勇者様、推しです!〜溺愛されるのは解釈違いです〜

ぽぽ

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15.勇者様、アウト!

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 さて、今日も仕事だ。
 一時期ジェイミー様目当てで客が溢れ返ったが、今は殆どの客がもう来ないと気付いたのかいつも通り静かな本屋に戻った。まあ、これじゃ利益的には駄目なんだけど本が好きな客だけ来て欲しいのが本音だ。

「ミルくん、陳列手伝ってくれる?」
「もちろんです」
 
 オリヴァーさんの言葉に答え、一緒に作業をする。その中、彼は話し掛けてきた。
 
「最近、あのパン屋の子といるの?」
「はい。だから最近パンばっかり食べてるんですよねー」
「ミルくんは何パンが好き?」
「メロンパンです。オリヴァーさんは?」
 
 そう聞くと彼は最近は全然食べてないから忘れてしまったなぁ、と呟いた。
 彼の零した言葉は俺にとっては衝撃的な言葉だった。そういえば、最近オリヴァーさんと一緒にご飯を食べてないしもしかしてちゃんとご飯を食べてないのか?
 
「ご飯、ちゃんと食べてます?」
「えっ大丈夫だよぉ。ちゃんと食べるから安心して」
「何食べてます?」
「えっとぉ……林檎?」
 
 アウト!!
 林檎は美味しいし栄養もあるが、オリヴァーさんの場合はダメだ。もっと食べないといけない。
 
 オリヴァーさんは基本食に無頓着だ。俺が幼い頃は、俺のご飯を作るついでに自身の分も作ってたらしいが、俺が外で食べるようになってから一食も二食も抜いてしまう。死にかけのオリヴァーさんに何故何も食べてないのかと涙ながら聞いたら「面倒で……」との返事。あの時は殴りたいと思った程に怒りが沸いたが「今度からは気をつけるよぉ」と言ってたから大丈夫だと思ってた。それなのに、まさかまたその二の舞とは。
 
「俺、今日オリヴァーさんの分も買ってきますからね!ちゃんと食べて下さい!」
「ミルくん、気にしなくても」
「気にしますよ!俺の大切な人なんですから!」
「うっっ」
 
 オリヴァーさんは胸を押えて屈んだ。ま、まさかまた死にかけて!?
 
「俺っ、今から買ってきます!!」
「だ、大丈夫。これはミルくんの言葉のせいだから」
「俺!?俺何かしました?」
「うぅ、ミルくんの優しさが胸に刺さって……」
 
 別に大したこと言ってないんだけどな……。オリヴァーさんが大切なのは当然だ。俺のお父さん的存在でもあり、雇い主でもあり、オリヴァーさんが居なければ俺は今生きていない。だから、オリヴァーさんにもずっと健康で生きて欲しい。
 
「俺もオリヴァーさんの優しさにいつも助けて貰ってます!そうだ、今日は一緒に食べましょう」
「ほんと?久し振りだね」
「はい。オススメのサンドイッチのお店あるんです。なんと、ジェイミー様の行きつけなんですよ」
 
 ジェイミー様という単語を言った途端、オリヴァーさんの顔が曇った。
 
「そういえば、彼と最近一緒にいないけど何かあった?」
「あー、ちょっと色々ありまして」
「彼、お昼の時に店を覗きに来ていたけど僕を見る度にジトってした目で見て怖かったよぉ……」
 
 ジェイミー様のジト目なんてご褒美にしか感じないが、まさか未だ覗きに来ていたとは。ジェイミー様の貴重な時間を俺に使わせるなんて申し訳なさ過ぎる。
 
「今も来てますか?」
「いや、最近は無いかなぁ。喧嘩とかしたの?」
 
 首を横に振る。
 これから一緒に食べないことを伝えたはずだが、何故店に訪れるのか。てっきり俺は聖女様と食べていて仲を深めているのかと思っていた。
 もしや、俺が知らぬ間にジェイミー様の逆鱗に触れたとか……? 
 過去の記憶を掘り返すと、思い当たる節があり過ぎた。まず平民風情の俺と彼がご飯を食べること自体有り得ないし、しかも奢ってもらうという無礼。その他にも雑用をして貰ったり、うわあああああ!
 
「し、死のうかな」
「ななな何言ってるのぉぉ!?」

 呟いた言葉に対してオリヴァーさんは異常な反応を見せる。店に響く程の叫び声だ。まあ、誰もお客さんが来てないから別に良いけど。
 オリヴァーさんは半泣きで俺を必死で説得してるが、全く耳に入らない。ごめん、オリヴァーさん。俺が駄目人間なせいでオリヴァーさんまで巻き添えでジェイミー様に恨まれてジト目で見られていたなんて、どう謝れば良いのやら……。
 
「すみません。ジェイミー様にはなるべく会わないように気を付けます」
「えっそんなに怒られるような事をしたの?」
「多分結構あるかと……」
「何かあったら僕に相談してね?頼りないけど少しは力になると思うし」
 
 ありがとうございますと言うがオリヴァーさんを巻き込むわけにはいかないし自分で何とかしなければ。
 取り敢えずジェイミー様の行きつけのパン屋へ行くのはやめよう。遭遇率が高い。供給は今まで通り雑誌の切り抜きで充分だ。そうして俺はジェイミー様を影で応援しながらも彼を警戒することにした。
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