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第一章
第24話 レイの想い
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「アル、ちょっと話をしてもいいかしら?」
「は、はい。それにしても、よくここに泊まっていることが分かりましたね」
「私のところには色々な情報が入ってくるのよ」
さすが騎士団の隊長である。
レイさんを部屋へ案内し、ソファーに座る。
「アル、よく聞いて。まず私たち一番隊は明日王都へ帰ることになったわ」
「え!」
「突然だけど、任務にはこういったことがよくあるのよ。アルも騎士団を受けるなら覚えておきなさい」
「わ、分かりました」
「今年の騎士団の入団試験は四ヶ月後。現時点ですでに私と互角のアルだから、間違いなく合格できるわ。だって騎士団に私と互角に戦える者はいないもの」
「は、はい」
「そして、ここからがとても大切な話よ」
そう言って、レイさんが丁寧に説明してくれた。
俺がレイさんに見せた紫雷石は、絶対他人に見せないこと。
存在も話してはいけない。
銀狼牙であるエルウッドの角を隠すこと。
角を隠すための額当てを発注したので、明日鍛冶師のクリスの店で受け取るように。
剣が完成したら王都へ届けること。
その際、エルウッドを連れ、必ず紫雷石も持って来るように。
「……アル、あなたにこれからどんなことがあっても、あなたは……私の大切な……本当に大切な……唯一の弟子よ」
レイさんの言葉が涙声になっているような気がした。
続けてエルウッドにも話しかける。
「エルウッドお願い、アルを守って。そして、あなた自身も気をつけなさい」
「ウォウ!」
レイさんは俺の背中にそっと腕を回し、抱きついてきた。
俺は驚いたが、レイさんは俺の胸に頬を寄せ、しばらく動かず、そして無言で部屋を出ていった。
俺は何も言えず、出ていくレイさんを見ているだけだった。
この日はそのまま宿に宿泊。
翌日起きると、騎士団はすでに出発していた。
俺は支度をして、クリスの店へ行く。
そこでエルウッドの額当てを受け取った。
代金は騎士団が支払い済みだった。
山での食料や生活品を買い揃え、ラバウトを出発。
今回はセレナが見送ってくれた。
山へ帰り、また日常が始まる。
希少鉱石を採掘して、週に一回ラバウトで販売。
ただそれを繰り返すだけの生活だ。
しかし、変わったことがある。
俺は採掘地の標高を上げていた。
世界で最も高い山であるフラル山の山頂だ。
標高九千メデルトを超える場所で採掘していた。
ただし、それは採掘が目的ではない。
二十キルクのツルハシを剣のように持ち、宇宙に届くかのような高高度で素振りをするためだ。
時には採掘すらせず、丸一日素振りに没頭することもあった。
さらに筋力トレーニングも行っていた。
何度か命を落としそうになるほどの激しいトレーニングだ。
毎日毎日、標高九千メデルトという、人が生存できない世界で、とにかく考えられる限りの壮絶なトレーニングをして身体を鍛えた。
俺は騎士団の入団試験を受けようと、決意を固めていたのだった。
「は、はい。それにしても、よくここに泊まっていることが分かりましたね」
「私のところには色々な情報が入ってくるのよ」
さすが騎士団の隊長である。
レイさんを部屋へ案内し、ソファーに座る。
「アル、よく聞いて。まず私たち一番隊は明日王都へ帰ることになったわ」
「え!」
「突然だけど、任務にはこういったことがよくあるのよ。アルも騎士団を受けるなら覚えておきなさい」
「わ、分かりました」
「今年の騎士団の入団試験は四ヶ月後。現時点ですでに私と互角のアルだから、間違いなく合格できるわ。だって騎士団に私と互角に戦える者はいないもの」
「は、はい」
「そして、ここからがとても大切な話よ」
そう言って、レイさんが丁寧に説明してくれた。
俺がレイさんに見せた紫雷石は、絶対他人に見せないこと。
存在も話してはいけない。
銀狼牙であるエルウッドの角を隠すこと。
角を隠すための額当てを発注したので、明日鍛冶師のクリスの店で受け取るように。
剣が完成したら王都へ届けること。
その際、エルウッドを連れ、必ず紫雷石も持って来るように。
「……アル、あなたにこれからどんなことがあっても、あなたは……私の大切な……本当に大切な……唯一の弟子よ」
レイさんの言葉が涙声になっているような気がした。
続けてエルウッドにも話しかける。
「エルウッドお願い、アルを守って。そして、あなた自身も気をつけなさい」
「ウォウ!」
レイさんは俺の背中にそっと腕を回し、抱きついてきた。
俺は驚いたが、レイさんは俺の胸に頬を寄せ、しばらく動かず、そして無言で部屋を出ていった。
俺は何も言えず、出ていくレイさんを見ているだけだった。
この日はそのまま宿に宿泊。
翌日起きると、騎士団はすでに出発していた。
俺は支度をして、クリスの店へ行く。
そこでエルウッドの額当てを受け取った。
代金は騎士団が支払い済みだった。
山での食料や生活品を買い揃え、ラバウトを出発。
今回はセレナが見送ってくれた。
山へ帰り、また日常が始まる。
希少鉱石を採掘して、週に一回ラバウトで販売。
ただそれを繰り返すだけの生活だ。
しかし、変わったことがある。
俺は採掘地の標高を上げていた。
世界で最も高い山であるフラル山の山頂だ。
標高九千メデルトを超える場所で採掘していた。
ただし、それは採掘が目的ではない。
二十キルクのツルハシを剣のように持ち、宇宙に届くかのような高高度で素振りをするためだ。
時には採掘すらせず、丸一日素振りに没頭することもあった。
さらに筋力トレーニングも行っていた。
何度か命を落としそうになるほどの激しいトレーニングだ。
毎日毎日、標高九千メデルトという、人が生存できない世界で、とにかく考えられる限りの壮絶なトレーニングをして身体を鍛えた。
俺は騎士団の入団試験を受けようと、決意を固めていたのだった。
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