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第1部 終章・悪霊
第2回
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宮野首や矢野と授業が終わるまでバドミントンを続けた奈央だったが、普段殆ど運動をしないせいかまるで体が追いつかなかった。宮野首も運動神経は良くないらしく、矢野の放ったシャトルを追い掛けるだけでも精一杯、打ち返すには更なる技術を必要とした。それでも何とかラリーが成り立ったのは、恐らく矢野のおかげだろう。彼女は下手くそな自分達に合わせるように、的確にシャトルを打ち返してくれた。
もう少し運動した方が良いかな、と思い始めた頃に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、教諭の号令と共に再び奈央たちは一堂に会す。挨拶が終わり、各自使った道具を体育倉庫に収めるように指示されると一斉に解散した。
「あ、私が収めてくるよ」
そう言って奈央は矢野や宮野首からラケットとシャトルを受け取り、二人が先に教室へ戻って行くのを見届けてから体育倉庫へ向かった。他のクラスメイト達がボールやラケットを収めていくのを見届けてから、最後に中に入る。薄暗い体育倉庫の中はカビ臭くて埃っぽく、あまり長居したいような場所ではないから好きではない。奈央はさっと道具を収めると扉に体を向けた。すでにクラスメイト達の姿はなく、遠く校舎に歩く小さな背中が見えるだけだった。
急いで教室に帰ろう、そう思いながら倉庫を出ようとして。
ギィ、ガシャンッ、と胸の先数センチの所で突然倉庫の扉が閉ざされた。
「……えっ!」
奈央は驚き、もう一度扉を開けようと引いたり押したりしてみたけれど、鍵が掛かっているのか誰かが外から押さえているのか、全く開く気配がなかった。
どうしよう、閉じ込められちゃった…… 何とかしないと、次の授業に遅れちゃう。
そう思った時だった。
「……フフフフフッ」
どこからともなく笑い声が聞こえ、奈央は眉間に皺を寄せた。
きっと私を閉じ込めた誰かの笑い声だ。私が困っているのを見て、楽しんでいるのだ。何て奴。
「誰っ? 早く出して! あとで先生に言いつけるからね!」
叫んだ次の瞬間、ぴちょんっと聞き覚えのある水の滴る音に、奈央は思わず目を見張った。途端に呼吸が荒くなり、胸を押さえる。
そんな、そんな、そんな……!
「……フフフッ 」
すぐ耳元で女の笑い声が聞こえ、奈央はばっと振り向いた。けれどそこにはただ薄暗い闇が広がっているだけで。
「……あんなので、私から逃げられると思っていたの?」
その声に、奈央は息を飲んだ。辺りを見回し、気配を探る。
闇の中に蠢く何かを目にした気がして凝視したが、
「私は常に貴女の傍に居る。貴女の身体は私のもの……フフフッ」
また別の場所からの声に奈央はふらふらと後退った。
辺りに女の嗤い声がこだまし、恐怖が募る。
どこ……? いったい、どこに……!
しかし、どこにも女の姿は見えない。声ばかりが聞こえ、けれど確かにすぐそばに気配を感じる。
やがてトンッと背中が壁にぶつかり、奈央はびくりと身体を震わせた。荒い息を整える暇もないまま、再び女が語りかけてくる。
「どこに逃げても無駄。だって私は、ここに居るから」
すっと奈央の首に女の両手が伸び、
「……フフッ、捕まえたぁ」
「…………っ!」
そして――絶叫。
宮野首や矢野と授業が終わるまでバドミントンを続けた奈央だったが、普段殆ど運動をしないせいかまるで体が追いつかなかった。宮野首も運動神経は良くないらしく、矢野の放ったシャトルを追い掛けるだけでも精一杯、打ち返すには更なる技術を必要とした。それでも何とかラリーが成り立ったのは、恐らく矢野のおかげだろう。彼女は下手くそな自分達に合わせるように、的確にシャトルを打ち返してくれた。
もう少し運動した方が良いかな、と思い始めた頃に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、教諭の号令と共に再び奈央たちは一堂に会す。挨拶が終わり、各自使った道具を体育倉庫に収めるように指示されると一斉に解散した。
「あ、私が収めてくるよ」
そう言って奈央は矢野や宮野首からラケットとシャトルを受け取り、二人が先に教室へ戻って行くのを見届けてから体育倉庫へ向かった。他のクラスメイト達がボールやラケットを収めていくのを見届けてから、最後に中に入る。薄暗い体育倉庫の中はカビ臭くて埃っぽく、あまり長居したいような場所ではないから好きではない。奈央はさっと道具を収めると扉に体を向けた。すでにクラスメイト達の姿はなく、遠く校舎に歩く小さな背中が見えるだけだった。
急いで教室に帰ろう、そう思いながら倉庫を出ようとして。
ギィ、ガシャンッ、と胸の先数センチの所で突然倉庫の扉が閉ざされた。
「……えっ!」
奈央は驚き、もう一度扉を開けようと引いたり押したりしてみたけれど、鍵が掛かっているのか誰かが外から押さえているのか、全く開く気配がなかった。
どうしよう、閉じ込められちゃった…… 何とかしないと、次の授業に遅れちゃう。
そう思った時だった。
「……フフフフフッ」
どこからともなく笑い声が聞こえ、奈央は眉間に皺を寄せた。
きっと私を閉じ込めた誰かの笑い声だ。私が困っているのを見て、楽しんでいるのだ。何て奴。
「誰っ? 早く出して! あとで先生に言いつけるからね!」
叫んだ次の瞬間、ぴちょんっと聞き覚えのある水の滴る音に、奈央は思わず目を見張った。途端に呼吸が荒くなり、胸を押さえる。
そんな、そんな、そんな……!
「……フフフッ 」
すぐ耳元で女の笑い声が聞こえ、奈央はばっと振り向いた。けれどそこにはただ薄暗い闇が広がっているだけで。
「……あんなので、私から逃げられると思っていたの?」
その声に、奈央は息を飲んだ。辺りを見回し、気配を探る。
闇の中に蠢く何かを目にした気がして凝視したが、
「私は常に貴女の傍に居る。貴女の身体は私のもの……フフフッ」
また別の場所からの声に奈央はふらふらと後退った。
辺りに女の嗤い声がこだまし、恐怖が募る。
どこ……? いったい、どこに……!
しかし、どこにも女の姿は見えない。声ばかりが聞こえ、けれど確かにすぐそばに気配を感じる。
やがてトンッと背中が壁にぶつかり、奈央はびくりと身体を震わせた。荒い息を整える暇もないまま、再び女が語りかけてくる。
「どこに逃げても無駄。だって私は、ここに居るから」
すっと奈央の首に女の両手が伸び、
「……フフッ、捕まえたぁ」
「…………っ!」
そして――絶叫。
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