勘違いラブレター

綿毛ぽぽ

文字の大きさ
2 / 14

2

 
 それから真野先輩と接触を増やした。昼休みはこっそり観察し、部活の後は沢山会話もするようになった。やはり兄として妹に見合う相手かじっくり見極めないといけないからな。何かボロが出たら、なんて思ってない。
 しかし彼は俺の想像を超え、この一週間全く隙を見せなかった。いつも笑顔で誰にでも優しい。あと想像以上にモテモテだ。常に女子が周りに居て真野先輩と関わろうと必死な様子が伝わる。
 
「ねー、湊。これ重いから手伝ってくんない?」

 ほら、今も知らない先輩がベッタリと大きな胸を押し付けるように真野先輩にくっ付いてる。良いなぁとか思ってない。思ってないぞ。

 真野先輩は良い男だと少しは分かったが、うちの天使をこんな泥沼な取り合いに入れたくない。先輩のことはやはり諦めて貰わなければ……。
 そんなことを考えていると、ふと真野先輩と目が合った。そして笑顔でこっちに近付いてくる。え、何で来んの?
 
「はーじめ。かくれんぼしてるのか」

 馬鹿にしてるのか!かくれんぼなんか高校生にもなってするわけない。
 くそっ、妹の想い人じゃなかったら普通の良い先輩に思ってたのに、今や常に馬鹿にされてるように感じる。可愛い可愛い天使に好かれて優越感に浸っているだろう。そして兄弟故に結婚出来ない俺を心の中で見下して嘲笑ってるのだ(全て創の妄想)
 俺は般若のような顔でぶんぶん首を振った。
 
「俺に会いに来たのか?」
「違います。たまたまです」
「そっか。また何か聞きに来たのかと思ったけど」
「やっぱり聞きます」
 
 情報収集は本人から聞くのが一番手っ取り早いからな。チャンスを逃す訳にはいかないぜ。
 そういえば随分沢山のノートを抱えているが、さっきの先輩と一緒に持っていくんじゃなかったのか?

「先輩、さっきの女の人と持つんじゃなかったんですか?」
「それも見てたのか。いや意外と軽いし俺一人で持てるから断ったんだよ」

 きっとあの先輩は重かったからじゃなくて真野先輩と一緒に持ちたかったんだろうけど……。真野先輩って案外鈍感だな。初めて真野先輩の弱点を見つけてしまったかもしれない。
 少し気分が良くなった俺は先輩の荷物を持ってあげることにした。
 
「じゃあ俺持ちますよ。後輩ですし」
「創には重いよ」
「失礼ですよ!将来、先輩より大きくなって片手で先輩のこと持つかもしれませんよ」
 
 そう言うと先輩は腹を抱えて笑った。その様子に再び腹を立て怒りつけたが、全く怯えずいつものように俺の頭を撫でた。目を細めてそれはそれは楽しそうな表情だ。やっぱりこの人俺の事馬鹿にしてるだろ!くそっ!
 俺は強引にノートを奪い取った。ちょっと重いのは気の所為だ。
 
 そして俺はちゃんと指定の場所まで持っていくことが出来た。流石です。流石創選手。男前な力を真野先輩に見せつけることが出来ました。皆様大きな拍手を!ワーワー!心の中で自分を褒め讃えていると隣の男からも褒められた。
 
「ありがとう。助かったよ。お礼のクッキーあげるよ」
「へへ、ありがとうございます!」
 
 真野先輩は時々こうして甘いものをくれる。俺は甘いものが好きだからこれは嬉しい。素直に受け取って礼を言うとまた真野先輩は俺の頭を撫でてきた。

「創は可愛いな」
「えっ……体調悪いんですか?」
「そこまで引くか」
 
 俺のどこが可愛いんだ。そこら辺の蟻の方が可愛いだろ。うちの妹を見た時には可愛過ぎて失神してしまうかもな。

「真野先輩の感性って変わってますね」
「創は可愛いぞ。笑った顔とかすぐ顔に出るところが可愛いな」
「え、出てますか?」
「だってお菓子好きだろ?分かるよ」
 
 優しい口調に俺はクッキーの包袋を思わずぎゅっと握った。
 ……先輩はずるい。俺よりも余裕があるし非の打ち所が無いしずるい。少し茶色の混ざったココアのような甘い瞳を細める先輩は悔しいがイケメンだし、妹が一目惚れするのも仕方ない。
 でも認めたくない。俺の方が妹のことをずっと大切に守ってきたのに何でぽっと出の野郎に奪われないといけないんだ。

「え、どうした?お菓子嫌だった?」
「お菓子は好きです」
「じゃあ何で泣きそうな顔をしてるんだよ」
「泣きそうなんかじゃないです!先輩のバカ!」
 
 俺はその場から逃げるように走った。当然事情を何も知らない真野先輩は呆然と立ち尽くしていたが俺はそんな事を気にする余裕も無かった。何せ俺は真野先輩に比べたら余裕のない年下ですからね。くそっ、くそっ!もーバレンタインなんか消えてしまえ!!
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

園芸部の山田

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
ノート提出を忘れたクラスメートのため、サッカー部の部室までノート回収に向かった。ノートと共に頼まれていたミルクティーをゲットして教室に戻る途中、サッカー部の元部長・早瀬先輩から声をかけられ、一緒にアイスクレープを食べに行くことになったのだが―—。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

夢の中の告白

万里
BL
バレー部のムードメーカーで、クラスのどこにいても笑い声の中心にいる駆(かける)。好奇心と高いコミュニケーション能力を持つ彼は、誰とでもすぐに打ち解けるが、唯一、澪(れい)にだけは、いつも「暑苦しい」「触んな」と冷たくあしらわれていた。 そんな二人の関係が、ある日の部活帰りに一変する。 あまりの疲れに電車で寝落ちした駆の耳元で、澪が消え入りそうな声で零した「告白」。 「……好きだよ、駆」 それは、夢か現(うつつ)か判然としないほど甘く切ない響きだった。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

政略結婚したかった

わさび
BL
御曹司 朝峰楓× 練習生 村元緋夏 有名な事務所でアイドルを目指して練習生をしている緋夏だが、実は婚約者がいた。 二十歳までにデビューしたら婚約破棄 デビューできなかったらそのまま結婚 楓と緋夏は隣同士に住む幼馴染で親はどちらも経営者。 会社のために勝手に親達が決めた政略結婚と自分の気持ちで板挟みになっている緋夏だったが____

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ

雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。 浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。 攻め:浅宮(16) 高校二年生。ビジュアル最強男。 どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。 受け:三倉(16) 高校二年生。平凡。 自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。