若き領主に幸福を

薄明 喰

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第一章

守りたかった

マルセの衝撃告白を受けて1週間。

ニドラは久々に領主様の顔を見ることが叶った。



しかし領主様の姿を見てぎゅっと強く血が滲むほど拳を握った。

領主の右目には包帯が巻かれ、今も血が滲んでいる。
右腕の袖はペラペラと揺れ、そこに腕が無いことが分かる。


ベッドから未だ起き上がれない様子の領主様にニドラは情けない気持ちでいっぱいになった。

自分よりも若い15歳の少年を守る力のなかった己が恥ずかしくて、悔しくて堪らない。






「だ…んちょ」

領主様の口から発せられた声はカスカスで、領主様が大きな声を出さなくていい様に慌ててベッドの傍に駆け寄った。


「な、く…なた……き、じ…ごほっ…は」

掠れ掠れだけれど、領主様が自分に聞きたいことは分かった。

まだ体が治ってない絶対安静な中、自分を呼んで聞きたいことがそれなのかとニドラは何とも言えない気持ちになった。



領主がノア様で良かった。
だけど…まだ幼い領主様に甘えることを許さず重い荷を背負わせてきたことを痛感する。

こんな時でもノア様は領主であろうとする。





「死亡した騎士は21名。葬儀は既に終え、家族への補助も開始しております。また重傷者25名のうち4名は退院し自宅で療養中。残り4名は2日の休暇ののちそれぞれの業務に動いています」


「ごほ…き、みも…じゅ、しょ…じゃ?」

「いいえ」


否定したがニドラもあの日腹を引き裂かれ、少し臓器が見えていたほどには重症であった。

領主様に駆け寄る時に飛び出さなくて良かったと心底思う。



それほどの重症であったのにこんなにも早く完治したのはマルセのおかげだ。

領主様が動けない今、1人でも多く領主様を守る駒が欲しいからとマルセは回復しきっていないというのにせっせとニドラの腹を治したのだ。
それには感謝しているが、治療が荒く治される際に激痛を食らわされたことには腹が立つ。




「21…に、んも」

ニドラから視線を離し天井を見上げた領主様にニドラは思わず領主様の左手を握りこんだ。

まさか騎士団長がこんな風に手を握ってくるとは思っていなかったノアは驚いてニドラへ視線を戻す。



「あの厄災で死者が騎士21名だったのはあの魔術師のおかげでもありますが…領主様がいち早く駆けつけてくれたからです。貴方がその責を背負う必要はありません!あの事件を引き起こした国と魔術師共の責だ!あいつらには必ず報いを受けさせてやる!」


領主様に話しながら、死んでしまった仲間たちを思い出してつい言葉が荒んだ。

領主様はそんなニドラの手をぎゅっと握り返した。



「まもり…たか、た、な」

「っはい」



あの規模の厄災に死者数21名で留まったのは本当に最小限の被害であったと思う。

皆よくやったし、領主様は多くの人を守った。



自分だって情けないけれど、やれることは全てやり尽くした。

だけれど…やはり、誰1人失うことなく守りたかった。




それはノアもニドラも同じ気持ちであった。












「ところで領主様。マルセからプロポーズは受けたんですか?」



「ごふっ!」



「領主様!!」



「何をしたニドラ!!!」





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