ランキングデスゲーム〜辛くて拡散希望、生き残りたいです〜

みにぶた🐽

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第I部:投票はじまりの檻

第6章 「“また会おう” は二度と来ない」

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 翌日の午後8時。

 俺たちは再び中央ホールに集められ、 第3回投票結果の発表を待っていた。 昨日の白鷺小夜への拷問以降、 ホール内の空気は一層重苦しいものになっていた。

 看守席に座る俺たちと、 床に座らされた囚人たち。 この構図も、 もはや日常となりつつある。

 機械音声が冷たく響いた。

「第3回人気投票結果を発表いたします」

 モニターに結果が表示される。

『第3回人気投票結果』
『1位:#07 緋村陸翔 5,234票』
『2位:#01 斑鳩凌 4,567票』
『3位:#10 鳴海瑠璃 4,123票』
『4位:#15 真鍋天馬 3,789票』
『5位:#04 雪村颯汰 3,456票』

 俺は3日連続で1位。 冷静な分析者というキャラクターが視聴者に定着しているようだ。 だが、 看守の順位に微妙な変化があった。 鳴海瑠璃が3位に上昇し、 真鍋天馬と雪村颯汰の順位が入れ替わっている。

 画面はスクロールを続ける。

『6位:#08 五十嵐龍之介 2,987票』
『7位:#02 葛城翼 2,567票』
『8位:#06 宝生朱音 2,234票』
『9位:#14 宍戸昴 1,789票』
『10位:#11 安堂圭吾 1,456票』
『11位:#09 白鷺小夜 1,123票』
『12位:#05 早乙女千景 945票』
『13位:#12 相楽翠 734票』

