異世界の果てで教師になる(私)~教わることしかできなかった私の授業録~

曇天

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第三十二話「強さの証明、赤き宝玉の誓い」

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「ここからがオークの土地か」

 私たちはジェルクとの話のあと、クルスとケットシーの【パエルク】を道案内にほかの亜人種族との対話のためにオークの支配する地域へときた。 そこは穀倉地帯だった。 黄金のように稲穂が実って風に揺れている。

「オークは強さに重きをおく武闘派だよ。 話を聞いてもらえるかどうか......」

 パエルクはそう不安げにいった。 パエルクはジェルクに付けられた連絡がかりで、かなりのお調子者だが、珍しく緊張しているようだ。

「お前たちは何者だ」

「人間とゴブリン、ピクシーに、人狼、ケットシーまで......」

 武装した猪のような顔の人種が複数こちらに近づいてきた。

「すまない。 私たちはオークの長に話がある。 これは重要な要件だ。 取り次いでもらいたい」

「......重要」

 オークの一人が他のものたちと顔を見合わせている。

「他の種族を長に近づけさせるわけにはいかん」

「しかし、これはオークの未来にも関係することだ」

「......我らの、どうする?」

「しかし、信頼できぬものを長に会わせるわけにはな」

 少し困惑ぎみに相談している。

「どうすれば信頼してくれる」

「ふむ、我らは強者を信奉しておる。 その力を示せるか」

「では先生、ここは私がやりましょう」

 クルスが前にでた。

「ゴブリンだと......」

「ええ、私が勝てれば、話をきいていただけますか」

 一瞬、沈黙してオークたちは笑いだした。

「これは愉快! オークにゴブリンが戦いを挑むとは!」

「よかろう! この【ガガン】相手しよう!」

「この国一番の戦士のガガンさまが!?」

「よろしいですか、殺さないでください。 ガガンさま」

 周りからそういわれて一人の大柄なオークが前にでた。

「そちらは武器を使ってもかまわんぞ」

「いえ、同じ条件でなければ強者とは認められないでしょう?」

「その意気やよし」

 ガガンが真剣な顔になった。

「おい、いいのかよ! クルス殺されちゃうぞ」

「そうだよ! オークとゴブリンじゃ、強さがちがう!」

 そうティルレとパエルクがいうと、リオネがとめた。

「クルスなら大丈夫です」

「リオネのいうとおりだ。 任せても大丈夫だろう」

 クルスとオークのガガンが対峙する。 その体格は倍ほどちがった。

「では、はじめ!」

 オークの合図で、二人は間合いをつめる。 クルスがかわすと、オークの振り下ろした拳が地面をえぐった。

「すごい威力だよ!」

「あんなのくらったら一撃で死んでしまう!」

 ティルレとパエルクは心配そうにいった。

「当たればな......」

 クルスはガガンの攻撃を華麗にかわす。

「かわしてばかりでは勝てぬぞ!」

「確かに...... ではいきます」

 クルスが懐にはいる。

「甘い! 叩きつけてやろう!」

 ガガンが腕を伸ばすと、その腕を取り、足をはらって投げた。

「ぐはっ!!」

 地面にガガンが叩きつけられた。

「なっ...... ガガンさまが!」

 オークたちは言葉を失う。

「やったぞ! クルス!」

「クルスってあんなに強かったのか」

 パエルクは驚きの声をあげた。

「いや、次はおれだ!」

「いや、おれがやる! このまま帰せん!」

 オークたちは納得いっていないようで騒ぎだした。

「やめろ!」

 倒れていたガガンが仲間をそう一喝した。

「このものは強い...... 俺は真剣に戦った。 すまぬな侮っていた。 そなたら真の戦士だ」

「いいえ、私は先生から教わった武術を使っただけ」

 そうクルスは手をとった。

(ゴブリンの小柄さを活かすために、柔道を教えておいてよかった)

 
「なるほど、そういうことが起こっておるのか」

 オークの長わ【イグラ】が考えている。 ガガンにつれられ、オークの長のところに案内してもらった。

「まさか魔王とは......」

「あんなものをよみがえらせるなんて......」

 オークたちもどよめいている。

「ここにも宝玉はあるのですか?」

「うむ、これだ」

 イグラの首にかけられた首飾りに赤い宝玉がついている。

「先祖より託されたものだ。 まさか魔王の魂のかけらとはな...... 守れとはいわれておったが」

「それを狙うベルフォリアというものがおります。 何卒我々、ゴブリンや他の亜人種族と関係を深めていただきたい」

「ふむ、よかろう」

「ずいぶんあっさりだね」

 パエルクがポカーンとしていった。

「ふふふっ、ガガンはオーク族でもよりすぐりの戦士、それを倒すのだ。 信頼に値しよう」 

「強さが価値なのですね」

 理解できないといった風にリオネは首をかしげる。

「強くなるためには果てない努力と忍耐が必要だ。 生まれながらの力だけでは限界もある。 それを成しえる者を尊ぶのが、我らオーク族なのだよ」

(確かに簡単には強さも知識も手に入れられない。 クルスもゴブリンながら毎日の鍛練や勉強はかかさない。 まさに努力の結晶だろう。 見習わないとな)

 ガガンたちとうちとけ仲良く話しているクルスをみて思った。

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