薄明喰 短編集【12話執筆中】

薄明 喰

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嫌われ者の僕が牢屋に入ることになった理由



「何故あんなことをしたんだ」


少し前まで僕の婚約者であったノルド様が問うてきた言葉に思わずふっと乾いた笑いが溢れ出た。

それは、ノルド様を馬鹿にしている笑いとかではなく、諦めのような、悲しみのような…マイナスの感情から出た笑いであったのだけど、彼は馬鹿にされたと感じているかもしれない。


僕が何故をしたのか。

それを知ったところでこの状況は何も変わらないだろうし、今更口に出したくないという気持ちが強かった。
それは部屋の90度の角に溜まったホコリのようにこびりついて取れない僕の小さなプライドなのだと思う。


「分かりません」


だから僕はノルド様の問に対して、ただ首を横に振り、分からないと笑った。




-------------------------




ノルド様と初めて会ったのは婚約が決まった後の顔合わせの場としてワードマン公爵家にお呼ばれした時だった。

当時の僕は8歳で、突然現れた婚約者に酷く緊張していた。
それに格上のワードマン公爵家に伯爵家の子供が一人で向かうの本当に勇気が必要だった。



いざ、案内されて通されたテーブルには婚約者であるノルド様が居て、その横には恐らくノルド様のお母様である公爵夫人が居た。


「貴方がユティ・クルノさん?」

第一声、公爵夫人から掛けられた言葉に体が飛び跳ねるくらいびびったが、何とかはいと返事を返すことが出来た。


「そう…ノルドさん。また後で迎えに来るわね」

僕の返事が気に入らなかったのか、どうでもよかったのか…公爵夫人は素っ気ない言葉の後、こちらを視界に入れることなく屋敷の中へと行かれてしまった。



「従者はどうしたのですか」


「え…ぁ…こ、公爵家であれば危険なこともないですし、家の従者よりも一流の方々が居るだらうと…僕ひとりで」



「貴殿の家は自分に使える従者を他家に劣ると思っているのだな。信頼できる従者を雇うことをおすすめする」



「…はい」





初手から向こうの家に対する評価はマイナスだった。

もともとクルノ伯爵家は多くの貴族や民から嫌われている。
領民でさえも、クルノ伯爵に対して良い感情を持っている者などいないような悪名高い家なのだ。


そんなクルノ家と高名なワードマン家の婚約には絶対に何か裏があるに違いない。
それなのに伯爵はついに自分も王家の血筋の仲間入りだと舞い上がっている。


僕はこの婚約は国がクルノ家の何か悪いことを暴くための策であると思っている。
だって、そうじゃなかったらこんなに僕のことを歓迎してない人が僕と婚約なんてするはずがないのだから。








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