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「やあ、久しぶり」
マスクを少し下げて微笑む王子様。否、王子では無く国民的アイドルの蒼くんである。
ま、眩しい。笑顔が眩しすぎる……。数日前まで憂鬱だと思っていたバイトが今じゃ至福のひとときとなっている。
それにしても、昨日会ったばっかだけど久しぶりって言うのはボケなのかな? これが所謂天然キャラってやつ? 俺も相手に合わせておこう。
「お、お久しぶりです」
「毎日ちゃんと働いて偉いね」
「そんな。推しに会う為なら労働くらい全然平気です」
HAHAHA、と笑うと彼は突如固まった。
ど、どうした? 俺、変な事言った? こんな顔面国宝を前にすると無意識にペラペラと気持ち悪い事を口走りそうで怖いが、まだ普通の一般人の会話をしているはず(そもそも貴方は一般人です)
すると、彼はゆっくり手を出し、俺の頭を撫でた。
……ん?これ、所謂頭ポンポンでは?
「じゃあ僕からも頑張る葉月くんにご褒美」
鼻の先が触れそうなほど近距離で囁かれた。
……流石ファンサの王子・蒼様だ。蒼くんは兎に角ファンサが手厚いと評判だ。一番人気であるにも関わらずファンへの真摯な態度は彼の好感度をより高めている。特に彼は自担にしかファンサをしないということで、余りのファンサを間近で受けた他担が蒼くんへ移ってしまうのも結構ある。俺も例外ではなく、この目で蒼くんのファンサは何度か見てきた。全て俺ではなく隣や前席の蒼くんファンへ向けたものだが。因みにその子達は全員鼻血を流していた。指さし程度でも発狂する程嬉しいのに、彼の場合近くに寄ってきて「好きだよ」と甘い声で囁いたり、投げキッスの後においでポーズ。これは明日が命日というばかりの神ファンサである。俺は旭くん一筋だから耐えられたが、周囲のファンは目をハートにしていた。
「ありがとうございます。そ、それでご注文は?」
すると、彼は定番のハンバーガーを選んだ。
アイドルなのに、こんなジャンクフードを食べるんだな。何だか親近感が湧く。まあ彼も同じ人間だし当然か。
◆◆◆
「これ、あげる」
「今日も行ったんだ。俺、貰っていいの?」
「ああ。袋は僕が捨てておくよ」
ハンバーガーは昨日初めて食べたが異常なカロリー値だと知りもう二度と食べないと心に決めた。正直買う意味は無いがあの店内に入ったからには注文するのが義務だろう。しかし捨てるのはマナーとして悪いし、他の食べる人間に与えた方が良い。
そして、袋だけ受け取り蒼は車の座席へ座った。再び今日も彼の事を思い出す。今日も可愛らしい、否、初心な反応だった。目が合っただけであんなに震えるなんて、まあこんな至近距離で僕と会うなんてライブの時でも滅多に無いから当然か。それにしても、毎日僕の為に働いているなんてそれ程愛されているとは自分でも思わず何処か照れ臭い。折角だから特別にサービスとして頭ポンポンまでしたのに思ったよりも薄い反応だった。僕に耐性がついたのかもしれない。まあこれからも会うから慣れてくれた方が良い。そして蒼は他のメンバーの声など聞かず一人ほくそ笑んだ。
「毎日通う気なのかな? まあ俺はハンバーガー食べられるから良いけど」
「袋、そこに捨てられるのに持ち帰って何に使うんだよこいつ……」
「えっ、だから僕のファンだよね?」
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