 そして、 最下位。

『14位:#03 宇佐美凛 523票』

 宇佐美凛の顔が真っ青になった。

「また……また私……」

 彼女の震え声が、 静寂のホールに響く。

「お願い……誰か……代わって……」

 だが、 誰も答えなかった。 答えられなかった。

 如月蒼依の処刑を見た後では、 その結末がどういうものかを全員が理解していた。

 機械音声は容赦なく続けた。

「最下位、 #03宇佐美凛の処刑を執行いたします。 処刑台へ移動してください」

 ホール中央に、 昨日よりもさらに巨大で複雑な処刑台が上昇してきた。 金属製の拘束具に加え、 様々な処刑器具が取り付けられている。

「いや……いやああああ!」

 宇佐美凛は叫び声を上げて後ずさりした。

「私、 まだ18歳なの!まだ何もしてない!まだ生きたい!」

 機械的なアームが彼女を捕獲しようと伸びてくる。

「誰か助けて!お願い!私の代わりに誰か!」

 彼女の必死の懇願が、 ホールに響いた。

 早乙女千景が涙を流しながら立ち上がった。

「私が……私が代わります!」

 だが機械音声が即座に返した。

「代替は認められません。 投票結果は絶対です」

 宇佐美凛は処刑台に運ばれ、 拘束具に固定された。 金属の拘束具が彼女の手首、 足首、 首、 腰に巻き付く。

「最終発言の時間を与えます。 1分間です」

 宇佐美凛は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で叫んだ。

「なんで……なんで私なの……私、 みんなに正直に話したのに……隠し事はダメだと思って……」

 彼女の声は次第に嗄れていく。

「お母さん……お父さん……弟……ごめんなさい……愛してるって伝えて……」

 そして、 配信画面を見上げて叫んだ。

「見てる人たち!これは人殺しよ!あなたたちは人殺しに加担してるの!」

 だが配信のコメント欄は、 彼女の叫びを嘲笑していた。

『うわああああ』
『泣きながら叫ぶのかわいそう』
『でも仕方ないよね』
『2回目の処刑きたああ』
『今度はどんな方法かな』

 そして、 時間が来た。

「処刑方法は視聴者投票により決定されました。 『四肢切断処刑』 を執行いたします」

 四肢切断。

 その瞬間、 俺は配信画面を見た。 視聴者数は既に15,000人を超えていた。

『うわあああああ』
『四肢切断とかやべー』
『グロ注意』
『でも見ちゃう』
『録画開始』

 処刑台から回転刃が伸び、 宇佐美凛の四肢に向けられた。

「やめて……やめて……痛いのは嫌……」

 宇佐美凛の最後の懇願も、 システムには届かない。

 最初に右腕が切断された。

「ああああああああ!」

 宇佐美凛の絶叫がホールに響いた。 血が噴き出し、 処刑台を赤く染める。

 相楽翠が嘔吐した。

 五十嵐龍之介は両手で顔を覆った。

 早乙女千景は失神寸前で震えていた。

 続いて左腕。 右足。 左足。

 その度に宇佐美凛の悲鳴が響き、 血が飛び散った。

 俺は見ていなければならなかった。 これが現実だということを、 しっかりと目に焼き付けるために。

 最後に、 宇佐美凛の意識が薄れていく中で、 機械音声が事務的に告げた。

「出血多量により、 #03宇佐美凛の死亡を確認いたします」

 処刑台には、 四肢を失った彼女の胴体だけが残されていた。

 そして、 配信画面のコメント欄は狂乱状態だった。

『うわあああああ』
『マジで切断された』
『グロすぎて吐いた』
『でも止められない』
『神配信すぎる』
『シーズン2いつ?』

 俺は深く息を吸った。

 2度目の処刑。 そして、 1度目よりもさらに残酷な方法。

 視聴者たちは、 エンタメとしてより過激な死を求めている。 そして、 その要求はシステムによって実現される。

 機械音声が続ける。

「処刑を以て、 参加者は13名となりました。 看守と囚人の役割は継続いたします」

 13名。

 俺たちはまた一人、 仲間を失った。

 いや、 もはや” 仲間” という概念は存在しないのかもしれない。

 斑鳩凌が看守席から囚人たちを見下ろして言った。

「これで分かっただろう。 このゲームは本気だ。 甘い考えは捨てろ」

 真鍋天馬が震え声で反論した。

「甘い考えって……人が死んだんですよ!宇佐美さんが!」

「死んだのは宇佐美だ」 斑鳩凌が冷たく返した。 「俺たちは生きている。 この差を理解しろ」

 雪村颯汰は頭を抱えていた。

「こんなの……こんなの間違ってる……」

 鳴海瑠璃は表情を変えずに言った。

「感情的になっても仕方ないわ。 私たちは生き残らなければならない」

 俺は黙って状況を観察していた。

 看守の中でも、 明確に分裂が始まっている。

 斑鳩凌と鳴海瑠璃は完全に冷徹化している。 真鍋天馬と雪村颯汰はまだ人間性を保とうとしている。

 そして俺は、 その中間に位置していた。

 感情的にならず、 冷静に分析し、 合理的に判断する。 だが同時に、 人間性を完全に捨て去ったわけでもない。

 囚人たちの様子も変化していた。

 葛城翼は拳を握り締めながら看守席を睨んでいた。 明らかに怒りと憎悪が宿っている。

 安堂圭吾も同様に、 俺たちへの敵意を隠そうともしていなかった。

 一方で、 早乙女千景、 相楽翠、 白鷺小夜は恐怖で萎縮していた。

 五十嵐龍之介は苦悩の表情で、 何かを考え込んでいる様子だった。

 宝生朱音は表情を押し殺していたが、 その目には複雑な感情が渦巻いていた。

 そして宍戸昴は、 相変わらず皮肉な笑みを浮かべていた。

「2人目か。 なかなかいいペースじゃないか」

 その発言に、 早乙女千景が激怒した。

「ふざけないで!凛ちゃんが死んだのよ!」

「死んだのは事実だ」 宍戸昴は肩をすくめた。 「俺が殺したわけじゃない。 投票で決まったことだ」

「でも……でも……」

 早乙女千景は言葉に詰まった。

 宍戸昴は続ける。

「俺たちは全員、 宇佐美に投票した可能性がある。 つまり、 俺たちは全員が殺人者だ。 俺だけを責めるのは筋違いだろう?」

 その言葉に、 誰も反論できなかった。

 なぜなら、 それが真実だったから。

 機械音声が告げる。

「明日の看守は、 引き続き命令権を行使してください。 本日の処刑により、 参加者の士気が低下している可能性があります。 より効果的な命令で規律を維持してください」

