天才双子の転生録

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序章 天才双子、異世界へ行く。

全を見、我を捨てる

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「ファルラー!!」
じん達は、城の中を駆け回りファルラの名前を呼ぶが、どこにも居ない。
(呼んでも返事がないという事は、誰かに捕まったか...?)
「ファルラ姫...どこに行ったのでしょう...。」
心配そうな声でテイが呟く。だが、テイだけでなくじんそらも、もちろんマギルヴス達も心配している。当たり前だ。一国の姫が突然失踪したのだから。そうして、じん達は城の外へと出る。
「もし、外なら探しづらいぞ...。」
「...そうですね...。」
事実、外は探す所が多すぎて難しすぎる。そんなこんなで悩んでいると
「マギ、アレしよう...」
と、言いフリートはマギルヴスを見つめる。
「...分かった」
マギルヴスが何かを起こそうと言うのは理解した。だが、何かとんでもないことをするのでは無いかと何となく察するじん
「ちょっと待て...。何をするんだマギルヴス。」
そう聞くと、マギルヴスはいつにも増して真剣な表情でじんの方へ向く。
「俺の魔法を使って、範囲内の元素を俺の目として扱い、姫が何処に行ったのかを探る」
「...は?」
そんな化け物じみた事を聞くが、あまりにも理解出来なくて、固まってしまうじん達。
「えっと...どういう事?」
「あ...あの、もう1回言ってもらってもいいですか...?」
マギルヴスはテイのその言葉を聞き、もう一度同じ事を話す。
「俺の魔法を使い、特定の範囲内の元素を俺の目として扱う。それで姫を探すんだ」
しかしもう一度聞いたところでやはり理解ができない3人。
「...とりあえず、やってくれ。多分、そうしないとファルラがどこに行ったのか分からないのだろ...?」
じんがそう言った瞬間。マギルヴスは目を瞑り、魔法を発動させる。すると、マギルヴスの立っている地面にどデカい魔法陣が開かれるや否や、とてつもない風がマギルヴスの周りで吹き始め、次々と魔法陣が開かれていく。
突然吹いた風に目を細める。すると、それに慣れてきたのか目を開ける。
「何この魔法陣の数...」
思わず口に出てしまうそら。それもそうだ、とてつもない量の魔法陣が重なり交差している。更には、マギルヴスは宙に浮いて、魔法陣の中心で、両手を自身の体の前に出し、何かを貯めている様子。そんな光景に唖然とするじん達。
「綺麗です...」
魔法陣の重なりを見て、目を輝かせながら言ってしまうテイ。そうして、マギルヴスの魔法陣が完成する。
「これが...四星魔導師フィアスターの1人、マギルヴスの魔法か...」
あまりにも異次元すぎる魔法の緻密性と、美しさ、スケールのデカさ、そしてそれを発動させる魔力量に、まだ上がいるのだと思い知らされ、興奮を隠せないじん
すると突然風が止み、一同、辺りを見渡す。そして全てが止まったかのように思った瞬間。
〝共感覚元素〟
マギルヴスが頭の中でそう唱えると、とてつもない風が吹き、一瞬で空気が変わる。すると、そらが急いで後ろを振り向く。
「そ...そら様、どうしたのでしょう...っ!!」
じんにしがみつきながらそんな事を呟くテイ。テイは全く気づいていない...。しかし、空気が変わったことだけは分かるじんが、そらが何故辺りを見回しているのかを話す。
「...そらは、常人より運動神経がずば抜けて良い。だから、人に見られている、と言う感覚でさえも人の何百倍も高い。そしてマギルヴスのこの魔法は、範囲内の元素をマギルヴスと共感覚、つまり、ここら一帯の元素は、マギルヴスと視覚であり、触覚であり、聴覚でもある。という事は、さっきまで人が少なかったのに、一瞬で人口密度がとてつもなく高い一帯のように感じてしまう。更にはそれらが俺たちを見つめている。となると、そらもどうしても違和を感じるのだろう...」
(視線の量としては大会よりも更に上だからな...。俺でさえ怖く感じるんだ。そらなんて余っ程だろ...)
