セックス、トラック&ロックンロール ~女は赤羽の奴隷か!~

岩﨑ジェット

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女は赤羽の奴隷か!……2

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    〝そーか、そういうショバなんだぁ〟

 と、見るからにヤンキー崩れって感じの中途半端な会社員スタイルの若い男がそんなボーイッシュへと接近しているのが見えた。それに気づいたボーイッシュはハッと目を伏せるとすぐ傍らにある女子トイレへとまるで逃げるように姿を隠した。気勢をそがれたヤンキー崩れは人目を気にしたのかそれとなく方向転換して右隣にある男性用トイレへと入って行った。
 
 第一幕終了。幕間……。

 アタシはストゥールを降りると、飲み干したカップを取り上げ撤収に掛かった。
 「なぁ、サキさん、なんで今日はダメなんだぁ」
 「しつこいって」
 「知ってるって」
 「うるせーって。ようするに今日はしたくないってだけ。ただ、それだけ。バーイ」
    アタシは返却場所へカップを戻すと、取り出したスマホへパッケージ業務終了メールを打ちながら店を後にした。背中に卑猥な未練に満ちた男の視線をかんじながら。

    裏通りのトラックへと戻ったアタシは運転席へ腰を下ろすとカーステレオのスイッチを点けた。自選のプレイリストが流れるCD―R。アタシ自身の選曲で初めて作ったカセットからCDへ焼いたやつで、その選曲のほとんどはアタシがある連中に監禁されておもちゃにされていた事件の最中に、我を失わないためにしたものだった。普段はそんな経緯を忘れて、アタシが初めてモノにしたテープの選曲に我ながら満足して身も心もロックに耽ってしまうのだけれども……。その時CDから流れていたのはストーンズの〝ダンシング・ウィズ・ミスター・D〟だったし、勿論堪らないぐらい愛しい曲なのに、何故かアタシの頭のなかでグルグルとリピートしていた曲はナンシー&リーの〝サマー・ワイン〟で、気づいた時には〝サマー・ワイン〟  をサントラに二年前のアイツとのプレイを思い出していた……。

 ……そう、あの時のアタシはズバリ飢えていたのだ。
    ちょうどその少し前、放浪癖が出たアタシはしばらく店を閉めると、トラックに商品を積みこみ、東京近辺をあてどなく流し、コンビニの駐車場や河原を根城にレコードや本なんかを真面目に商売したり、昔取った杵柄で性欲疼けば不真面目に男漁りもしたりで、そんなその日暮らしの冒険の果てに背負いこんだトラブルが雪だるま式ににっちもさっちもな状況を呼び込んで、そこからの抜きつ抜かれつな毎日に、知らぬ間に精も根も尽き果てたのを思い知ってしまうまでの二ヶ月半、とうとうアタシのロードムービーは終わりを告げたのだった。
 で、その後一ヶ月に渡ってほとんど死んだようにボーっとやり過ごした挙句、店のオーナーでもあり、保護者気取りでもあるところの、実際恩人なんだけれど、リョウ兄貴と、そのパートナーたるルミ姉さんに何も告げずに旅に出たそのバツよとばかりに日々お小言を喰らいながら、じきにリハビリ代わりといって押し付けられたパッケージ業務にようやく重い腰を上げたのだけれど、そうご察しの通り、そこで出会ったのがさっきのアイツだったという次第……。つまり、結果として約一ヶ月の禁欲生活明けに出くわしたアイツが今日とは逆にアタシがあのカフェに到着した時にはもうアイスコーヒーを前に窓際のカウンター席に座っていて、アタシの気配に気づいて顔を向けたアイツのいっけん好青年風の相好が好色の側へ揺れるのを見るやいなや、アタシのなかでモヤモヤ芽生えつつあったムラムラが一気に淫らに芽吹いていくのを実感した……。



