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捕まったら何故か膝の上
⑥
結局、僕たちの首輪については国で解除方法を研究することになり、起動ボタンはヤータンが管理することになった。
ヤータンは信頼がおけるし、国王の元にはありとあらゆる欲望が渦巻いてるから逆に危険って判断されたようだ。
僕と一部の子供たちは高山地区で保護され、ほとんどの子たちは野花地区で保護された。
高山地区は地が険しく高山病にかかるものもいるので療養するには向いてないってことで豊かで穏やかでのんびりした野花地区が療養に最適なんだって。
僕もどうせならそっちがよかったな。
そして砂漠地区の族長は国の地下牢に送られ、今は砂漠地区は国が検査してるところ。
新たな族長が決められるか、該当者が見つからない場合は一時的に別地区の族長が統治するそうだけど…砂漠地区の人達は血の気の多い人が多いからあんまりスムーズには進まないと思う。
「ジェルム様、ヤータン様が探してます」
崖でぼーっとしていたら、子供が僕を呼びに現れた。
元砂漠地区の暗部の子供で、足音なく動く癖を活かしてヤータンの特殊隊に入隊したらしい。
ヤータンは常に僕を膝の上に座らせたがるから、偶にこうして行方不明になってやるのだが…たぶん、何処にいるかなんて初めからバレている。
目の前の子供も砂漠地区にいた時より、隠密行動が上手くなっている。
だけど、前よりも肉付きが良くなっているし肌や髪も綺麗になっているように見えるから不思議だ。
僕はそんな変わっていく子供たちを見て、何とも言えない気持ちになる。
「…ジェルム様」
「そのジェルム様って言うのやめてくれる?」
不機嫌さを隠すことが出来ず、声に嫌悪を滲ませて告げた言葉に子供の体がびくりと震えた。
いけない、と思いながらも相手を威圧するのが辞められない。
「だめだよジェルム」
「っふ!」
何処から現れたのか急に真横から抱きしめられて、反射的に手を振りあげるが、その手は簡単に大きな手に包まれ止められてしまう。
僕を持ち上げたのはヤータンで、ヤータンは子供にご苦労さまと声を掛け、歩き出す。
「ジェルム、小さい子を威圧したらだめだよ。特にあの子達は君を慕っている子らだ」
ヤータンの言葉に僕は答えないし、わざと視線も合わせない。
「ジェルム」
「呼ばないで」
さっきから僕を呼ぶ時に皆が口にするジェルムという名前は最近ヤータンが僕につけた名前だ。
今世ではずっと名前の無い人生を歩んできた。
なぁ、君、おい、お前…色んな言葉で呼ばれてきたが名前で呼ばれたことはないし、誰も僕に名前がないことを疑問に思わなかった。
言葉で呼ばなくても必要な時は髪の毛を捕まれ引きづられたことだってあった。
「なんだ気に入らないのか?」
気に入らないわけじゃない。
ジェルムというのは芽生えを意味する言葉らしい。
これからの新たな生を生きるからってことで付けてくれたらしいんだけど…この名前を呼ばれる度に何だか泣きたいような発狂したいような、怒りのような悲しみのような…自分でもわけのわからない感情が込み上げてくるからやめてほしいんだ。
答えずに黙り込む僕にヤータンはふぅっと息を深く吐き出した。
思い通りに行動しない僕に彼は飽きてきたのだろう。
僕を処分するにしてもヤータンがあのボタンを押して小さい子たちを巻き込む心配はない。
子供たちは僕を慕っているとヤータンは言うが、あれは子供たちが誤解しているからだ。
僕は別にあの時、砂漠の族長がボタンを押して僕だけじゃなく子供たちが死んだってよかった。
僕は勝手に彼らも生き続けることより死を選ぶと思ってた。
だからどうなったって問題ないって。
ヤータンたちは僕たちを生かして何かに利用したいのだろうと思ったから、一か八かであの行動をとり、砂漠の族長からボタンを強奪したのだけど…ヤータンたち族長は本当に僕たちを安全に保護しただけだった。
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