苦笑いながらにそんなことを思うじん。双子だから、同じ天才だからこそ分かる、天才である事の苦悩。
テイはそんなじんの長い説明を、ちゃんと真っ直ぐな目で聞いていた。
「なるほど...やはり何かしらが秀でていると、人の目は気になってしまうものなんですね...」
更にテイは2人の天才が故の悩みも理解したのだ。じんは、そんな年不相応なテイの賢さに
(やっぱ、この子も天才の部類に入るだろ...。年は思いっきり10歳前後なのに、理解力が高すぎる...。)
と感心し、少し難しい説明をしたにも関わらず頑張って読み取ってくれたテイの頭を撫でる。
「えへへ...じん様のなでなで大好きです...」
「っ...そうか」
じんは必死に真顔を取り繕う。それは何故か。理由は簡単。テイの言葉がじんの心にガン刺さりしたからだ。その為、じんの心の中では
(なんだ今のセリフ...。うちの子可愛すぎる...あまりにも可愛すぎる...。しかし、表情ゆるゆるになるな...。今はそんな雰囲気では無い...)
辺りを見渡してる最中、そんな2人の様子をふと見て羨ましかったのかそら
「ねぇ、にぃ!!私にも撫でて!!」
と自身の頭をじんの目の前に出す。
「...ふふっ、分かったから」
そんなそらに笑ってしまうじん。そしてすぐにそらの頭を撫でる。
「へへ...」
(2人とも本当に可愛いなぁ...)
2人を撫でながら癒されていると、マギルヴスの魔法に変化が訪れる。ポーン。何処かからそんな音がなった瞬間、魔法陣が閉じ始め、マギルヴスが地面へ降りる。その後、ゆっくりと目を開ける。じん達はその様子に気づき、マギルヴスの方へ近づく。
「マギ、どうだった?」
フリートがそう聞くと、マギルヴスは苦虫を噛み潰したような表情をする。そんな表情を見て、なんとなく察する一同。
「...もしかして、見つからなかったんじゃないの...?」
そらがそう聞くも、マギルヴスは、いや。と否定する。しかし、さっきと変わらない表情。つまり他の理由があるということだ。
「それが、ファルラは城にいる...」
「...え?」
「城に...ですか...?」
マギルヴスのその発言に困惑する一同。するとそら
「え?で、でも...さっきは声しなかったじゃん...」
そう言った瞬間、じんそらの肩に手を置き
「まぁ、一旦何を見たのか聞こう。おそらく何かあったんだろ...」
そらを止める。するとマギルヴスは冷や汗を垂らし、険しい顔で
「今、ファルラは城の地下牢にいる」
と告げる。
「...そうか」
「...そう」
じんそら憮然ぶぜんとした表情でそう呟く。
「ち、地下牢...?なんで...」
テイはそう疑問を抱く。
「おそらく、元王族の奴隷化と言うやつだろうな」
じんはそう答える。
「元王族の奴隷化...って」
テイがそう質問すると、今度はフリートが答える。
「この国の王は直系だから王になれる訳ではなくて、純粋な力で王になるんだ、魔法だろうが、剣でだろうが、拳でだろうが...だから今、貴族で1番力が強かったレヴィンが王になった」
ウシャグスでの王の仕組みをまずは教えるフリート。しかし、その後表情が曇る。
「けれど、この制度には問題しかなくてね...。力さえあれば、誰でも王になれること。そこに性格等は左右されないんだ...」
苦笑いをしながら言うフリート。
「欠陥だらけだな...」
「だが、この制度は400年前に制定された制度なのだ。その間、王が今のようなことを起こしたことがないのだ。」
マギルヴスがそう言う。が、じん
「この制度で400年間今みたいな事例が起きなかったの奇跡だろ...」
と若干呆れながらツッコミっぽく言う。
「それに関しては僕も思うよ...」
フリートも少し困惑しながらもそう言う。
「とりあえず、ファルラ姫助けに行かないと!!」
「そうですよ!!」
そらとテイがやる気マンマンでそう言い、城に向かおうとする。しかしじんは2人の首根っこを掴み
「待て待て、これで返り討ちにされたらどうする...」
と言い、2人を止める。
「私はやられないから!!だから早く行こうよ!!」
そら様なら行けると思います!!」
そんなじんの言葉を聞かず、子供みたいな文句を言う2人。
じんの言う通りだよ、2人とも。レヴィンはクソ野郎だけど、頭が良くて用意周到だから、この場面で王になったのも、事前に用意して、確実に勝てるからだと思うよ。」
フリートがそう言うと、2人は落ち着き、暴れなくなる。
「...じゃあどうするの」
そらは少しだけ不貞腐れながらそう言う。
「ですけど、じん様より頭が良い人をテイはまだ見た事がありません...。それにレヴィンという人が、そら様に適うとは到底思えませんし...」
テイはそんな事を言うが、フリートは
「だとしてもだよ、相手はマギの予言を知ってるから、慢心せずに、世界でも有数の強さを誇る人を傍に置いてる可能性だってある」
と、否定し、皆を止める。
「あいつは、賢い上に徹底的に対策するからな...。」
レヴィンの厄介さをかなり不機嫌ながらに愚痴るマギルヴス。
「...ハハハ!超愚痴るね、マギ」
「そりゃ、愚痴るさ。あんな厄介な人間は今まで見たことがない。」
(こんなに文句を言うということは、マギルヴスは本当にレヴィンのこと嫌いなんだろうな...)
