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①第一章 クリスマスに出会ったのは……サンタさん!?
6君はいつだって子供っぽい
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迎えた大晦日の日、僕は案の定寝不足で、お父さんが心配そうな顔を浮かべ「来年にしようか?」と提案してくれた。
いや! せっかくおとーさんがじかんをつくってくれたのに、ことわるほーがやぼ? ってかんじじゃない!?
流石に気が引けた僕は、うとうとしながらイルミネーションのある『楽山』へ電車で向かった。
楽山へ行くには柳下通り駅から、新綻び線に乗るか地下鉄の柱上線に乗るかの二択なのだが、十一時半に特急が出ているのは柱上線だけのようだった。
僕達は三十八分発の特急、小暮坂行きに乗って楽山駅で降りていく。改札を出て北口を目指すと、やはり醍醐味とも言われるのがイルミネーションなだけあって、無数の人混みが目の前に広がっていた。
目線が低いこともあり、僕は迷子にならないように手を繋いだまま歩くので精一杯だった。
広い道に出て、辺りを見渡す。ブラビットの姿を探して少し遠くへ歩こうとするも、やはり「迷子になるよ」と母に止められてしまう。
──おともだちともてをつなぎたいのに!
むう、と頬を膨らませて目を凝らすと不機嫌になったと受け取ったお母さんは、原因を色々考えては口に出して謝っていたが、違う。そうじゃないのだ。
見えないのだから伝わる訳もないお友達の存在に思わず四苦八苦して小声で叫びを上げる。
(ブラビットーっ! てーつなごーよー! きみはぼくのおともだちでしょ!?)
「え、何。お友達って手を繋ぐなんて意味の無い行動もすべきなんです? えー、じゃあ、どうぞ」
もはやただの我が儘だったが、特に不満に思うでもなく彼女は「勉強不足だな」と反省したような目つきで手を差し出してくれる。……いや、あのね?
ブラビットのせいでも、おかあさんのせいでもないんだよ? うん、ぼくがわるいの……と、俯きながら手を握る。
「赤、貴方空気と手を握りたくなったのね? ごめんなさい、お母さん、流石にそれは気付けなかった」
あらぬ誤解をされて内心「違う! 違うの!」と否定をしたかったものの、人目がある場所でそれは出来ない。
屈辱的だが……僕は空気とお友達になりたかった……というこのボッチ認識を受け入れるしかなかった。
空気とお友達!? いいね、素敵だね!? あー楽し、楽しい……(遠い目)。
現実逃避をして数十分が経った頃だろうか、現実に意識を戻すとカラフルな色で彩られた数々の電飾が道のように続いていた。
ブラビットはやはり見たことが無かったのか、ケーブル間近まで飛んで触ったり引っ張ったりとして……遊んで? いた。その下にいた人々が「ポルターガイスト!?」なんて驚いているとも知らずに。
「今年のイルミネーションも綺麗だな。大晦日の方は見に行ったことは無かったが……ん?」
まずい。お父さんがブラビットのいるポルターガイスト現象(物理)の方向を見ている。
「どうしたのあなた……何だか向こうの人達、様子が変ね?」
(……ぶ、ブラビットーっ!? それいじょういじっちゃ、だめっ! めだってるよぉ~!)
「……あ、ごめん。つい」
ハッと正気を取り戻したのか、それまでなんとなく楽しそうにしていた? ブラビットはいつもの表情に戻って僕の傍へ寄ってくる。
(きみがめだってどーするの……)
「確かに。いえね、少し──飾り付け方が気に食わなかったので魔法で変えてしまおうかと──……冗談です」
冗談です、という割にはかなりマジなトーンだった気がしてならない。じゃあ、あまり気に入って貰えなかったのかな? それならば「気に入ってくれるかも」という考えは見当違いだったのだろう、僕は頭を悩ませる。
悩ませているとブラビットは何か言いたげな仕草をしてこちらを見ていたのだが、どういう意図なのか分かることはなかった。誤解されたくなかったのか、僕にでも分かるように彼女は言う。
「気に入ってない、という訳ではないです。ただ、人間の距離で楽しむより飛んで見た方が綺麗だな、と」
ああ、そっか。飛んで見た方が綺麗なのか、なるほど。だとしたら、地上から見るこの光景より綺麗な見方を知っているのだから、微妙な反応をするのも至極当然……か。
にんげんって、そういうところでもそんしてるのいっぱいあるのかな? また一つと僕の中で疑問は増えていった
見たい物が見終わり、用事も特に無かった為その日は帰宅し、新年を迎えた。両親の話では元号が変わり、今年の四月から『丘志』という美味しそうな名前になるそうだ。
これまでの元号も『何日』だったり『雑羽』だったり……一体この世界のネーミングセンスはどうなっているんだ? 分かりやすい点は褒められるけどね。丘志って……お菓子の話題になったらどうすればいいんだ。などと考えても、
そうだ、僕は人間の友達がいないではないか。
途端に虚しくなる。正月が明ければ保育園もまた始まる。
果たしてその時、友達作りは成功するんだろうか……?
