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第一章
これは恋心?
翌日、マルセは大量の紙を抱えて執務室へ現れた。
すべての書類に目を通して、驚いたのは領民たち全員が魔術研究所の建設に賛成するという結果だった。
『ソロモン公爵家も関わるというし、マルセ様が選んだ者しか職員になれないというのなら安心です』
『西の土地があのままなのは嫌なので、綺麗にしてもらえるのなら住めなくても良いし、マルセ様の研究所があっても良いと思います』
『毎年どんな研究をするかきちんと私たちにも報告すると言ってくださっているし、問題ないと思います』
などなど、とても前向きな意見が多い。
「皆が口を揃えて言っていた。領主様が良いと言うのなら良いと。領民たちがいかに君を信頼しているのか、いかに君が領民たちに心を砕いているのかが伝わってきた」
マルセにそう言われて、ぐっと唇を噛み締めた。
危ない、泣きそうになった。
「反対の意見がないようだし、マルセが所長とする魔術研究所を建設する許可を出します」
「ありがとうございます」
マルセは僕の手を取り、手の甲にちゅっとリップ音をたてて唇を落とした。
大人しく受け入れてはいるが、これはどう対応したら良いのか分からないからで…いや、本当にどういう反応が正解なんだ?
「それじゃあ、さっそく建設に向けて取り掛かるからしばらく私はここを離れる。しかし、何かあれば遠慮なくこれで私を呼んで」
そう言ってマルセが僕の右耳にふわりと触れた。
僕の右耳には連絡用のイヤーカフがついている。
マルセから貰った魔導具で、連絡以外にも音をよく聞こえるように補助してくれてもいる。
右目に食らった毒は神経まで侵入しており僅かに右の聴力が落ちたのだ。
目や腕はどうにもしてやれないけど、せめて耳は…とマルセが3日寝ずに作り上げたイヤーカフだ。
よく音が聞こえるので、右側を後ろから誰かが来ても驚いて体が反応することも減り助かっている。
「くすぐったい」
「ふふ…じゃ、行ってくる」
マルセは悪戯に笑い、そしてふっといなくなる。
物理的に離れたのに、すぐ側にマルセがいる感覚がして不思議。
マルセからの求婚にはまだ答えを出していない。
マルセはのんびりと待つ感じでいてくれているし、僕ももう少し考える時間がほしい。
好感は抱いているけれど、それが恋愛なのか何なのかまだ自身の思いを判断しかねている。
けれど、しばらく会えないのだと思うと寂しくて心許ない気持ちになっている。
これは果たして恋心なのだろうか?
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