心の中でそんなことを思うじん
「...でも、攻め入るとしてもどうするの?」
そらはそう質問してくる。そんな問いに対して、じんは真剣な表情で答える。
「...明日、俺たちは城へと攻め入ることにする。そしてその作戦を今から話す。」
「...分かりました」
「作戦ね。」
「やるか...」
そんなじんの真剣さを見、気を引き締めるテイ、マギルヴス、フリートの3人。
「さぁさぁ!早く作戦教えてー!にぃ!!」
そんな3人に引き替えテンションの高い天《そら》。
「...テンション高いな。そら
「そりゃあもちろんでしょ!あの上から目線のウザいレヴィンというクソ野郎をボコせるんだから...!!」
無邪気に笑いながらそんなことを言うそら。そんなそらの発言に
「そ、そうか...」
(1回話しただけで相当嫌いになったんだな...)
と、そらの殺意の高さに若干引くじん
「とりあえず話してくれない?どういう作戦かを」
フリートはそう質問する。その質問に頷き、じんは話し始める。
「ファルラ奪還作戦だが───」


「───という風な作戦なんだが...」
じんの作戦を聞いた一同はその作戦の内容に驚く。
「そ、そんな作戦で良いのですか...?」
「その作戦、通用するのかなぁ...」
「全くもって理解できない作戦だな...」
そんな皆に対しそらじんが話した作戦を聞いて
「オッケー!その作戦で行けばいいんだね!」
と、笑顔で答える。
「...そら様ってじん様の言うことはしっかり聞いてますよね」
テイはそらを見つめながらもそんなことを言う。
「にぃはいつも正しいこと言うからさ。小さい頃からそうなんだ」
そう言いながらそらはテイの頭を撫でる。
「双子特有の絶大な信頼か...」
「そう、私とにぃは双子で、どんな時でもずっと一緒に居たから...」
少し物悲しそうな表情でそらは言う。そんな姿を見てテイは何かを言おうとするも、踏みとどまる。
「ほら!皆、この作戦で行こ?にぃの発案なら絶対に成功出来るから!!」
先程の表情から一瞬で無邪気な笑顔に変わり、皆を納得させようとするそら
「...まぁ実際、じんの頭の良さは何となくわかったけど...」
フリートは納得してない為、そんな事を言おうとした途端。そらがフリートの前に手を出し、発言を止める。
「いや、にぃの頭の良さを舐めちゃいけないよフリート。にぃの本領発揮はここからだから」
そうそらが言った瞬間。じんの雰囲気が変わったのがわかる。
(さて...。皆に話した作戦の内容は最も成功率の高い作戦だが、例外が来る時の作戦も考えなければ...。)
顎に手を当て、難しい顔をしながら考えるじん。そんな様子をただ呆然と眺めるテイ。
「始まったね、にぃの未来算が」
そらじんの考える姿を見て、嬉しそうに言う。
「未来算...?」
フリートはそらが言った単語が気になり、そう質問すると、そらはすぐに答える。
「未来算と言うのは、にぃの特技...というか癖なんだけど、超集中モードに入って、その後に起きる事や、起きたことに対する対処を考えてるの。その人の感情や、かなり確率が低い事が起きた場合の事も含めてね。」
「す、凄い...。そこまで考えてるの...?」
そらが言った事に困惑と驚愕しか感情が湧かない3人。
「対処の仕方が本当に未来予知で、事前に対処してるから凄いんだよ~。」
「だから未来算なのですか...!?」
テイは名前の理由に気づき、嬉しそうに目をキラキラさせながら聞く。しかし
「うん!まぁ名前付けたのは私の独断でだけど」
「そうなんですか...?!」
そんな事実を聞き、驚愕するテイであった。
「よし...。明日に備えるぞそら、テイ」
「りょーかーい!」
じんはそう言い、宿に戻ろうとする。そんはじんの言葉を納得する。
「え...もしかして、その未来算と言う物がもう終わったのですか...?」
「...その単語、そら?」
じんの言葉に圧を感じたそらは即座に目を逸らし
「ナンノコトカナー」
と棒読みでとぼける。そんな様子を見たじんはため息を吐きながら、テイに終わったと説明する。
「そ、そうなのですか...」
(やっぱり、じん様の頭の回転の速さってとてつもない...)