不安を胸に抱えて僕は眠りにつき、丘志一年一月九日、火曜日。久々の保育園へ預けられた。
「ここが噂の保育園、ですか。こじんまりとした施設ですね」
両手を合わせて笑うばかりの彼女は、まるで分厚い仮面でも被っているように見えた。
彼女を楽しませることが出来てこその『お友達』なのに、それがまだ出来ていないことがちくちくと胸につっかえて、棘として刺さっていた。
……あれかな、ぼくがたよりないからかな!?
我ながら納得のいく可能性だった。複数の可能性を頭に隅に置き、その内の一つを質問として提示してみる。
(ブラビット。ブラビットは……その、ぼくに、にんげんのおともだちできたら……うれしい?)
「あー、良いんじゃないですか。当分の目標に天涯孤独から脱する、と加えても」
若干だが、ほんの少しだけ耳が揺らいだ。恐らく、つまり……少し喜んでいる……?
ことを感じ取ったと思われる僕は、当分の目標を「人間のお友達作り」にすることにした。
だよね、やっぱりたよりないよね……これをきに? おともだちのべんきょーもしなきゃだ。
握りこぶしを作って、ブラビットと共に他の子達がいる部屋へと移動する。
階段を下りて扉を開け足を踏み入れると、皆が驚愕した顔でこちらを見ていた。
「……? お、おはよ──」
近くにいた子の隣に座ろうとすると、あからさまに避けられた。
な、なに……ぼくはわるいことなにも……たぶん、してないよぉ……。
傷付いた僕は唇を噛みながら、視線を下に移していく。隣にいたブラビットが申し訳なさそうな声を上げていた、と気付いたのは男の子に押された後だった。
「こっちくんな! かいぶつ!」
かいぶつ? と理由を聞こうと口を開けた途端、彼女は手で遮るようにして僕を制止する。
つられて彼女に視線を移すが「ごめんなさい、これに関しては私のせいです」とだけこちらに告げてきた。
顔は見えたなかったものの、どことなく罪悪感に苛まれているように見え……僕には責めることなど出来やしなかった。
「この世に赤目は私しか存在しないんです。ですから、貴方にあげた片目は異質に映るんでしょう」
ああ、そっか。この目のせいだったのか──と理解したはいいが、つまりそれはこの目がある限り保育園の子とは仲良く出来ない、ということだろうか?
分かった途端に苛立ちが募るのだから、僕達人間は感情というのもやたら不便に作られているんだな。なんて自分を落ち着かせることに必死になっていた。
きっと、赤い目でも仲良くしてくれる子はいるはず!
と思い直し、僕はその日から目一杯誰かを遊びに誘う努力をするのだった。
「あ、あそぼー!」
いや! せっかくおとーさんがじかんをつくってくれたのに、ことわるほーがやぼ? ってかんじじゃない!?
流石に気が引けた僕は、うとうとしながらイルミネーションのある『楽山』へ電車で向かった。
楽山へ行くには柳下通り駅から、新綻び線に乗るか地下鉄の柱上線に乗るかの二択なのだが、十一時半に特急が出ているのは柱上線だけのようだった。
僕達は三十八分発の特急、小暮坂行きに乗って楽山駅で降りていく。改札を出て北口を目指すと、やはり醍醐味とも言われるのがイルミネーションなだけあって、無数の人混みが目の前に広がっていた。
目線が低いこともあり、僕は迷子にならないように手を繋いだまま歩くので精一杯だった。
広い道に出て、辺りを見渡す。ブラビットの姿を探して少し遠くへ歩こうとするも、やはり「迷子になるよ」と母に止められてしまう。
──おともだちともてをつなぎたいのに!
むう、と頬を膨らませて目を凝らすと不機嫌になったと受け取ったお母さんは、原因を色々考えては口に出して謝っていたが、違う。そうじゃないのだ。
見えないのだから伝わる訳もないお友達の存在に思わず四苦八苦して小声で叫びを上げる。
(ブラビットーっ! てーつなごーよー! きみはぼくのおともだちでしょ!?)
「え、何。お友達って手を繋ぐなんて意味の無い行動もすべきなんです? えー、じゃあ、どうぞ」
もはやただの我が儘だったが、特に不満に思うでもなく彼女は「勉強不足だな」と反省したような目つきで手を差し出してくれる。……いや、あのね?
ブラビットのせいでも、おかあさんのせいでもないんだよ? うん、ぼくがわるいの……と、俯きながら手を握る。
「赤、貴方空気と手を握りたくなったのね? ごめんなさい、お母さん、流石にそれは気付けなかった」
あらぬ誤解をされて内心「違う! 違うの!」と否定をしたかったものの、人目がある場所でそれは出来ない。
屈辱的だが……僕は空気とお友達になりたかった……というこのボッチ認識を受け入れるしかなかった。
空気とお友達!? いいね、素敵だね!? あー楽し、楽しい……(遠い目)。
現実逃避をして数十分が経った頃だろうか、現実に意識を戻すとカラフルな色で彩られた数々の電飾が道のように続いていた。
ブラビットはやはり見たことが無かったのか、ケーブル間近まで飛んで触ったり引っ張ったりとして……遊んで? いた。その下にいた人々が「ポルターガイスト!?」なんて驚いているとも知らずに。
「今年のイルミネーションも綺麗だな。大晦日の方は見に行ったことは無かったが……ん?」
まずい。お父さんがブラビットのいるポルターガイスト現象(物理)の方向を見ている。
「どうしたのあなた……何だか向こうの人達、様子が変ね?」
(……ぶ、ブラビットーっ!? それいじょういじっちゃ、だめっ! めだってるよぉ~!)
