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それから真野先輩と接触を増やした。昼休みはこっそり観察し、部活の後は沢山会話もするようになった。やはり兄として妹に見合う相手かじっくり見極めないといけないからな。何かボロが出たら、なんて思ってない。
しかし彼は俺の想像を超え、この一週間全く隙を見せなかった。いつも笑顔で誰にでも優しい。あと想像以上にモテモテだ。常に女子が周りに居て真野先輩と関わろうと必死な様子が伝わる。
「ねー、湊。これ重いから手伝ってくんない?」
ほら、今も知らない先輩がベッタリと大きな胸を押し付けるように真野先輩にくっ付いてる。良いなぁとか思ってない。思ってないぞ。
真野先輩は良い男だと少しは分かったが、うちの天使をこんな泥沼な取り合いに入れたくない。先輩のことはやはり諦めて貰わなければ……。
そんなことを考えていると、ふと真野先輩と目が合った。そして笑顔でこっちに近付いてくる。え、何で来んの?
「はーじめ。かくれんぼしてるのか」
馬鹿にしてるのか!かくれんぼなんか高校生にもなってするわけない。
くそっ、妹の想い人じゃなかったら普通の良い先輩に思ってたのに、今や常に馬鹿にされてるように感じる。可愛い可愛い天使に好かれて優越感に浸っているだろう。そして兄弟故に結婚出来ない俺を心の中で見下して嘲笑ってるのだ(全て創の妄想)
俺は般若のような顔でぶんぶん首を振った。
「俺に会いに来たのか?」
「違います。たまたまです」
「そっか。また何か聞きに来たのかと思ったけど」
「やっぱり聞きます」
情報収集は本人から聞くのが一番手っ取り早いからな。チャンスを逃す訳にはいかないぜ。
そういえば随分沢山のノートを抱えているが、さっきの先輩と一緒に持っていくんじゃなかったのか?
「先輩、さっきの女の人と持つんじゃなかったんですか?」
「それも見てたのか。いや意外と軽いし俺一人で持てるから断ったんだよ」
きっとあの先輩は重かったからじゃなくて真野先輩と一緒に持ちたかったんだろうけど……。真野先輩って案外鈍感だな。初めて真野先輩の弱点を見つけてしまったかもしれない。
少し気分が良くなった俺は先輩の荷物を持ってあげることにした。
「じゃあ俺持ちますよ。後輩ですし」
「創には重いよ」
「失礼ですよ!将来、先輩より大きくなって片手で先輩のこと持つかもしれませんよ」
そう言うと先輩は腹を抱えて笑った。その様子に再び腹を立て怒りつけたが、全く怯えずいつものように俺の頭を撫でた。目を細めてそれはそれは楽しそうな表情だ。やっぱりこの人俺の事馬鹿にしてるだろ!くそっ!
俺は強引にノートを奪い取った。ちょっと重いのは気の所為だ。
そして俺はちゃんと指定の場所まで持っていくことが出来た。流石です。流石創選手。男前な力を真野先輩に見せつけることが出来ました。皆様大きな拍手を!ワーワー!心の中で自分を褒め讃えていると隣の男からも褒められた。
「ありがとう。助かったよ。お礼のクッキーあげるよ」
「へへ、ありがとうございます!」
真野先輩は時々こうして甘いものをくれる。俺は甘いものが好きだからこれは嬉しい。素直に受け取って礼を言うとまた真野先輩は俺の頭を撫でてきた。
「創は可愛いな」
「えっ……体調悪いんですか?」
「そこまで引くか」
俺のどこが可愛いんだ。そこら辺の蟻の方が可愛いだろ。うちの妹を見た時には可愛過ぎて失神してしまうかもな。
「真野先輩の感性って変わってますね」
「創は可愛いぞ。笑った顔とかすぐ顔に出るところが可愛いな」
「え、出てますか?」
「だってお菓子好きだろ?分かるよ」
優しい口調に俺はクッキーの包袋を思わずぎゅっと握った。
……先輩はずるい。俺よりも余裕があるし非の打ち所が無いしずるい。少し茶色の混ざったココアのような甘い瞳を細める先輩は悔しいがイケメンだし、妹が一目惚れするのも仕方ない。
でも認めたくない。俺の方が妹のことをずっと大切に守ってきたのに何でぽっと出の野郎に奪われないといけないんだ。
「え、どうした?お菓子嫌だった?」
「お菓子は好きです」
「じゃあ何で泣きそうな顔をしてるんだよ」
「泣きそうなんかじゃないです!先輩のバカ!」
俺はその場から逃げるように走った。当然事情を何も知らない真野先輩は呆然と立ち尽くしていたが俺はそんな事を気にする余裕も無かった。何せ俺は真野先輩に比べたら余裕のない年下ですからね。くそっ、くそっ!もーバレンタインなんか消えてしまえ!!
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