テイは再度、じんの頭の良さに驚く。だがそれと同時に、
段々と慣れて来ている様子でもあった。
「じゃあまた明日ね。3人とも」
フリートがそう言いながら、手を振る。
「また明日な」
マギルヴスもそういい、2人は学園へと向かう。

「それじゃあ私達も早く宿に戻ろっか」
そらはそういい、じん達の先を歩く。
「あー...悪い。そら、テイ。俺ちょっとだけ用事あるから、先に行っててくれ」
「どこかに行くのですか?」
テイは、そう疑問する。じんはテイとそらの方に振り返る。そしてテイの質問に答える。
「あぁ、少しだけ離れる」
しかし、じんは内容までは伝えず、どこかへ行くことだけを伝える。じんの様子を見て少し心配そうに見つめるテイ。そんなテイを見たそら
「大丈夫だよ!テイ」
と言い、頭を撫でる。
「...っでも」
そういうも、そらは続けて喋る。
「私のにぃは私と同じで天才だよ!?どんな不利な状況だって覆せる!!だからさ、テイ。にぃを信じよ?」
満面の笑みでそらは自信を持って言う。テイはそらじんの双子ならではとは思えない程の絶大な信頼と2人の天才さを見て、感心し、感動する。そして同時に憧れる。テイも、2人みたいになれたら良いな。と
「じゃあ宿に戻ろ!テイ!」
そう言いそらはテイの方に手を伸ばす。
「...はい!!」
テイはそらの方に走り、そらの手を取り、一緒に帰る。
「...さて...。おい、隠れてるのわかってるぞ」
路地裏に行って、そう何かに言うと、突然影から人が現れる。
「...気づいていたか」
全身黒の服装のそいつはニヤケながら言う。
「...お前一体何モンだ、レヴィンの差し金って感じでもねぇが...。」
「私の正体などどうでも良い。」
何かは首を振る。
(こいつの話し声、何故かは知らないが人とは思えねぇ...)
「...そうか、なら深くは聞かねぇ。じゃあ何故お前は俺たちを追ってた。それくらいは聞いてもいいだろ」
じんは、ソレが放つ気配が、今までの人とは違う別の何かを感じ、警戒をしながらそう質問する。するとそいつはじんに近づく。
「良いだろう。ここではアイツに聞かれるからな...。移動しようか」
そう言い、ソレはじんの肩に触れる。じんは警戒を解かず、そいつを見つめる。だが、ソレからは殺意を感じない為、抵抗せず受け入れる。
「...何者かわからないやつに触れることを許すのか」
「お前からは殺意を感じない。今この場では俺の事を殺さない。そう思っただけだ」
「ほう...」
じんの発言を聞き、ソレは興味を持つ。そして、ソレは自身の後ろから闇の世界を解放させ、じんごと呑み込む。しかしじんは動揺せずにそのまま受け入れる。そんなじんに少し驚くも、感心する。
「動揺しないか、素晴らしいな────」

「────ここはどこだ」
2人とも仁王立ちのまま、謎の暗闇の世界を落下していく。
「ここは狭間の領域。現世でも、深淵でもない...。その間の世界」
「狭間の領域...?」
そうじんが言った途端。ソレはフードを脱ぐ。そしてソレの顔が明らかになる。白髪で、両の眼が赤く光っている。まるでその姿は
「俺...?」
衝撃を抑えられず、口から声に出てしまう。あまりにも自分に似ているから...。しかし、ソレは
「いや、私はお前ではない。私はお前の父親だからな...」
と、否定する。その発言を聞き、じんは驚愕する。当たり前だ。今までそらじん、2人だけの家族だと思っていたのに、この世界に3人目の血縁関係者がいたのだから。
「...は?俺の父親...?」
あまりの衝撃に理解できないじん。生まれてから16年、一度も見た事がない親の顔。それがこの世界にいた。その事実に。
「お前...お前!!どの面下げて俺に...っ!!俺たちに逢いに来たんだよ!!なぁ!!」
「...すまない」
じんは自身を父親と名乗る男に、襟を掴み、怒鳴り散らす。今まで眉間に皺が寄る程の怒りをしたことが無いじんが。
