おこもり魔王の子守り人

曇天

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第三十七話

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「皆さまには大変感謝しております」

 ルシールは...... いやルシアン王女が玉座に座り、威厳あるその姿でうやうやしくいった。

 あのあと、上階の捕らえられていたラクレイと橘さんを救出した。 
ベリタリスが死んだことを伝えると、兵士たちは簡単に降伏したからだ。

(まあ、仮に王女を殺しても、ベリタリスがいなければ終わりだしな......)

「あー、いてて、ひでーぞマモル」

 ほほを大きくはらしたガルムがそういった。

「......すまんガルム」

 俺はガルムを呼びにトイレに入るといきなり襲ってきたため、用心のためにもっていた魔力付与の剣で殴ってしまった。 ガルムは気絶した。

「ほ、ほんとに死ぬかと思った......」

「......ほんとうに」

 ラクレイと橘さんの二人もずいぶん怖い思いをしたのか、泣きそうだ。

「すみません...... 皆さん、我が国のことでご迷惑をかけました。 このご恩は一生忘れません」

 そう深々と頭を下げた。

「女王になるなら、あんまり頭は下げない方がいいぞ」

「ふふ、そうですね」

 俺たちはそのあと本当の歓待を受けた。 ガルムたち三人とも報酬をもらう約束をし、すぐ機嫌をなおした。


「なっ、なんで、教室にルシールがいる!?」

 次の日、ルシールは普通に登校していた。

「なんでといわれても、僕はルシールとして学園にかよっているからな。 まあ今後ともよろしく」

 そう微笑んで俺の肩を叩いた。

「ま、まあいい、それで、なにかわかったのか」

「......先に捕らえた二人の貴族は、ベリタリスが死んだことを伝えると、ベラベラとしゃべりだしたよ」

「後ろ楯がないんじゃな」

「それで貴族や兵士たちの中、トライマギカのメンバーを割り出し拘束した。 三百人程度だった」  

「結構いたんだな」

「僕のやることが気にくわないものは多い...... 特に貴族たちの既得権益を揺るがしかねないことには反発が強い。 でも今回のことで極端なものたちは捕縛できた。 これでかなり動きやすくはなった助かったよ」

「そうか、よかった。 それで他にはなにかと繋がってたとか、マグナエクス...... なんとか」

「それはわからない...... 彼らも誰とは聞かされてなかったんだ」

 ルシールは眉を潜める。

「じゃあ、なにもわからずか......」

「......いや」

「なんだ、なにかあったのか?」

「ベリタリスが最後に鍵を渡したろう?」

 死ぬ前に白髪の少女に鍵を渡していたことを思い出す。

「ああそういや...... それが」
  
「あの鍵は、我が国の宝物庫の鍵だ」

「お金が奪われてたのか?」

「ああ、魔法の武具なんかもな...... しかしそれよりも、我が国が遥か昔より保管していた魔導器【ランジェラング】が奪われていた」

「魔導器【ランジェラング】......」 
 
「そうだ。 天網玉【ランジェラング】は、魔法の効果範囲をはるかに広げる効果をもつ宝玉だ」

「それがなくなった...... 金のついでか」

「いや、逆の可能性もある...... ランジェラングのついで、もしくはランジェラングが目的なのを悟らせないよう、他のものを持ち出したのかもしれん」

 そういってルシールは真剣な顔をした。

「魔法の拡大か......」

(何かを、企んでいることはまちがいないな......)

「......というわけなんだ」

 俺はすぐにヴァライアに話をした。

「......ふむランジェラング...... それにシャドウムーブを使うものか...... あれは闇魔法容易くは使えん」

 ヴァライアはなにか思うところがあるのか考え込んだ、

「まあ、取りあえず王女を救ったのだからよしとするしかあるまい。 その話は私からセレンティナさまに伝えておこう」

「ああ、頼む」

 そういうとヴァライアは部屋を出ていった。
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