 もっともはじめの内はアタシの誘いに戸惑っていたようなアイツだったが、挑発するように髪を掻き上げて思い切って先に席を立つと、アイスコーヒーのLサイズのおかわりをテイクアウトしてから黙って後へ続き、店前で佇んでいたアタシと連れだって、駅構内の人波を縫い、夜の通りの寒い夜気を纏いながらアタシのトラックへと向かい、乗り込んだ。はやる気持ちを抑えたアタシはトラックを近くの雑居ビルの地下駐車場へと転がしてその暗がりにパーキングすると、もどかしさに悶えながら脱ぐものも脱がずに荒々しく助手席のアイツへと跨って、その髪を掻きむしりながら激しく唇を貪っていた……。
 最初にアタシが付け込んで、その内にアイツも付け込み返し、車内が淫らな猥褻臭で噎せかえりそうになった頃には、アタシは余韻に浸るにはまだ早いわとばかり、時の流れに抗ってアイツの股間に顔を埋めてしまう始末だったが、アイツはそこを見逃さずに自らの裡にはち切れんばかりに膨らんだ性癖へ引きずり込むチャンスとばかり、やんわりかつ的確にアタシの裡へ付け込んできた。
    「なぁ、まださぁ、やりたいんでしょ?」
    「……迎え酒みたいに、もう一回ねぇ、そっちだって元気まだあんじゃん……」
    「さーね、どうしようかなぁ……じゃあさぁ、見せてくれたらさぁ、多分やれるんじゃないかなぁ」
    「……へぇ? なにさ? 何しろって?」

     ズーズー、ズーズー、ジュッッ……。

    アイツはこっちの質問には応えずにLサイズのアイスコーヒーの残りを一気に飲み干そうとした。アタシは仕方なく自らのフェラが立てる音でもってそれに対抗してみせた。

    ジュパ、ジュパ、ジュバ、ジュバ、ジュ、ジュルルルル……。

    「ああッ、ちょっとさぁ……すんげぇ、きてるってばぁ……だからさぁ、こいつの行き場所を迷子にしたくないしさぁ、ほら、見せてくれよぉ?」
    「だからさぁ、何したらそいつの行き場所を迷子にしないですむのよぉ? ほらぁ、ほらぁ!」

    ジュ、ジュルル、ジュ、ジュ、ジュルルルル、ジュビジュビドゥ……。

    アイツのアソコは今にもはちきれそうな勢いで、アタシはまるで不発弾処理班みたいな慎重さでもってことを遂行していたまさにその時だった……。
    「アンタさぁ、オシッコするの見せてよぉ?」
    「……⁉」
     アタシはしばらくレスらずにアイツの先っぽをチュパチュパしていた。別にアイツの要求が途轍もなくおかしなこととは思わなかった。ウリをしていた野良猫時分には随分そんなリクエストに応えていたし、実際オプション代弾んでくれたし、要はアタシ的にはその時の相手次第の行為ってわけ。で、その時はどうかと言えば……、生理的には嫌な相手とは言えなかったし、けどさぁ、とかなんとかは言い訳に過ぎず、結局薬局アタシはアタシのアソコへもう一回突っ込んでもらいたかったってだけ! そう、ただそれだけでアタシはじきに首を縦に振ってしまっていた……。

    後ではたと気づいたことがあった。アイツは端からその瞬間がやって来るのを、それこそアタシがあのカフェで初めてアイツの相好のなかに好色の揺れを見たと思った時には、あべこべにもう確信していたんじゃないのだろうか、と……。

    その後の事態は速やかに進行した。先ず、助手席側のダッシュボードに凭れたアタシは、その瞬間を待ちわびる半裸のアイツの両腿へ左右の脚を載せると大きく開脚して股間を突き出し、アイツが差し出したどうやら用意周到だったに違いない飲み空けたLサイズのカップへ、ただただ次のファックへのオーバーチュアのつもりで、ちょろちょろという音を奏でながら放尿を始めた……。

    車内灯だけが照らす薄暗い世界で、その時間は妙に引き延ばされた印象で、カップからはうっすらと湯気が立っていて、かぶりつきのアイツが孕む気配からは明らかに恍惚とも呼ぶべき何かが立ち昇っていたのを覚えている……。

    その翌朝アタシの店、ロスト&ファウンドのカウンター裏で目覚めたアタシは飲みかけのハイボール缶へ手を伸ばして口へ含むとブクブク漱いでから唇をすぼめて今飲んだ缶へと吐き捨てた。いつになくネバついた口内にウンザリしていたアタシは、ポータブルプレーヤーのアームを摘まむと同時に回り始めた聴きかけのLPの真ん中辺りへと針を落とした。起き抜けのロックは、カウンター裏で目覚めた時のアタシの習慣ってわけぇ。



    数日前から載せっぱなしだったLPがサイモン&ガーファンクルだったのは意外だった。真ん中辺りで流れ出したのが〝いとしのセシリア〟だからアルバムは『明日に架ける橋』に違いないだろう……。ぼんやりそんなことを考えながらも、その時のアタシの気分にはあんまりハマらなかったのを覚えている。そのせいか、それ以来サイモン&ガーファンクルは聴いてはいなかった。
                                                                       続く
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