「俺たちが、そらと俺がどれだけ苦労して16年過ごしてきたか分かるか!?なぁ!!!」
しかしじんの怒りには、どこか悲しい感情があるのがなんとなく感じる。
「...すまない」
「昔、一度だけそらが自殺しようかと考えてた時期もあった...。違う時期だが、俺もそういう時があった...」
じんは、思い出したくもない過去を思い出しながら、その時の辛さを突然息子の前に現れた無神経の父親にぶつける。
「だが、そんな時でもお前は助けず、こっちの世界で影に潜んで人を眺めるばかりしてたのか!?あぁ!!?」
じんの目が少しだけ滲む。その様子にただ、父親は黙ることしか出来なかった。
「黙るってことは図星かよ...お前、終わってんな...」
そんな父親の姿を見て、じんは呆れる以外出来なかった。
「早くこの世界から出せ。お前の顔はもう二度と見たくない...」
そう言い、じんは父親を背に、父親を急かす。
「...ジン」
「早くこっから出せよ!!」
父親が、何かを話そうとするも、怒り心頭のじんは話を聞こうとせず、そう怒鳴る。
「...分かった」
(まさかこの世界に父親がいるとは思いもしなかった。だが、あんなのが俺たちの父親だってことは知りたくなかったな...。最悪だよ...)
そして、じんは地上に戻り、その場を去る。その後、冷静に戻ったじんは考え事をする。
「ってか、俺の父親がこの世界にいるってことは、俺とそらって元々この世界の住民なのか...。だから俺、魔法に慣れるのが早かったのか...?」
1人、歩きながらそんなことを呟くじん。そんな考え事をしていると、いつの間にか宿に着いていた。
「...まぁ、今はそんな事考えなくていいか。今はただ、ファルラを助けるだけを考えないとな」
そう言い、じんは宿へと入っていく。
「あ、おかえり~!!にぃ~!!!」
扉を開けて、じんの姿が見えた瞬間、じんに抱きつくそら
「うぉお...ははっ...ただいまそら
「...ねぇ、にぃ?」
そらじんに抱きついた状態のまま、何かをねだるような表情をする。
「...はぁ、ダメだよそら。」
何かに気づいたじんは、そらにそう言い、デコピンする。
「...ほんとに、昔からずっと言ってるだろ。抱きつく以上はダメだって」
「ちぇー...ケチィ」
そんな2人の様子を、廊下で見ていたテイ。
「...あ」
「あ、テイ~!おかえり~」
2人はテイに気づく。テイはそんな光景を目にし、買ってきていた物をその場に落としてしまう。そして
「...そら様とじん様がチューしようとしてますーーっ!!!!!」
と大声で叫んでしまう。
「誤解だ!テイッ!!」
「えへっ、テイに見られちゃったぁ~」
「何照れてんだ、そらお前コラ」
この後、テイに説得し、そらには説教したじんであった。

「とりあえず、ファルラを救出する作戦の予備案を2人に話そうと思う。」
夕食を食べ終わった後、じんが話し始める。
「予備案ですか...?」
「あぁ、けどこの予備案は...そら。お前に頼りきりになってしまうんだが...それでもいいか?」
じんそらの肩に手を置き、そう質問する。じんは少し申し訳なさそうな顔をするが、そら
「もちろん!!大丈夫だよ!!」
と、満面の笑みで快諾する。
「いつもありがとな...そら
そう言いながら、じんそらの頭を撫でる。
「だいじょーぶ!!私、にぃの事大好きだから!頼られるだけで嬉しいよ!」
ムフーンと鼻息を大きく鳴らすそら。任せて!!と全身から伝わる。
「...とりあえず、話を始めるぞ。」
優しい笑顔から一転。真剣な表情になり、作戦の予備案を話し始める。
「まず、仮にレヴィンが予想以上に強かったとする。そうなった時にそら、お前の力が必要になる。力じゃ俺とテイは勝てないからな...。後、マギルヴスの実力がまだハッキリとしてないしな...」
