転生したら誰もいないどころか何もなかったのでゼロから世界を造ってみた

kisaragi

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第2章

第42話 主人公、格の違いを見せつける

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 神歴1012年、3月6日――ギルティス大陸南東、滅びゆく村。

 午後1時45分――宿屋一階、玄関近くの共有スペース。

「けっこう重傷だが、でもこの程度なら『エンシェントヒール』は必要ない。アリスに癒してもらえ。俺はリアを回復させる。どう見ても、あいつのほうがズタボロだからな」

 言って、ブレナはゆっくりと立ち上がった。

 と、ルナの両目が何かを訴えるように大きく見開かれる。

 そんなことを言っている場合か、とそう言いたいのだろう。いや、こんなことをしている場合か、とそっちかもしれない。

 いずれ、からブレナはしているのである。

 真後ろで、、なんの問題もない。

 ブレナは落ち着いた眼差しでリアを見やると、その流れのまま、彼女の目の前まで一足飛びで移動した。

 途中で、ついでに『もう片方の腕』もザクリと頂きながら。

「ぐッ、ぎゃあぁぁぁぁぁーーーっ!!」

 咆哮。

 うめき声が、まるで雄たけびのごとく耳に響く。

 図体がデカいと、悶える声まで耳障りだ。

 ブレナはやれやれと背後を振り向き、

「分かった、分かったよ。そんなデカい声でアピールされたんじゃうるさくてかなわねえ。先におまえを始末する。それで満足だろ?」

「――――っ!?」

 

 それは、想定外の行動だった。

 ブレナはもちろん、アリスも、ルナも、誰も予想だにしていなかった行動に違いない。十二眷属が『人間』を前にして、よもやそのような行動を取るとは思いも寄らなくて当然である。

 よもや、そのような行動を取るとは――。

「……あ、逃げた」

 逃亡。

 ボソリと落ちたリアのその言葉が示すとおり、獣の十二眷属は身体を小さく変えると(まさか小さくなれるとは思わなかった。小型化したその姿はなんとなくタンタンに似ているようにも思えたが、まあ気のせいだろう)、窓ガラスを勢いよくバリンと突っ切って宿の外へと逃亡した。

 リアが、あきれたように言ってくる。

「……なんであっさり逃がしてんの? 前から思ってたんだけど、あんたって意外と抜けてるよね。ありえない強さしてるくせに。あたしのことなんてどうでもいいから、さっさとあいつ追いなよ」

「追う必要は、ないと思うけどな……。まあでも、まんがいちもある。一応、追いかけとくか。一応、な……」

 その必要はないと、かなりの確信を持って断言できるのだが。

 結果、と、わずか数秒ののちにブレナは知る。

 手負いのトラを逃がすほど、ジャック・ヴェノンはぬるくない。


      ◇ ◆ ◇


 同日、午後1時47分――宿屋前、広場。

「ぁ、がぁぁ……ぁ、ぁ……」

「なんだ、デカくもなれるのか。器用な奴だな」

 想像どおり。

 そこには、想像したとおりの光景が広がっていた。

 立っていたのは、ジャック・ヴェノン。

 彼に見下ろされる形で、くだんの『十二眷属』は地面に伏していた。四肢を全て失い、ダルマになった状態で。

 ブレナは『無駄足』だったことをとりあえずは喜んだ。

「……おま……え……ら、いったい……なに……もの……だ……?」

 瀕死の十二眷属が、息も絶え絶え訊く。

 おそらくはジャックに向けて発した問いだろうが――ブレナは、答える気のない彼に代わって、

「『人間』だよ。おまえらが下等生物だと蔑む人間だ。その人間に四肢をもがれた気分はどうだ?」

「……クソッタレ……だ。まったく……クレッタレ……な……気分、だよ。蹂躙の対象……でしか、ない……ただのオモチャに……殺されるなんて……クソッタレでクソッタレな、気分……さ。ああ……それにしても……つまらん、ねぇ……。もう人間を……狩れなく……なっち……まうと……思うと……はなはだ、つまらん……よ……。もっと、たくさん……ヒト……殺したかった、なぁ……。せっかく、今回みたいな、新しい……楽しみ、かた……も……あみだした……の、に……」

「…………」

「おい、いつまでそのゴミを生かしておくつもりだ? 耳が腐る。トドメは譲ってやるから、さっさと始末しろ」

 これ以上は聞くに堪えない、といった表情でジャックが急かす。

 気持ちは分かる。自分も同じだ。

 ブレナは『グロリアス』の刀身を、ゆっくりと頭上へと振り上げた。

 言う。

「何か言い残すことはあるか?」

「……ある、ね。あの、ガキ……に……よろしく、伝えといて……くれ……。タンタン、って……虫唾が……走るような、クソダサい、名前……つけて……くれ……て……あり……」

 ビュッ。

 みなまで聞かずに。

 振り下ろされた赤刀が、獣の十二眷属の首から上を斬り飛ばす。

 決着。

 ブレナはすぐさま、胸もとの『ペンダント』に視線を移した。

 と、

「――――っ!?」

 音もなく。

 気配もなく。

 前触れもなく。

 何もなく。

 それは、秀逸なイリュージョンマジックのごとく鮮やかに――。

 ブレナは、理解の唾を飲み込んだ。

 文字どおりの真後ろに、

 は、不敵に笑って言った。

「油断したな、ブレナ・ブレイク。、待っていたよ」

「ギルバード・アイリス……ッ!」
 
 十二眷属筆頭、ギルバード・アイリス。

 事態は、風雲急を告げる。
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