おこもり魔王の子守り人

曇天

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第六話

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「ここで十二階層か...... これまでなにもなかったな」

 俺が二人に聞いた。

「くそっ、もう、かなりポーション使っちまった」

「結構モンスターにも出会ったし、まずいね......」

 ガルムとラクレイも焦っているようだ。 ここまでモンスターとの戦いで俺たちは疲弊していた。

「帰るか......」

「なにも見つかってないぞ! せめてプラマイゼロにしねーと」

「うん、さすがになにもなしじゃ、モンスターの素材とギルドの報酬だと、かなりの赤字だし......」

「とはいえ、もうポーションも残りわずかだ。 帰り道を計算しないと詰むぞ。 帰ろう」

 俺が強くそう提案する。

「......それはそうだが、少し体力も残ってる! 頼む!」

「そうだよ! せっかくここまできたんだから、もうすこしだけ探索しようよ!」

(二人とも焦ってんな...... 無理に反対すると二人だけで進んでしまうか......)

「......わかった。 でもこの階層だけな。 譲れるのはそこまでだ」

「おう! 何とかこの階層で見つけようぜ!」

「よし! さあいこう」
 
 俺たちはこの階層を進んだ。 いくつかの部屋に入るがめぼしいものはない。 

 そして、ひとつの部屋にはいると壺がいくつかおかれている。

「壺は価値があるんじゃないか」

「そうだな! 割れてるけど持って帰ってみるか! あっ......」

 ガルムが触ると砕けた。

「古すぎて形を維持できないね......」

「だな...... 先にいくか」

「ん? これ」

 その壺の後ろにあった壁の石が少しでている。 俺はそれを押すと音が響き部屋の壁が動いて、扉が現れた。

「マモルでかした! 隠し扉だ!」

「うん! 開けられた形跡はないし罠もなさそうだ」

「よし、いってみよう」

 扉をゆっくりと開ける。 そこは奥へと続いていた通路があった。
進むと突き当たりに大きな両扉がある。

「また扉か......」

「お宝の予感だ」

「いこうよ」
 
 俺たちは両扉を開ける。 すると奥が見えないほど広い部屋だった。

「広いな......」

「ああ、奥が見えない...... ラクレイ」

「わかった」

 ラクレイが先に進みライティングで部屋の奥を照らすと、そこに十体の甲冑をつけた骸骨が倒れている。 それが立ち上がってくる。 

「なんだ? まずい! 早く逃げ......」

 俺が叫ぶと後の扉がしまる。

「まさか、罠か!」

「おい!」

 ガルムが呼び俺後が振り替えると、骸骨の目の窪みに二つの光がともり、剣と盾を構え立ち上がってくる。

「こ、これスケルトンだ!」

 ラクレイがそう震えながらいう。

「死体ってことか!?」

「ああアンデッド、魔法でよみがえらせモンスター化したものだ......」

 スケルトンたちはこちらに向かってくる。

「ウォォォォォン!!」

 ガルムが咆哮した。 スケルトンたちは動きを止める。 

「俺のハウリングで止めてるうちに数を減らすぞ!」

「おう!」

「わかった! 足を狙おう!」

 俺たちはスケルトンたちの足を斬りつけたが、なかなか斬れない。

「固い!!」

「仕方ない魔力をまとった骨だからな!」

 何体かのスケルトンの足を砕いてくと他のスケルトンが動き出した。
 
「くっ、動き出したぞ! ガルム、ハウリングは使えないのか」

「一度使うと魔力をためるのに五分はいる!」

「あと五体なんとかしのぐぞ!」

 スケルトンたちは剣をふるい攻撃してくるのを、三人で防ぎつつ時間を稼ぐ。

「くっ、攻撃が重い!」

「骨のくせしやがって!」

「攻撃する暇もないよ! それに...... もう」

「がんばれラクレイ! もう、少しまてばガルムのハウリングで......」

 その時、後で倒れていたスケルトンたちが立ち上がりだした。

「なっ!? 足を斬ったのに!」

「再生しやがったんだ! ヤバイぞマモル! これじゃハウリングで止めてもまた復活しちまう! こいつら普通のスケルトンじゃねぇ!」

 ガルムの声がうわずる。 俺たちは防戦一方になり傷を負い、追い込まれていく。

(......まずい、だが逃げる場所もない...... もう)

「全くなさけない。 これがアディエルエさまが認めた男とは」

 ため息と共にそんな声が聞こえた。

 俺の影から人がでてくる。 それはヴァライアだった。

「なっ!? ヴァライア」

「もう少し期待したのに、この程度とはな......」

「どこから! いやそんなことより逃げろ! 今スケルトンは俺たちが押さえているから! その間に魔法を使えるなら後の扉を破壊できるかもしれない!」

「私に逃げろ、だと、魔王直属の八魔将をなめるなよ」

 そういうと、なにかを唱える。

「シャドウライトニング」

 ヴァライアから放たれた黒い雷光はスケルトンたちを粉々にし、その爆風で俺たちは吹きとんだ。

「ぐっ、なんだ今の!?」

 土煙がおさまるとつかつかとヴァライアが俺の前にたち、おもむろに襟首をもつと引っ張る。

「な、なに!! ちょっ!」

「静かにしろ暴れるな。 アディエルエさまが貴様を呼んでこいとの仰せだ」

 俺は呆然と見ているガルムとラクレイをおいて引きずられていく。
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