「……あ、ごめん。つい」
ハッと正気を取り戻したのか、それまでなんとなく楽しそうにしていた? ブラビットはいつもの表情に戻って僕の傍へ寄ってくる。
(きみがめだってどーするの……)
「確かに。いえね、少し──飾り付け方が気に食わなかったので魔法で変えてしまおうかと──……冗談です」
冗談です、という割にはかなりマジなトーンだった気がしてならない。じゃあ、あまり気に入って貰えなかったのかな? それならば「気に入ってくれるかも」という考えは見当違いだったのだろう、僕は頭を悩ませる。
悩ませているとブラビットは何か言いたげな仕草をしてこちらを見ていたのだが、どういう意図なのか分かることはなかった。誤解されたくなかったのか、僕にでも分かるように彼女は言う。
「気に入ってない、という訳ではないです。ただ、人間の距離で楽しむより飛んで見た方が綺麗だな、と」
ああ、そっか。飛んで見た方が綺麗なのか、なるほど。だとしたら、地上から見るこの光景より綺麗な見方を知っているのだから、微妙な反応をするのも至極当然……か。
にんげんって、そういうところでもそんしてるのいっぱいあるのかな? また一つと僕の中で疑問は増えていった
見たい物が見終わり、用事も特に無かった為その日は帰宅し、新年を迎えた。両親の話では元号が変わり、今年の四月から『丘志』という美味しそうな名前になるそうだ。
これまでの元号も『何日』だったり『雑羽』だったり……一体この世界のネーミングセンスはどうなっているんだ? 分かりやすい点は褒められるけどね。丘志って……お菓子の話題になったらどうすればいいんだ。などと考えても、
そうだ、僕は人間の友達がいないではないか。
途端に虚しくなる。正月が明ければ保育園もまた始まる。
果たしてその時、友達作りは成功するんだろうか……?
不安を胸に抱えて僕は眠りにつき、丘志一年一月九日、火曜日。久々の保育園へ預けられた。
「ここが噂の保育園、ですか。こじんまりとした施設ですね」
両手を合わせて笑うばかりの彼女は、まるで分厚い仮面でも被っているように見えた。
彼女を楽しませることが出来てこその『お友達』なのに、それがまだ出来ていないことがちくちくと胸につっかえて、棘として刺さっていた。
……あれかな、ぼくがたよりないからかな!?
我ながら納得のいく可能性だった。複数の可能性を頭に隅に置き、その内の一つを質問として提示してみる。
(ブラビット。ブラビットは……その、ぼくに、にんげんのおともだちできたら……うれしい?)
「あー、良いんじゃないですか。当分の目標に天涯孤独から脱する、と加えても」
若干だが、ほんの少しだけ耳が揺らいだ。恐らく、つまり……少し喜んでいる……?
ことを感じ取ったと思われる僕は、当分の目標を「人間のお友達作り」にすることにした。
だよね、やっぱりたよりないよね……これをきに? おともだちのべんきょーもしなきゃだ。
握りこぶしを作って、ブラビットと共に他の子達がいる部屋へと移動する。
階段を下りて扉を開け足を踏み入れると、皆が驚愕した顔でこちらを見ていた。
「……? お、おはよ──」
近くにいた子の隣に座ろうとすると、あからさまに避けられた。
な、なに……ぼくはわるいことなにも……たぶん、してないよぉ……。
傷付いた僕は唇を噛みながら、視線を下に移していく。隣にいたブラビットが申し訳なさそうな声を上げていた、と気付いたのは男の子に押された後だった。
「こっちくんな! かいぶつ!」
かいぶつ? と理由を聞こうと口を開けた途端、彼女は手で遮るようにして僕を制止する。
つられて彼女に視線を移すが「ごめんなさい、これに関しては私のせいです」とだけこちらに告げてきた。
顔は見えたなかったものの、どことなく罪悪感に苛まれているように見え……僕には責めることなど出来やしなかった。
「この世に赤目は私しか存在しないんです。ですから、貴方にあげた片目は異質に映るんでしょう」
ああ、そっか。この目のせいだったのか──と理解したはいいが、つまりそれはこの目がある限り保育園の子とは仲良く出来ない、ということだろうか?
分かった途端に苛立ちが募るのだから、僕達人間は感情というのもやたら不便に作られているんだな。なんて自分を落ち着かせることに必死になっていた。
きっと、赤い目でも仲良くしてくれる子はいるはず!
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