と俯いてしまう...。
「...いないのか」
子供は静かに頷く。
「どうする?にぃ」
「そうだなぁ...」
(この世界には養護施設的なのがないっぽいな...だがこの子だけでは確実に生活できないだろう...なら...)
「やっぱりそうする?」
「あぁ...そうだな」
2人は覚悟を決め、その子に問いかける。
「私たちと一緒に来る?」
「俺たちと一緒に来るか?」
「えっ...?」
(俺達も親とは会ったことがない...昔から国の支援だけで生きていた...親がいないという境遇は似てるからな...せめてこの子と一緒に居てあげたい...)
「ほ、ほんとにいいのですか!?」
「うん!勿論だよ!」
「親になる。とまでは行かないが...俺たちは君の支えになりたい」
「う、うん!!」
(...見たところ、この世界には奴隷制度があるようだしな...検問で並んでいた人の中に奴隷のような子が何人かいた...おそらくこの子は奴隷になろうとしていたのかもしれない...子供では稼ぎに限界があるからな...)
「い、一体なんの騒ぎだ...!」
と門の中から兵士と共に出てきた。
「フィルロッテ伯爵...!!」
(伯爵か...どうやら偉い人が現れたようだな...)
「なんとか一件落着だねっ!にぃ!」
「そうだな」
「...あ、そうだ。ところで君...名前は?」
「えと...名前は無いんです...」
(そうなのか...いや...そりゃそうか...生まれた時から親がいない。と考えると妥当だ...)
「なら、名前決めよ!」
「そうだな」
「じゃあテイでどうだ?」
「...テイ??」
「テイ...テイ...!!」
嬉しそうなテイと名付けられた子。だが
「な、なんでテイ...?」
小声で天は聞いてくる。
「いやだって俺らの名前、神って書いて神。天って書いて天なら似たような名前の方がいいだろ?」
「いやぁ...それはわかるけど何でテイ?」
「帝のテイだよ」
そう神が話した瞬間。
「!!」
パァアアアッと目をかっぴらき、そしてキラキラと輝かせる天。
「そういうこと!!流石にぃ!!」
バシンバシンと叩かれる神。まぁ本気なわけないので痛くない。
(あ、そうだ。これだけは聞いておかなければ...)
「なぁ、テイ。」
「は、はい!なんでしょうか」
「性別はどっちなんだ?」
「テイの性別は女です...!」
「えー!!女の子なのー!!」
と天は大喜びをし、テイに抱きつく。
(なるべく知っておかないと後で大変なことになるからな...)
「貴殿ら」
門から出てきた伯爵は神達に話しかける。
「っ!!」
「は、はい!?な、なんでしょう!!」
「どうかなさいましたか。伯爵様」
といち早く跪く神達。
「頭を下げんで良い...下げるのはこちらの方だ...」
「フィルロッテ伯爵!?」
「えっ...」
「っ...!?」
「嘘...だろ」
「伯爵が頭を下げた...」
(周りが騒ぎ始めている...当たり前だ...伯爵が頭を下げるだなんて...)
「な、なんで伯爵が頭を...」
「そ、そうですよ!お偉い方ですよね!?」
と2人は困惑する。
「あのモンスターには昔から迷惑をかけられてばかりでな...だがここら辺には中級以上の冒険者や剣士などが少なく倒そうにも倒せなくてな...だが貴殿らがあのモンスターを倒してくれただろう...?だから感謝しているまで...」
「そ、そんな...」
「お礼として、是非とも我が屋敷に来てくれないか?」
「えっと...どうする?2人とも」
「テイは、お2人に着いていきますよ!」
(このまま断るのも申し訳ない。それに断ったとして検問を通れるとも限らない...。後、テイにお風呂浴びさせ、普通の服も着させたいしな...ここは厚意に甘えて)
「分かりました。では私、神と妹の天。テイも一緒で構いませんか?」
「あぁ...良かった...本当にありがとう...神様...」
街をフィルロッテ伯爵と一緒に3人は歩いていると
「フィルロッテ伯爵ー!」
と民から手を振られ挨拶されている。それに対し伯爵も小さく手を振って返している。
(民から愛されているのか...信頼出来るまともな伯爵で良かった...)
「す、凄いね...伯爵様人気者じゃん...」
「確かにそうですな...わたくし達は街のために動いていただけに過ぎないのに...」
「街のために動くの凄い!!」
「そ、そうですよ!!」
(天とテイ似てる...超可愛い)
など思っていると
「着きましたよ」
「ここがわたくしの屋敷です。」
「で...」
「うわぁ...」
「でかーーい!!」
(ヨーロッパの建築に近いが...だが要所要所でヨーロッパの建築らしくない...この世界独自の建築法か...)
