最弱の騎士団長は今日も逃げる

こせい。

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騎士団長と謎の剣

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あれから丸一日が過ぎた。 まだ応援は来ない。
そもそも応援は来てくれるのだろうか? そんな気持ちさへも芽生えてくる。

「神様、あぁ、神様ぁ!」

村の人たちの中にはこの緊張感に精神が耐えきれずに叫びだす人たちも出てきた。

「このままじゃ不味い……」

周りの大人がそんなんじゃ、周りの子供たちにもその恐怖が伝染する。

「きしだんちょーさま、私たち、どうなっちゃうの?」
「大丈夫だから、安心して? もし何かあったら俺が守るから」

言葉だけの自分が嫌になる。 確証なんて何にもない。 俺がまだ戦えていたら何か変わっていたのだろうか? いや、その場合でも俺は何も出来なかっただろう。

「最弱の騎士団の団長か……」

今まで「俺たちは最弱なんかじゃない! 俺たちは努力していつか普通って言われるぐらいには強くなる!」なんて思っていたが、実際、弱いなぁ。

「はぁ、情けないなぁ……」
「情けなんてないよ? きしだんちょーさまは、かっこいいよ?」

いつの間にか俺の膝の上に座っていた女の子が励ましてくれた。
あぁ、この殺伐とした空気に飲まれておれ自身も弱っているらしい。

「ありがと」
「うん、どういたしまして」

満面の笑みで答えてくれる女の子。
今回の騒動でどれだけ励ましてくれただろうか? 本当にありが──

「団長さん! オークが森を下ってきているそうです!」

クリート・ハリストさんが大きな声で叫ぶ。
村の皆が一瞬にして絶望の顔を見せる。
駄目だ、この話はここではしてはいけない!

「応援は?」

俺はクリート・ハリストさんを避難所から連れ出し、外でしゃべることにした。

「…………」

無回答。
要するに来ていないんだろう。

「わかった。 俺が何とかする」
「何とかするって言ったって……」
「大丈夫だから」

俺たちは避難所に戻り大きな声で言った。

「皆さん安心してください! 皆さんは私たち騎士団が命に変えてお守りします!」

俺に懐いてくれていた女の子が笑顔になった。
周りの人たちもそれが伝染し、一旦落ち着いてくれた。
子供の笑顔は周りの人たちに効果覿面だった。

「それじゃあ、後の事はよろしく」
「ちょっと!」

俺はクリート・ハリストさんの返事を聞かずに走って騎士団ホームに向かう。

オーガが森から降りてくるまで残り5分ってところか?

「痛っ!」

脇腹から血がにじみ出てきていた。
でも走った。
守るために。



着いた……。
俺は迷わずに武器庫へと急ぐ。
最弱の騎士団、武器庫の奥にある金庫。 その中には色々な剣が眠っている。 もちろん他の騎士団にはこんな金庫はない。 俺の団のキシュリーという武器マニアが集めた武器を入れるためにある。

「これだ」

俺はとある一本を取り出す。
親父が俺のためにある剣だといっていた剣。
俺、専用の剣。 「本当のピンチのときにしか使ってはいけない」と言われた剣。
それを初めて手に取る。

「な、なんだよこれ……」

手に取った瞬間、何かが流れ込んでくる感覚。
体が軽い。 いつの間にか脇腹の痛みも引いている。 いや、綺麗さっぱり無くなっていた。
それでも無くなった右腕は元に戻ってないが……。

「いや、これは流石におかしいだろう」

でも現実にそれが起きているのだから認めたくなくても認めきれない。

「っと、こんな時間ないんだった。 皆を守らないと!」

この剣に関しては今は一度保留にしておこう。
今は一刻も早く戻らないといけない!
走る。
体が軽い。
どんどん進む。

「凄い! 怪我する前より軽い!」 

俺は有頂天になっていた。
これならみんなを守れる。
この力なら皆を! 皆を!



────────────────



「全くあの人は……」

何だろう……。
何故だか分からない。 分からないけどあの人と一緒にいると安心する。
勝手な行動ばっかりで、色々なことを見えていそうに見えて実は全然見ていなかったり。
本当に、本当に目が離せない人だ。 

で、でも! べ、別に?
好きとかそんなんじゃないし!
そもそもあのアリアって言う子がそんなこと許さないだろうし、それに会ってまだ全然日数とかたってないし? 話したのだって昨日、今日は沢山お話ししたけれど……

「って、私は何に言い訳しているんだろうか……?」
「どうしたんですか、ハリストさん?」 
「何でもないですよ?」

アリアさんは先ほど避難所に戻ってきた。
騎士団長の事は言っていない。 言っていたら今頃ここから飛び出していただろう。

「そう言えばにい様は何処に行ったんですか? 何か知ってますか?」
「い、いえ、知りませんけど?」
「そうですか、ふ~ん……」

アリアさんは多分感ずいている。
流石にオーガを倒しに行った、なんて分かってないだろうけど……。

「アリアさん、すいません何かして遊びませんか? 場の空気を和ませるためにも……」
「なぜ謝るんですか? ……まぁ、良いですよ」

絶対にばれている。

「おねーちゃんたち何してるの~?」

昨日今日と騎士団長に良く懐いていた女の子だ。

「今から楽しく遊ぶんだよぉ!」

私はできる限りの満面の笑みで返してあげる。

「私も一緒に遊びたい!」
「は! にい様に近づきたいからってまずは身内からですかぁ?」

アリアさん……お兄さんがいないと別人みたいなんですが……早く帰ってきてください、騎士団長!

その時、避難所の扉が開いた。




───────────────





俺は避難所へ戻るべく、道を急いでいた。

そう言えばさっき剣について気付いた事がある。 この剣を握ると五感も強化されるようでさっきから視界が透き通っている。

「酔いそうだ……」

まぁ、これ以上スピードを出したら確実に吐く自信がある。

見えてきた! 皆がいる避難所が!

見えて──


「グルァアァァァ……」

は?
なぜここにオーガがいる?
他の皆はどうした?

村の人たちは?

俺は

また


守れなかった────


「グァァアアアアア!」

魔物ではない。 俺の声が響き渡っていた。
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