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しおりを挟むまだ、たったの十七歳なのに。拒絶するほどの強い意志もないまま、そっと目を開け、長い睫毛が扇状に広がっている様子を盗み見する。でもすぐに恥ずかしくなって目を閉じた。
「……今日、余裕そうだな」
唇が離れると、いつもの落ち着いた目に見下ろされた。
「……つい、意地で」
「なんの意地だよ」
十四歳も年下の侑生に好きなようにされるのが恥ずかしかった。そんなの知ったことではない侑生が笑い、吐息が唇にかかる。
「……なんか違和感あるって言ったけど」
「ん」
「なんか英凜が近い」
「近い?」
遠いじゃなくて?
「……英凜はもっと、俺に他人行儀だろ?」
思ってもみなかったことを言われて、しばらく言葉が出なかった。
「……他人行儀だった、私?」
「……他人行儀っていうと違うんだけど、“彼女”でいようと努力してる感じ」
そうだったっけ。言われてみるとそうかもしれない。昴夜を好きなのに侑生と付き合い続けることを選択した私は、せめて“いい彼女”でなければならないという責任感のようなものに苛まれていた。
「でも夏休みが終わってからそんな感じがしない。……英凜からあんまり緊張を感じないというか。悪い意味じゃなくて、気を遣われてる感じがしない」
違和感を言語化できないように、侑生は「ごめん、なに言ってんのか分かんないな」と苦笑いして、また軽くキスをする。
その手は、私の肌には触れない。
私と侑生は、思春期真っ只中の高校生らしい付き合いをしていた。“最後”まではしないままだったけれど、キス止まりとは言えない。でも、キスを「唇でなにかに触れること」と定義するのであれば、キス止まりと言っても嘘ではない。互いにほぼパンツまで見たことがあるけれど、ただし、それ以上はない。
つまり、今日だってパンツまで見られてもおかしくはない関係ではあるのだけれど、目の前の侑生がそんなことをする気配はなかった。
ゆるゆると、侑生の体が私の上に落ちてきた。甘えるように、私の肩に額を載せる。
「恥ずかしいことを言うけど」
「うん?」
「多分、夏休み前の英凜は、外で食べるほうが好きなものを選べるし味も担保されてるしベターに決まってるって言ってた。それが悪いって意味じゃなくて、まあ英凜らしいなと思うんだけど。今日の、昼を作って一緒に食べようとか、ケーキを作ってきてくれるとか……俺と一緒にいる時間を大事にしようとしてくれてる感じがする」
確かに過去の私はそうしていただろう。それをなぜ今の私がしなかったかというと、ただ今の私にとっての侑生は“可愛い十七歳だから”というだけだ。まだ高校生の男の子にとって、ひとりきりの誕生日なんて寂しいだろうから。お昼ご飯に温かい手作りのものを、誕生日ケーキに手作りケーキを食べてほしい。たったそれだけだ。
そんな母性のような愛情さえ心地よく感じるほど、当時の侑生は私に心の距離を感じていたのだろうか。
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