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かわいいは、本来「不憫だ」「気の毒だ」といった意味を表す語であった。ところが中世後半ごろから徐々に「かわいい」は「愛らしい」という意味に転じたらしい。
「セシリオ、これやってくんね?」
「あ、うん。いいよ!」
さんきゅー、と言って俺に課題を押し付けて男は去った。俺はその彼の背を見送った後、深いため息をついた。
高校デビューというものを目指して金髪に染めたが、髪は痛むしケアは大変だ。でも、これでもう虐められたりなんかしないと思っていた。しかし現状は昔と余り変わらないように思える。いや、まああの頃に比べたらマシか。
オドオド挙動不審な俺は元より人から好かれる人間ではなく世間で言うところの「陽キャ」という存在に特に疎ましがられた。十五年間ハブられるなんて最早才能じゃないだろうか。はは、全然面白くない。
幼い頃はよく一人でわんわんと泣いたり母に助けを求めたが徐々に傷つかないようになっていた。嘘です。傷つきまくってます。だけども無駄に見栄を張る性格が生まれたせいで誰にも助けを求めず平気なフリをするようになった。
事実、我慢をすればなんとかなったのだ。
殴られても無理矢理口角を持ち上げて謝罪を伝えれば平気な気がした。悪口も言われても心の中で妄想を繰り広げればどうでもいい気がした。
しかし俺に転機が訪れた。
憧れのユーリスト王立学園へ入学が出来ることになったのだ。魔力の高い選ばれし者しか入れないと評判の学園だ。平民で入れる者なんてほんのひと握りだけだろう。
迷惑をかけた両親は手を挙げて喜び、あんなに俺の事を無視していた同級生も途端に態度を変えた。俺は有頂天になっていた。俺の人生、これから最強だ!学園に入ったからには虐められず人気者になって、堂々と生きれるようになりたい。
そう、思っていたのだ。
しかし現実は上手くいかない。
あがり症や吃音症は未だ治らないしパシリになることも断れない。だけど、直接的に虐めてくる人間は減った。この王立学園の在校生は今まで街にいた素行が悪い人間とは違い、品の良いお坊ちゃまが多い。暴力なんてされた経験もないだろうし、そんな事をしたら内申点も下がるから表面上は良い人を演じている人ばかりだ。
だが、中には例外もいる。
「セーシーリーオー、お前さっきも答えられてなかったなぁ?赤っ恥かいてたとこマジウケんだけど。真似してやろうか?「え、あ、えと、そのっ、あっ」ヒャハハッ」
俺の肩を組んでわざと耳許で大きな声で話してくる。クラス中に聞こえる程けたたましい声量だ。周りからくすくすと笑い声も聞こえて俺は全身から血の気が引いた。
このお綺麗な顔をしているにも関わらず下品な笑い方をしている男はビルギット = シェルベリ。伯爵家の次男であり俺のクラスの中で最も爵位の高い男だ。
学園内では身分格差はない、と表向きではなっているがやはり爵位の高い者には逆らえないのが現状だ。後々将来にも響くし下手な敵を作りたくない。それなのに俺はこの最も大きな敵に目を付けられてしまった。
大体、何でコイツは俺の隣の席にばっか座ってくるんだ。いつも黒板を見ず俺の顔ばかりじっと見詰めてくるせいで気が散り最近は成績も落ちてきた。コイツさえ居なければ俺だって他の平民と同じように雑草程度に扱われていたのに……。
「なァ、なんか話せよ」
「あっ、ごごめんなさい」
「別に謝れなんか誰も言ってねえけど。つかさぁ、後でコーラ買っといて俺の部屋に届けに来いよ。五本な」
当然、俺は何も言い返せず頷くだけだった。
「セシリオ、これやってくんね?」
「あ、うん。いいよ!」
さんきゅー、と言って俺に課題を押し付けて男は去った。俺はその彼の背を見送った後、深いため息をついた。
高校デビューというものを目指して金髪に染めたが、髪は痛むしケアは大変だ。でも、これでもう虐められたりなんかしないと思っていた。しかし現状は昔と余り変わらないように思える。いや、まああの頃に比べたらマシか。
オドオド挙動不審な俺は元より人から好かれる人間ではなく世間で言うところの「陽キャ」という存在に特に疎ましがられた。十五年間ハブられるなんて最早才能じゃないだろうか。はは、全然面白くない。
幼い頃はよく一人でわんわんと泣いたり母に助けを求めたが徐々に傷つかないようになっていた。嘘です。傷つきまくってます。だけども無駄に見栄を張る性格が生まれたせいで誰にも助けを求めず平気なフリをするようになった。
事実、我慢をすればなんとかなったのだ。
殴られても無理矢理口角を持ち上げて謝罪を伝えれば平気な気がした。悪口も言われても心の中で妄想を繰り広げればどうでもいい気がした。
しかし俺に転機が訪れた。
憧れのユーリスト王立学園へ入学が出来ることになったのだ。魔力の高い選ばれし者しか入れないと評判の学園だ。平民で入れる者なんてほんのひと握りだけだろう。
迷惑をかけた両親は手を挙げて喜び、あんなに俺の事を無視していた同級生も途端に態度を変えた。俺は有頂天になっていた。俺の人生、これから最強だ!学園に入ったからには虐められず人気者になって、堂々と生きれるようになりたい。
そう、思っていたのだ。
しかし現実は上手くいかない。
あがり症や吃音症は未だ治らないしパシリになることも断れない。だけど、直接的に虐めてくる人間は減った。この王立学園の在校生は今まで街にいた素行が悪い人間とは違い、品の良いお坊ちゃまが多い。暴力なんてされた経験もないだろうし、そんな事をしたら内申点も下がるから表面上は良い人を演じている人ばかりだ。
だが、中には例外もいる。
「セーシーリーオー、お前さっきも答えられてなかったなぁ?赤っ恥かいてたとこマジウケんだけど。真似してやろうか?「え、あ、えと、そのっ、あっ」ヒャハハッ」
俺の肩を組んでわざと耳許で大きな声で話してくる。クラス中に聞こえる程けたたましい声量だ。周りからくすくすと笑い声も聞こえて俺は全身から血の気が引いた。
このお綺麗な顔をしているにも関わらず下品な笑い方をしている男はビルギット = シェルベリ。伯爵家の次男であり俺のクラスの中で最も爵位の高い男だ。
学園内では身分格差はない、と表向きではなっているがやはり爵位の高い者には逆らえないのが現状だ。後々将来にも響くし下手な敵を作りたくない。それなのに俺はこの最も大きな敵に目を付けられてしまった。
大体、何でコイツは俺の隣の席にばっか座ってくるんだ。いつも黒板を見ず俺の顔ばかりじっと見詰めてくるせいで気が散り最近は成績も落ちてきた。コイツさえ居なければ俺だって他の平民と同じように雑草程度に扱われていたのに……。
「なァ、なんか話せよ」
「あっ、ごごめんなさい」
「別に謝れなんか誰も言ってねえけど。つかさぁ、後でコーラ買っといて俺の部屋に届けに来いよ。五本な」
当然、俺は何も言い返せず頷くだけだった。
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