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嫌われ者の僕が牢屋に入ることになった理由
⑤
牢に入って約2年。
僕の目の前にはノルド様と公爵夫妻が立っている。
どうやら僕は密やかに解放され、今後の生活を都から離れた公爵家の領地で暮らすことが決められたらしい。
「暮らす場所は都から離れていて、海や森が近いから空気がいいのよ。動物たちも凶暴なのは滅多にいないから安心してちょうだい」
「必要なものがあれば何でも言うといい」
ワードマン公爵夫妻はぎこちなく微笑んで僕にそう語りかける。
その声は少し前のように冷たく鋭くない。
脳が現実を理解するのを拒否している僕は、そんなワードマン公爵家の皆に言葉を何一つ返すこともなく、気がついたら言われていた領地の地下の暗い部屋で座り込んでいた。
戸を叩く音がするけど、幸い逃げ込んだこの部屋は倉庫だったのか内鍵がついていたから誰も入っては来れなかった。
結局、ノルド様から僕の部屋はここにするからせめて家具をいれさせなさいと言われ渋々鍵を外した。
ノルド様は言葉にした通り、僕を引きずり出すことはせずに本当に家具が運ばれたのを見届けると部屋を出ていった。
誰もいなくなった部屋で、ふかふかのベッドの上、ほんのりと光る灯りをぼんやりと見ていたら気がついたら眠っていた。
僕は1日を牢屋にいた頃みたいに眠ってすごした。
運ばれてくる食事はノルド様のチェックが入るから起き上がって食べていたけど、生まれた時から最低限の食事しかしてこなかった僕は提供された食事の半分くらいしか食べることは出来なかった。
普通は出された分くらいの食事を皆当然のように食べるのだと思ったら、それすら食べられない自分が酷く気持ち悪い生き物のように感じた。
食事を見るのも嫌になってきた頃、ノルド様が突然自分のご飯を持って部屋にやって来た。
そして何も言わずに僕の傍でご飯を食べだしたから戸惑って、ただただ食事をしているノルド様を見ていた。
そして食事を食べ終えたノルド様は何も言わず腕を組み、僕をじっと見ている。
「あ、あの」
「ユティは私が食べている間ずっと見ていただろう。今度は君の番だ」
何故そうなる?と頭の中でツッコミながら、僕は言われるまま、のそのそと食事を始めた。
じっと見られながらの食事は幼い頃に毒を混ぜて作られたご飯を強制的に食べさせられていた頃を思い出して、いつもより食べることが出来ず、更にあまりの緊張にすぐにその場で吐き戻してしまった。
僕が吐いている間、ノルド様は僕の背を撫でて、僕が落ち着くと僕の服を着せ替えてベッドの上に寝かせ、僕の吐瀉物をもくもくと片していく。
ふと、ノルド様は何故ここに居るのだろう?という疑問が湧いた。
「ノルド様…いつまで此処にいるのですか」
「死ぬまでいる予定だ。君が別の所で暮らしたいと言わない限りはね」
ノルド様の答えに僕は気持ち悪さも忘れて飛び上がった。
急な体の動きに胃からせり上ってきたが、ぐっと堪えて片付けているノルド様を見る。
「貴方は侯爵家のあの人と結婚なさるのではないのですか?」
ノルド様には好いている人がいたはずだ。
僕から解放されたらノルド様はあの人と結ばれると噂になっていたのを知っている。
どうせ僕はその後ノルド様と関わることもないし、二度と姿を目にすることもないから関係ないと思ってた。
「一時はそんな話になっていたけどね。話し合って彼との婚約の話は白紙にしてもらった」
「…僕のせいですか」
伯爵にされてきた仕打ちを耳にして同情でもしてくれたのだろうことはノルド様や夫妻が迎えに来た時に分かっていた。
仲の良いワードマン公爵家に異物である僕が加えられることに酷い目眩を感じたのは記憶に新しい。
「いや、私の我儘だ。私は今までユティと会った時に違和感を感じていた。しかしあの伯爵の息子だからとその違和感を追求することをしなかった。正直に言う。私は君への罪悪感でいっぱいだ」
ノルド様の答えに僕はぐっと目を強く瞑った。
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