「ではどうぞお入りください」
「お邪魔致します」
神がそういうと
「お、お邪魔致します...?」
「お、お邪魔致します...!」
2人とも真似をする。
(真似っ子可愛すぎ...死ねる)
2人の可愛さに食らう神。
「ところで伯爵様」
「フィルロッテで宜しいですよ」
「ではフィルロッテさん」
「なんでございましょうか」
「子供用の動きやすいけどちょっとオシャレな服ってないですか?」
「子供用の服ですか...少々お待ちください」
とフィルロッテ伯爵は離れていく。
「も、もしかしてテイの服だったりしますか...?」
おずおずとテイは聞いてくる。
「うん。そうだよ?」
俺はテイに対し優しい笑顔で答える。
「な...テ、テイにそこまでして頂けるなんて...」
「当たり前でしょ!」
「だって私たち家族じゃん!」
「...っ」
(天の言った通り俺たちは家族だ。)
「ってかやっぱりにぃの表情って、普通の人より動かないよね」
「...しょうがないだろう」
(普通の人より動かない...ってなんならほとんど動いてない気がする...)
テイは心の中で思う。
「お待たせしました」
とフィルロッテ伯爵が帰ってくる。
「こちらでどうでしょうか」
「伸縮自在でほんのり可愛い女の子用の服でございますが...」
「可愛い!!普通に私も着てみたいかも!」
「これでいい?テイ」
「は、はい...!!」
(2人が選んだものならなんでも良いです...!)
「もっと欲を言っていいんだぞ?」
「...えっ?」
「そうだよ!テイ!」
「テ、テイは...」
「お2人が選んだのでしたら何でも嬉しいです...!」
と満面の笑みで答える。
(グッ...ダメだ可愛すぎる...)
(テイちゃん...!!いい子過ぎ!!可愛い!好き!)
2人はテイに心を鷲掴まれた。
「女の子用の服全部くれたりできませんかね」
神は真剣な眼差しでフィルロッテ伯爵に問う。
「お願いします。フィルロッテ伯爵さん。全部下さい。」
天も同じ顔でフィルロッテ伯爵様に言う。
「そ、そんな...良いですよ!」
と遠慮するテイ。すると
「勿論です!あなた方は街を救ってくれた人ですので、全てあげますよ」
「やったー!!」
(ん?思ったけど...冷静に考えてどうやって外に持っていくんだ?例えば国に行くとする...街を出なければならないが...全部となると服の量は...)
「服を全部持ってきました」
「多!?」
「凄い量...」
「こ、こんだけの量どうやって持っていけば...」
と呟くと、フィルロッテ伯爵は
「そう言うと思いまして、こちらの魔道具をどうぞ」
「えっ?」
(なんだこれ...)
「こちらは、亜空間を利用し物を収納出来る魔道具で、ポジットと言いまして、遠出に行く人や冒険者様はほとんど持っております」
「はぇ~!凄!」
(こんな便利なものがあるのか...すごいな異世界は...作った人に話し聞きたいが...生きてるかわからんな...)
「このポジットに全て入れておきますね」
「何から何までありがとうございます。フィルロッテさん」
「いえいえ!わたくし達の恩はこの程度ではまだ返しきれていませんよ」
(じゃあ...)
「とりあえず、お風呂を借りても良いですかね...?」
「良いですとも!」
「まぁたしかに女性はお風呂に入らないとな...」
(気持ち悪くて耐えられない人もいるしな...)
「でしょ?」
「だから一緒に入ろ!テイ!」
「えっ?あ...はい!」
「ところでお風呂場はどこですか!?」
「お風呂場は右の通路に行って、手前から4番目のドアにございますよ」
「ありがとう!!」
「行こ!テイ!」
2人は手を繋いで全速力でお風呂場へと向かう。
(それにしても不思議だ...言葉が通じるとはな...もしかしたら日本語と近いのか?それとも...俺たちが日本語を忘れたのか...?)
(何にせよ...異世界転生してしまったんだ...この世界を旅し情報を知らなければな...)
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
社畜生活に疲れた俺が転生先で拾ったのは喋る古代ゴーレムだった。のんびり修理屋を開店したら、なぜか伝説の職人だと勘違いされている件
☆ほしい
ファンタジー
過労の末に命を落とした俺、相田巧(アイダタクミ)が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界だった。神様から授かったスキルは「分解」と「再構築」という、戦闘には向かない地味なもの。
もうあくせく働くのはごめんだと、静かな生活を求めて森を彷徨っていると、一体の小さなゴーレムを発見する。古代文明の遺物らしいそのゴーレムは、俺のスキルで修理すると「マスター」と喋りだした。
俺はタマと名付けたゴーレムと一緒に、街で小さな修理屋を開業する。壊れた農具から始まり、動かなくなった魔道具まで、スキルを駆使して直していく日々。ただのんびり暮らしたいだけなのに、俺の仕事が完璧すぎるせいで、いつの間にか「どんなものでも蘇らせる伝説の職人」だと噂が広まってしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる