ごめん、他担

ぽぽ

文字の大きさ
2 / 2

2

しおりを挟む

「やあ、久しぶり」
 
 マスクを少し下げて微笑む王子様。否、王子では無く国民的アイドルの蒼くんである。
    ま、眩しい。笑顔が眩しすぎる……。数日前まで憂鬱だと思っていたバイトが今じゃ至福のひとときとなっている。
 それにしても、昨日会ったばっかだけど久しぶりって言うのはボケなのかな? これが所謂天然キャラってやつ? 俺も相手に合わせておこう。
 
「お、お久しぶりです」
「毎日ちゃんと働いて偉いね」
「そんな。推しに会う為なら労働くらい全然平気です」
 
 HAHAHA、と笑うと彼は突如固まった。
 ど、どうした? 俺、変な事言った? こんな顔面国宝を前にすると無意識にペラペラと気持ち悪い事を口走りそうで怖いが、まだ普通の一般人の会話をしているはず(そもそも貴方は一般人です)
 すると、彼はゆっくり手を出し、俺の頭を撫でた。
 ……ん?これ、所謂頭ポンポンでは?
 
「じゃあ僕からも頑張る葉月くんにご褒美」
 
 鼻の先が触れそうなほど近距離で囁かれた。
 ……流石ファンサの王子・蒼様だ。蒼くんは兎に角ファンサが手厚いと評判だ。一番人気であるにも関わらずファンへの真摯な態度は彼の好感度をより高めている。特に彼は自担にしかファンサをしないということで、余りのファンサを間近で受けた他担が蒼くんへ移ってしまうのも結構ある。俺も例外ではなく、この目で蒼くんのファンサは何度か見てきた。全て俺ではなく隣や前席の蒼くんファンへ向けたものだが。因みにその子達は全員鼻血を流していた。指さし程度でも発狂する程嬉しいのに、彼の場合近くに寄ってきて「好きだよ」と甘い声で囁いたり、投げキッスの後においでポーズ。これは明日が命日というばかりの神ファンサである。俺は旭くん一筋だから耐えられたが、周囲のファンは目をハートにしていた。
 
「ありがとうございます。そ、それでご注文は?」
 
 すると、彼は定番のハンバーガーを選んだ。
 アイドルなのに、こんなジャンクフードを食べるんだな。何だか親近感が湧く。まあ彼も同じ人間だし当然か。
 
 
                ◆◆◆
 
 
「これ、あげる」
「今日も行ったんだ。俺、貰っていいの?」
「ああ。袋は僕が捨てておくよ」
 
 ハンバーガーは昨日初めて食べたが異常なカロリー値だと知りもう二度と食べないと心に決めた。正直買う意味は無いがあの店内に入ったからには注文するのが義務だろう。しかし捨てるのはマナーとして悪いし、他の食べる人間に与えた方が良い。
 そして、袋だけ受け取り蒼は車の座席へ座った。再び今日も彼の事を思い出す。今日も可愛らしい、否、初心な反応だった。目が合っただけであんなに震えるなんて、まあこんな至近距離で僕と会うなんてライブの時でも滅多に無いから当然か。それにしても、毎日僕の為に働いているなんてそれ程愛されているとは自分でも思わず何処か照れ臭い。折角だから特別にサービスとして頭ポンポンまでしたのに思ったよりも薄い反応だった。僕に耐性がついたのかもしれない。まあこれからも会うから慣れてくれた方が良い。そして蒼は他のメンバーの声など聞かず一人ほくそ笑んだ。
 
「毎日通う気なのかな? まあ俺はハンバーガー食べられるから良いけど」
「袋、そこに捨てられるのに持ち帰って何に使うんだよこいつ……」
「えっ、だから僕のファンだよね?」
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

‪愛沢璃子
2023.03.16 ‪愛沢璃子

受け?の子の推しが違うってあまりない設定ですがとってもおもひろいですねU> ‧̫ <U🐩🎀完結と書いてありますがこれで終わりでしょうか🥲良かったら続き書いて欲しいです😭🙇‍♀️

2023.03.16 ぽぽ

ご感想ありがとうございます!とっても嬉しいです!
一応完結、という形になってはいますが私もまだまだ書きたいシチュエーションがあり続きを書こうか迷っている小説です。
某ハンバーガー店に通ってることを週刊誌に載ってしまう話や他担だと気付く蒼の姿を書きたいなーと考えてますが手が動かず🤷🏻‍♀️
また一から書こうかと考えてますので気長にお待ちいただければ幸いです🙇‍♀️

解除

あなたにおすすめの小説

雪は静かに降りつもる

レエ
BL
満は小学生の時、同じクラスの純に恋した。あまり接点がなかったうえに、純の転校で会えなくなったが、高校で戻ってきてくれた。純は同じ小学校の誰かを探しているようだった。

政略結婚したかった

わさび
BL
御曹司 朝峰楓× 練習生 村元緋夏 有名な事務所でアイドルを目指して練習生をしている緋夏だが、実は婚約者がいた。 二十歳までにデビューしたら婚約破棄 デビューできなかったらそのまま結婚 楓と緋夏は隣同士に住む幼馴染で親はどちらも経営者。 会社のために勝手に親達が決めた政略結婚と自分の気持ちで板挟みになっている緋夏だったが____

あなたに捧ぐ愛の花

とうこ
BL
余命宣告を受けた青年はある日、風変わりな花屋に迷い込む。 そこにあったのは「心残りの種」から芽吹き咲いたという見たこともない花々。店主は言う。 「心残りの種を育てて下さい」 遺していく恋人への、彼の最後の希いとは。

知らないうちに女神になってた義兄と綺麗でおかしな義弟の話

月丘きずな
BL
平凡に高校生活を送る花岡悠は、学校一の人気者である花岡蓮の義兄だった。いつでも悠を守ってくれる優しい義弟との義兄弟ライフは、側から見たら少しおかしいようで…!? 義兄弟とその優しい友人たちが繰り広げる、怪しい義兄弟ラブロマンス

陽キャと陰キャの恋の始め方

金色葵
BL
「俺と付き合って欲しい」 クラスの人気者からの告白――――だけどそれは陽キャグループの罰ゲームだった!? 地味で目立たない白石結月は、自分とは正反対の派手でイケメンの朝日陽太から告白される。 からかわれてるって分かっていても、ときめく胸を押さえられない。 この恋の行方どうなる!? 短編になります。

天使は微笑みながら嘘を受け入れる

ユーリ
BL
天使のルカは悪魔のカルムと結婚して人間界に住んでいた。幸せな毎日だが、旦那のカルムには気掛かりがあったーー「一生大事にするよ、俺のかわいい花嫁さん」年上悪魔×素直な幸せ天使「僕だって絶対大事にします」ーー天使と悪魔の結婚には裏がある??

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ

雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け 《あらすじ》 高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。 桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。 蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。