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第一章
突然の外出
マルセが所長の魔術研究所は予想よりも大分早く、たったの一月で完成した。
手伝いに行っていたらしい騎士達は今度から家とか建てる時は魔術師を呼ぶべきだって言ってた。
魔術研究所建設をユゲルドの騎士が手伝ったことは新聞の半面を使って報道された。
これはソロモン公爵の采配らしく、必要以上に魔術師への疑心や恐怖心を育てないため、そして魔術研究所が以前の魔獣研究所とは全く異なる施設であることを国民に印象づけるためとのこと。
しかし、今回の件はソロモン公爵が騎士へ手伝うよう指示をしたのではなく、騎士達が自ら手伝いを勝手でたのをソロモン公爵が活用したというような感じだ。
そのおかげで領外から魔術研究所建設への反対の声も今のところ挙がっていない。
僕はそこまで頭が回っておらず、後から聞いて事件後の研究所の建設に関して領外のことも考えなければならなかったと反省した。
「ゆっくりしてくるといい」
自己嫌悪しながら執務をしていた僕の元に突然現れたソロモン親子。
マルセが僕を椅子から立たせて、公爵がその隙に椅子へどしりと腰掛けた。
そして公爵に見送られて、マルセに引っ張られるがまま自室へとやって来た。
「3日分の着替えを用意して」
マルセはそう言うと僕の返事も待たず、扉を閉めてしまった。
訳が分からないまま、言われた通り鞄に3日分の服を詰めていく。
どこかに…出かけるのだろうか?
何かし忘れていた重要な仕事が?
いや、しかし公爵はゆっくりしてくるといいって…どういうことだ?
ガチャ
「用意できたね?じゃあ行こう」
鞄に着替えを詰め終え、どういう状況なんだ?と首を捻っていたら扉が開いてマルセが顔を覗かせた。
そして僕の用意が終わっているのを確認すると、また手を引いて歩き出す。
屋敷の門前には僕の愛馬であるティモと逞しい筋肉をした格好良い馬が並んでいた。
「この子は私の相棒、ロックデュースだ」
「凄く格好良い子だね。肩も腿もしっかりしてるし走るのが凄く早そう」
「早いし体力もある。食欲旺盛でよく食べるが運動も好きだから全ての栄養が筋肉に変わっているのだと思う…ノアの愛馬もハリが良いしよく走ってくれそうだ」
「ティモって言うんだ。とっても頭が良くて人の言葉をよく理解してる。だからあまり人が好きじゃなくて、背に乗せたがらない癖のある子だけど、僕を守ってくれる大切な騎士なんだ」
あの日も一緒に戦場へ駆けてくれた。
本来馬は臆病な動物で、あんな地へ向かうのは怖かったろうに…いや、ティモなら平気か。
妙に好戦的なところがあるし…
まぁ、小さい頃から僕に近づこうとする輩に容赦なく蹴りを食らわせたりして守ってくれていた騎士のような存在なんだ。
とっても大切で、あの日この子が無事でいてくれたことがとても嬉しい。
保護してくれていた騎士の話では、魔獣を蹴り上げていたと言うから流石というか…
「ねぇ、何処に行くの?」
それぞれの愛馬に乗って、前を行くマルセとロックデュースをティモと共に追いかける。
何処へ向かっているのかと問いかけても、どこだと思う?とはぐらかされる。
しばらく馬を走らせて、たどり着いたのは豪華な宿。
馬2頭を宿の馬丁に預け案内された部屋に入るとふかふかのベッドに良い匂いがして、広い風呂と座り心地の最高なソファがあった。
窓から見える景色は山と木々と自然が多く、色んな鳥の囀りが心地良い。
「私は隣の部屋を取っている。ノアの体は今休息を必要としているから、ここでゆっくり休んで」
「でも」
「でもじゃない。何も考えないで心の思うままに過ごすんだ」
マルセに強く言われて、俯く。
疲れているのは皆同じなのに…なのに僕だけこんな…
「サリュ殿にも休暇が出されているし、使用人たちも順番に長期休暇を与えている。勝手をしてすまないが、これ以上は君が壊れてしまう」
そんなことない!と言いたかった。
だけど言えなかった。
最近思考が停止して、ぼーっとする時間が日に日に増えていて、自分でもやばいかもしれないと思っていたから。
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