「確かに!フリートの実力はなんとなくわかったけど、マギルヴスの実力見てない!!」
じんの発言を聞き、目をカッ開きながら立ち上がりそう叫ぶそら
「...夜中だぞ。そら
「あ、ごめん」
「もし、レヴィンが俺の思っている以上に強いのであれば...。手こずる可能性も考慮しなければな...」
じんはまたも顎を手に当て、ブツブツと何かをつぶやく。
「ありゃ、集中モードになっちゃった...」
頬を指で少し掻きながら困惑するそら
「こうなると元に戻らないんですか?」
そんなテイの質問に苦笑いしながら
「うん、戻らない...」
と答える。
「今話してる最中なのに...」
そんな答えに困惑しか湧かないテイ。
「...よし、大体の計算は出来た...。しかし、やはりどの計算結果も結局はそらが頼りになってしまう...」
そう呟き、少し罪悪感のある表情をするじん。しかしそら
「大丈夫だって!!さっきも言ったけど、私はにぃに頼られるの好きだから!」
と満面の笑みで答える。
「...本当に、ありがとな、そら
じんそらの頭を撫でる。
そうして、じんは2人に予備案の内容を語り、その後、眠ることにした。

時計の針が頂点を丁度過ぎた頃。突然地鳴りがし、民たちは一斉に起きる。その間、各所で困惑や悲鳴などの声が聞こえる。その地鳴りにじんとテイは気づき、即座に起きる。
「え、何ですか!?」
「な、なんだ...この変な地鳴り...」
テイはそらを起こし、じんは窓を開け、状況を確認する。
「起きてください!!そら様!!」
「んみゃぁ...どしたのぉていぃ...」
そらを転がすのかという位に揺らした後、やっと起きる。
「...な、なんだこれ」
じんは外の光景を見た瞬間。絶句してしまう。
「え、ど、どうしたのですか!?じん様!!」
テイはそう言い、そらと一緒に外を見ると、外では至る所が火に包まれている。その光景はまるで、
「大災害でも起きたのか...」
思わずそんな言葉が口に出てしまうほどに凄惨な光景だった。
「な、なんで...」
「たった一夜でどうして...」
2人もそれ以上言葉が出なかった。あまりにも突然すぎる出来事に、脳が追いついていない為だ。そんな3人に追い討ちをかけるように、鼓膜が潰れるほどの爆音が突然鳴る。
「なんだ...!?」
そう言い、状況を確認するために、3人は外を出ると、そこには見た事のある姿が。
「...え」
「嘘でしょ...」
黒に限りなく近い紫色の鱗、蛇のような瞳孔、黄色の瞳、魔法学園とほぼ同じ大きさの翼、そしてわかりやすい3つ首。その姿は3人からすると記憶に新しく...。
「アジ・ダハーカ...」
3人、いやマギルヴスとフリートを含めた5人からしても、予想外で、そして絶望的な乱入者だった。
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過労の末に命を落とした俺、相田巧(アイダタクミ)が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界だった。神様から授かったスキルは「分解」と「再構築」という、戦闘には向かない地味なもの。 もうあくせく働くのはごめんだと、静かな生活を求めて森を彷徨っていると、一体の小さなゴーレムを発見する。古代文明の遺物らしいそのゴーレムは、俺のスキルで修理すると「マスター」と喋りだした。 俺はタマと名付けたゴーレムと一緒に、街で小さな修理屋を開業する。壊れた農具から始まり、動かなくなった魔道具まで、スキルを駆使して直していく日々。ただのんびり暮らしたいだけなのに、俺の仕事が完璧すぎるせいで、いつの間にか「どんなものでも蘇らせる伝説の職人」だと噂が広まってしまい……。

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