 より効果的な命令。

 つまり、 より過激な命令を期待されているということだ。

 配信画面では、 視聴者たちが明日への期待を込めたコメントを流し続けていた。

『明日の命令楽しみ』
『囚人たちの反応見たい』

#07の心理戦また見たい』

#01は鬼畜すぎて好き』
『もっと過激にしろ』

 俺は処刑台の残骸を見つめた。

 宇佐美凛はもういない。 彼女の” 正直でいたい” という思いも、 血と一緒に流れ去った。

 そして俺たちは、 彼女の死の上に立って、 このゲームを続けなければならない。

 斑鳩凌が囚人たちに向かって宣言した。

「明日からは、 より厳格な規律で臨む。 甘えは許さない」

 真鍋天馬が反対した。

「それは……それはやりすぎです。 彼らだって人間なんですから」

「人間?」 斑鳩凌が冷笑した。 「この状況で人間らしくいられると思うのか?俺たちはもう、 別の生き物だ」

 鳴海瑠璃が冷静に補足した。

「感情的な判断は生存に不利よ。 私たちは合理的に行動するべき」

 雪村颯汰は苦悩の表情で呟いた。

「合理的って……人を人として扱わないことが合理的なのか?」

 俺はその議論を聞きながら、 深く考えていた。

 2度目の処刑は、 明らかに俺たちの心理に影響を与えている。

 1度目は衝撃だった。 だが2度目は、 どこか慣れを感じている自分がいる。

 そして、 その慣れこそが最も恐ろしいことかもしれない。

 人の死に慣れるということ。 残酷さに麻痺するということ。

 これが、 このゲームの真の目的なのかもしれない。

 俺たちの人間性を徐々に削り取り、 最終的に完全な怪物に変えること。

 そして、 その変化の過程を視聴者が楽しむこと。

 午後が進むにつれ、 看守たちの議論は激しくなった。

 斑鳩凌は完全に支配者としての立場を固めようとしていた。

「俺たちには責任がある。 この混乱を収束させ、 秩序を維持する責任が」

 鳴海瑠璃も同調した。

「感情論では生き残れない。 現実的な判断が必要」

 一方で、 真鍋天馬と雪村颯汰は強く反発していた。

「秩序って何ですか?人を支配することが秩序なんですか?」

「俺たちは看守であって、 独裁者じゃない」

 俺は両者の議論を冷静に聞いていた。

 どちらにも一理ある。 だが、 どちらも極端すぎる。

 このゲームで生き残るためには、 感情と理性のバランスが重要だ。

 完全に冷酷になれば人間性を失う。 だが、 完全に感情的になれば死ぬ。

 俺は自分なりの立ち位置を見つけなければならない。

 配信の視聴者数は2万人を超えていた。 コメント欄は相変わらず盛り上がっている。

『看守同士の喧嘩面白い』

#01と#15の対立激化してる』

#07は何考えてるか分からん』
『明日の命令期待』

 夜になると、 機械音声が告げた。

「本日の処刑および看守議論は終了です。 明日は より効果的な規律維持をお願いいたします」

 より効果的な規律維持。

 つまり、 より過激な命令と罰則が期待されている。

 俺は看守席から囚人たちを見下ろした。

 彼らの目には、 恐怖と絶望、 そして俺たちへの憎悪が宿っていた。

 2度目の処刑を見た後では、 その感情もより深刻になっている。

 そして俺たち看守も変わっていた。

 権力に酔う者、 人間性を保とうとする者、 冷静に状況を分析する者。

 だが全員に共通しているのは、 生き残りたいという欲望だった。

 そのためなら、 仲間を犠牲にすることも厭わない。

 そのためなら、 他人を支配することも受け入れる。

 そのためなら、 人間性を捨てることも辞さない。

 俺は心の奥で感じていた。

 俺たちは確実に、 取り返しのつかない地点に向かって進んでいる。

 だが、 それでも俺は生き残るつもりだった。

 たとえこの地獄のような状況が続いても。

 たとえ人間性を失うことになっても。

 配信は続き、 視聴者たちは俺たちの破綻を楽しみ続けている。

 明日はさらに過激な命令が求められるだろう。

 そして俺たちは、 その期待に応えることになるのかもしれない。

 宇佐美凛の血が乾いた処刑台を背に、 俺は明日への戦略を練り始めた。

 生き残るために。

 この狂った世界で。
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