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嫌われ者の僕が牢屋に入ることになった理由
③
僕が16歳になり、ノルド様が18歳になった日。
ノルド様の生誕パーティの場で僕は技と周りに見えるように伯爵の部屋から盗んできた白い粉を口にした。
これが依存性の高い危険な薬物であることは分かってた。
そして僕の思惑通り、影に潜んでいた大人達が僕を捕らえ、残っていた白い粉を回収した。
ノルド様の誕生日に悪いな、とは思ったけれど…きっと彼にとっても公爵家にとっても最高のプレゼントになったんじゃないかなと僕は思う。
ふわふわする意識の中、僕は冷たい牢屋に放り投げられた。
薬の影響で、突然目の前に現れる銀の器具を持つ伯爵に奇声を上げる僕を警備の兵士は見向きもしなかった。
牢屋に入れられて2週間。
やっと薬の症状が落ち着いてきた僕の元に尋問官がやってきた。
尋問官には僕が知る伯爵の悪事を全て話した。
尋問が終わって僕は死刑にはならないけれど、おじいちゃんになる頃まで牢屋で生かされることが決まったと聞かされた。
そんな僕は未だ薬の後遺症で定期的に幻覚を見ることがあるから管理する人がつけられた。
僕の管理をする人は初め、僕の爪のない足を見て吐いた。
その後、1本1本の足の指に丁寧に包帯を巻いてくれたけど、管理人とは一度も目は合わなかった。
きっと気持ちが悪かったのだろう。
目の前で体を見て吐かれたことは思いのほか僕の心にダメージを与えていたらしく、その後の体の治療は器具を受け取り自分でやるようにして、服も長袖と長ズボンと分厚い靴下を用意してもらった。
そして僕は面会をすべて拒絶した。
だって、幸せそうな人を見たら羨んでしまう。
だって、帰る場所がある人を見たら泣きそうになる。
牢屋にいる僕には何もない。
いや…もともと僕は何も持っていなかった。
家族はもちろん頼れる人も甘えられる人も本音を言える人もいなちひ誇れる知能もなければ、自慢できる能力も持ち合わせてない。
︎︎バカで無能だからこんな形でしか伯爵の悪事を炙り出せなかった。
牢屋に入れられた次の日に管理人に一つだけ尋ねた。
「伯爵はどうなりましたか」
「…処刑されました」
「そうですか」
処刑…処刑か。
いいな、直ぐに死ねて、いいな。
どれくらいの時を牢屋の中で過ごしたのか、突如、命令で僕は元婚約者と面会をしなくちゃいけなくなった。
「何故あんなことをしたんだ」
「分かりません」
僕の答えにノルド様は顔顰めた。
「ノルド様。犯罪者の息子で薬物中毒な元婚約者の所になんて来ない方がいいですよ」
「君の体には沢山の傷があったと聞いた。なぜ」
「何故言ってくれなかったんだって?あははははは!!!言うわけないじゃないですか!言えるわけ…ないでしょ」
最悪だ。
何でノルド様に僕の体のことが知られているんだ。
もしかして貴族の間で噂が広まっているのだろうか。
思わず込み上げる吐き気に慌てて口を手で塞ぐ。
「おい、大丈夫か。今医師を」
だから会いたくなかったんだ。
「ユティ、君…」
貴方だけが僕の世界にあった優しさだった。
僕たちの婚約はなかなか尻尾を出さない伯爵の悪事を掴むための婚約だった。
何処にいても突き刺さる鋭く痛い視線が向けられる世の中で、ノルド様だけは僕をただユティとして見てくれてた。
僕のことなんて嫌いなはずなのに、それでもノルド様は冬に僕の方にそっと上着をかけて温めてくれたことがある。
長時間吊るされて腕が痛くて、公爵家でカップを落とした時に僕を心配してくれたのはノルド様だけだった。
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