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番外編(いくつかの本音)
番外編4『母は強し』
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(俯瞰視点)
2組の合同婚約式の前、王族女性用の控室に集まった4人の母親たち。
「ラウル&ライラ、ライル&シエラ、お似合いだから喜んでたのに……。予想外な組み合わせね。」
王妃──ラウル殿下の母親──が、ぼやくように語り始める。
今回の式典では、彼女の息子は主役になり損ねている。楽しみが予想外な方向にズレた結果だ。
「ウチの息子は策に溺れて事態を悪化させたようね。予想が甘いのよ。」
公爵夫人──ラウルの母──は、なかなかに辛辣、ただし成長を期待して見守るという心を感じさせて……。
「私は、ラウル&シエラ、ライル&ライラでも構わなかったですけど。確かに『予想外』の展開ですわ。」
侯爵夫人──ライラの母』──は、どこかおっとりしてるけど、意外と中身は強い。王妃に対して少しばかり申し訳なさそうではあっても、娘の幸せを守る気が伝わってくる。
「ウチの娘は結婚する気になっただけでいいですわ。予想もしなかった相手でしたけど。」
伯爵夫人──シエラの母──は溜息交じりに言う。
後半、ライルの母に視線を向けないようにひそかに気を遣う。レイドという伏兵は、母親たちにとっても予想外だったのだから、ライルの想いを気づいてた身としては複雑な気分にもなろうというもの。
「大人ぶって傷つけて、格好付けて嫌われて、アレが第1王子(王太子)じゃなくて良かったわ」
「公爵家もね。遊んでるフリで初恋の自覚さえ手遅れな馬鹿じぁあ、ね」
「結婚前に、娘からラウルに原因だけでも説明させますわ。」
「結局、ライラを婚約者候補筆頭にした人間も、心当たりさえ説明してないんですよね?」
王妃が息子を一刀両断、もちろん冗談交じりなのでライルの母が乗っかる。ライラの母が援護の方向の持っていくも、シエラの母はスパイスをパラり。
4人集まると大抵はこんな感じになるので誰もが通常運転なだけ。
「無自覚に傷付ける言葉を言うのも、まったく気付かないのも王族としては問題だわ。」
「自覚を促さずに興味本位で煽る馬鹿も側近としては問題よね。」
「苦手意識のままに逃げ回ってるのも……ねぇ。」
「……」
先ほどの母親らしい言い方から、今度は王侯貴族としての色合いが強い発言が出て……。
当事者(息子・娘)の立場が重いほど早く言葉が口を出るので、シエラの母はそっと溜息1つにとどめて沈黙。
「とにかく、ウチの馬鹿は叩き直すわ。」
「なぜこうなったか説明で理解しなかったら再教育だわ。」
「結婚までには美形嫌いを克服させなくては……。」
「領地に引き籠こもりすぎないように引っ張り出すので、あの娘と王宮などで出会ってしまったらライル君のフォローお願いしますわ。」
それぞれの子供について今後の方針を話して協力体制を作る。
「息子たちは、今回の傷は浅くても、しばらくは心の擦り傷が絶えないわね。でも、いい薬だわ、甘やかさないでね?」
「任せて!」
「「……。」」
と思ったら、基本的には喝を入れる方向に進む王妃と公爵(王弟)夫人。他の2人は沈黙してるけど、表情は王妃たちと同じ笑顔。
当事者はもちろん関係者である男たちの反応なんて気にもしない。
子供の教育は率先してやってきた、情報共有して助け合ってきた、そんな4人の母親たちは子供に対する愛情も責任も人一倍強いから……。
ここに男性陣が居たら思うことはきっと共通……『やっぱり、母(親)は強い』。
***(番外編4 完)***
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