おこもり魔王の子守り人

曇天

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第十二話

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 日曜日、商店街に出掛けるため、朝早くまだ暗いうちから、城の外でまつ。 

(あのキラーワームが素材として金貨九枚で売れた。 だから二人は少し休むって言ってたから暇になったからな。 俺も三枚もらったし、当分お金には苦労しないから問題はないか)

「お、おまたせ......」

 モゾモゾと門の外に海坊主がでてきた。 

「また、コタツ布団か...... 脱げ」

「えっ、きっと...... 人が多いから......」

「いや、多分多くないし、そもそも怪しいから脱げ」

「わ、私は一応提言したのだぞ」

 ヴァライアはそう焦りながら言う。

(なんで、ヴァライアは目の下にクマできてんだ? またあのクソカードゲーに付き合わされてたのか、でもアディエルエにクマはないけど......)

「わ、わかった......」

 脱ぐといつものだらだら黒ジャージだった。

「この間の服でいいだろ」

「あれ、スースーするし...... 恥ずかしい」

「くぅ」

 ヴァライアが肩を落としている。

「まあいいか、でもかなり遠いぞ。 なにせ世界が広くなったから、国を越えないといけない。 だからこんな朝早くからいくんだからな」

「こ、コンビニより?」

「コンビニのなん倍もだ」 

「な、な、なんばいも......」

 俺がいうとアディエルエは青い顔になりフラフラしている。

「やめとくか」

「い、いく......」

「さすが! アディエルエさま!」

「甘やかすな」

 俺たちは商店街へと向かうため、近くのハボックの町へと向かった。


「なぜこんな町にきたのだ?」

「あまりも遠いからな。 みろ」

 ヴァライアが俺の背中でへたっているアディエルエをみる。

「アディエルエはナマケモノで更に動物のナマケモノより遅い...... このままだと商店街まで数日かかる。 だから馬車を使う」

「ナマケモノいうな! しかし確かに...... アディエルエさまは、もはや歩くこともできまい」

 そうアディエルエの世界では馬車が移動手段でもある。 ただしかなり高い。

(まあ、この間の報酬でいけるな。 でないと歩きじゃ、まず今日中につくことすらままならないからな)

 陸にあがった魚のように、げっそりして口をパクパクしているアディエルエをみて思う。

 取りあえず安いホロつきの馬車をかり、荷台に乗るとヴァライアの運転で商店街まで向かった。


 それから数時間でフェンスに囲われた門を抜け、商店街のある場所についた。

「なんとか、昼までにはついたな。 どの程度かわからんからな。 早くでてよかった。 
 
「う、うん......」

 そういうと、アディエルエとヴァライアと俺は馬車をおり、門を抜けて商店街へとは入る。

「久々にきた...... 昔は、ここの近くの駄菓子屋にきてたんだが、まだあるかな?」

「だ、駄菓子屋...... 知ってる、昔のアニメでみた...... い、行きたい」

 アディエルエがテンションがあがったようにそういうと、ヴァライアがうなづく。

「まだ時間まであります。 いってみましょう」

 商店街を俺たちは歩く、人通りはまばらでシャッターも降りてる店が多い。

「こ、これ...... モンスターがいる...... から?」 

「いいや、俺がもっと小さい頃からこんなもんだよ。 昔は賑わってたみたいだけど、大型のスーパーやコンビニができたことで、対抗できないから軒並みつぶれたらしいな」

「ふむ、時代の波にのまれたのか......」

 ヴァライアがうなづく。

「まあな。 そりゃ商品の数や利便性、ポイント付与勝負じゃ、大型店には個人商店なんて太刀打ちできないだろ」
 
「そう......」

 少し寂しげにアディエルエがその様子を見ている。

「あら、マモルちゃん」

 ある小さな店の前、ホウキで掃除をしていたおばあさんが俺を見つけた。

「あっ、おばちゃん」

「あらまあ、ずいぶん大きくなって、どちらが彼女?」

 おばちゃんは俺と二人を交互に見ていった。

「わ、私は彼女などでは......」

 ヴァライアが全力で否定した。

「だ ......駄菓子」

 俺の後ろに隠れていたアディエルエは駄菓子を見つけて、店へとはいっていく。

「開いてたんだね」

「ええ、まあお入んなさい」

 俺たちは店にはいる。 アディエルエがさっそく珍しそうに見ながら、店内をちょこまか動いて駄菓子を手にとっている。

「変わってないな......」

 店は昔から変わってない。 もちろん新しい駄菓子はあるようだが、雰囲気は昔のままだ。 

「昔はよくきてたものね......」

 懐かしそうにおばちゃんは俺の顔を見ている。

「でも、よかったよ。 元気そうで商売してて」

「ありがとう。 でも、もうお店は閉めるのよ」

「えっ? やっぱり厳しいの」

「そうねぇ、それに年だしね」

 そう微笑んだ。

「や、やめちゃう...... 私、また、くる......」

 アディエルエが両手一杯に駄菓子を抱えて、焦ってそういった。

「ふふっ、ありがとうね。 でもこれは時代の流れなのよ」

「でも......」

「そんな悲しい顔をしないで、私にはここで子供たちをずっと見てきた。 その楽しい思い出はここに残ってる」

 そうおばちゃんは胸に手を当てる。

「それに変化も悪いことばかりじゃないわ。 人も町もずっと変化はしているもの。 ずいぶん昔より便利になったし、豊かにもなった。 嫌だというひともいるだろうけど、私はいいことだと思うのよ。 少なくとも私にとってはね」

 そうおばちゃんは微笑む。

 アディエルエと俺たちは駄菓子を大量に買って店をでた。
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