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価値は、0から上がっていく。初めから1以上の物はない。

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 彼、金堂厚人と彼女、柊万優はお互い34才の時に交際を始めた。お互い結婚に焦っていたというのが理由というのも無いと言えば嘘になるが、話の会うところや映画、カフェが好きなど小さな趣味が絶妙に合致したという所が互いの理由だ。それに加えて出身校が同じだったのだ。出会った当初はその話題で盛り上がっていてそんなところに運命を感じていたのもまた事実である。
 出会ったのはお互いの趣味でもあるカフェだった。
正確にはお互いカフェ巡りといった感じなのだが行きつけのカフェというのがあって、それが【good smell】という場所だというのも同じだった。その名前の通り、コーヒーと自家製のチョコケーキの匂いの香ばしさと甘い匂いが折り重なって香りだけで気分が晴れるようないい店である。
 そこで彼はいつもあえてアイスティーとカステラを食べ、コーヒーとチョコケーキは持ち帰って1人でゆっくり食べるのが自身にも分からないルーティーンとなっていた。気に入ってから数回程は全く気にしていないただの風景の中の1人だったのだが彼女がかなりのドジで次第に彼が見ているカフェの風景の中の主人公として目に映るようになっていた。
 彼女がコーヒーをこぼしたり、ハンカチや財布などを忘れて取りに戻ってきたり、そんなドジを繰り返す度に目で彼女を追うのが増えていった。カフェ出なく家に帰っても彼女が頭に浮かぶようになったころでもある。突然、テーブルにいつも座っていた彼女はカウンターに座っている彼の隣に座ってきた。
「いつもその2つですよね?アイスティーとカステラ!ここコーヒーとチョコケーキが美味しいの知ってますよね?理由ってあるんですか?」
これが彼女から初めて話しかけられた言葉であり、初めて見た無邪気な笑顔だ。
「そうですねぇ自分でも理由はよく分からないんですけどそうやって自分に対してふざけているのかもしれませんね」
「なにそれっ変な方ですね。あっ初対面の人なのに失礼でしたねすいません」
ニコニコしながら話すその姿は彼まで気分を明るくさせた。
「いつもここで見ているから初対面って言うのもなんかおかしい気がしますね」
「たしかに」
そんな風に話して行くうちに仲良くなっていき次第に1人だったカウンターから2人でテーブルで過ごす様になっていた。連絡先もしらずに居合わせたら話すといった関係ではあったがとても楽しかった。大体が毎週土曜日という感じだったから居合わせたらって言うのはほとんど確実だった。
 だが出会って3ヶ月目ぐらいからか、冬の暖かい吐息が冷たい空気と飽和し見えなくなるように1ヶ月程見なくなってしまった。
 ちょうど白い息が見えなくなるようなその瞬間、大体その日から1ヶ月半が経つ頃、少し疲れたような顔をした彼女がカフェへ戻ってきた。
「すごいお久しぶりですね」
「そうですね、もう1ヶ月程は来てませんでしたっけ」
「そうですねぇ何か疲れた顔をしてるように見えますけどお仕事が忙しかったんですか?」
「まぁそんなところですね」
と彼女はあまり話たがらなかった様に見えたので深追いする事はやめ、話題を変えて楽しませる事にした。
「そう言えば最近新しい面白そうな映画を見つけましてね【Dance twilight】って言う映画なんですけど恋愛とプロダンサーどちらを取るかっみたいな映画で面白そうじゃないですか!?」
「映画、よく見られるんですか?私も趣味で良く見てるんですよっ」
少し彼女の顔に明かりが戻り、ほっとした
「僕もです!家でも映画館でも見てますよっ」
「もし良かったら私と一緒に見に行きませんか?」
急な誘いにびっくりして少しぼーっとしてしまった
「すいません急に、知らない人と行かないですよね普通」
「いやいやむしろ嬉しくてびっくりしたんですよ!是非一緒に行かせてください!」
「そんな有名人じゃないんですからくださいなんてやめてくださいよぉ」
それもそうだなとお互い少し声を出して笑った。
「じゃあメアドと電話番号交換しましょうかっ」
「そうですね僕のメアドかなり簡単なんで登録してもらっていいですか?」
「私難しかったので丁度良かったですっ
えーっと atuto0312@・・・ほんとに簡単ですねっ
お名前あつとさんなんですねっ」
「厚人って書きます。そう言えばお互い名前も知らなかったですね」
「あ!確かにっすっかり忘れてましたね。
私は柊 万優(ひいらぎ まゆ)って言いますよろしくお願いします。今更すぎる自己紹介ですね。」
「ほんとにその通りですね。僕は金堂 厚人(こんどうあつと)って言います。」
4月の暖かい陽気がこれからの2人の関係が明るくなって行くのを予感させた。
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