おこもり魔王の子守り人

曇天

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第五十九話

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「そ、そんな大変だったのか......」

「ひぃ、ボカミンさまとリュディエルデさまの対立なんて考えたくもないよ......」

 ガルムとラクレイは震え上がっている。

「でも、橘さんのお陰で助かったよ」

「う、ううん、ただ子供が好きなだけで......」

 橘さんは照れたように話した。

(あのダブルモンスターを子供扱いか...... すごいな)

 ガルムとラクレイと目が合う。 二人も同じ思いのようだ。

「でも、二人のいさかいで神社も半壊したから改築がまたいるんだろ。 セレンティナさんの申し出を断ったんだよな」

 そうガルムが聞くと橘さんはうなづく。

「うん、セレンティナさまがお金を出してくれるといったんだけど......」

「もったいない。 出してもらえばいいのに」

 ラクレイはそういう。

「でも神社は自分の手で直したいから」

 橘さんは笑顔でそういった。

「それで、今日はギルドの依頼をうけたんだぜ」

「うん、かなりお金も減ってきたからね」

 ガルムたちは答えた。

「まあ、俺も少し増やしときたい。 将来どうなるかわからんしな。  受けた依頼は遺跡のアイテム調査か」

「ああ、といっても遥か昔にあったという古代の国の秘宝だ。 今まで何パーティーも依頼を受けたが見つけられてものはいない。 本来はAクラスが受ける依頼だが、俺たちがリントヴルムを倒したことをしって依頼がきたって訳だ」

「依頼料は受けただけで、前金、金貨二十枚、存在を見つけた証拠を出せば千枚、手に入れれば一万枚だよ!」

「金貨一枚五万として五億か...... ずいぶんだな」

「どうしたの?」

 橘さんが聞いてくる。

「それほどのお金がでるってことは、かなりヤバイってことだ」

 ガルムが説明する。

「そうだな...... 今までパーティー、半壊、または全滅もあったらしい」
 
「だからあの遺跡に入る許可が降りるのは稀なこと、このチャンス逃すわけにはいかないよね」

 ラクレイが斧を握る。

「確かにな。 危なくなれば逃げればいいしな」

(それに保険もかけている......)

「じゃあ! いくぞ!」

「おー!」 

 意気揚々と歩くガルムとラクレイのあとをついて、俺と橘さんはついていく。


「ここか......」

 俺たちが半日かけてきたその遺跡はかなり崩壊していて一部分巨大な黒い柱が残っている。 その周囲には重武装したかなりの数の兵士たちがいる。

「ずいぶん厳重だな」

「ああ、ここは暴虐の魔王の居城跡地だからな」

「すごい強いモンスターもでてくるらしいよ」

「ここは魔族の管理下じゃないんだよね?」

 三人がそういう。

(暴虐の魔王...... 確かジャナルヘルム。 調べたが遥か昔、異世界の全土を恐怖で支配したらしいが、そいつの居城跡か......)

「ここに何があるんだ?」

「ジャナヘルムが全土を掌握できたのは、ある魔導器《マジックアーティファクト》があったからだといわれている」

 ガルムが歩きながら教えてくれた。

「ある魔導器《マジックアーティファクト》?」

「【アグラディバラス】っていう、魔法石さ」

「アグラディ...... それはなんなんですか?)

 ラクレイに橘さんが聞いた。

「うん、アグラディバラスは、危険すぎてかつての魔王たちが封印した魔導器《マジックアーティファクト》で人から魔力を奪うらしいよ」

「奪った魔力を使って何かしてたんだってさ」

 ラクレイとガルムがそう説明してくれた。

「だったらそのまま見つかんないほうがいいんじゃないか」

「そりゃな。 でも最悪悪人にわたったらまずいだろ。 だから先に押さえたいんじゃないか?」

 ガルムが俺に答えた。

「でも、見つからなかったんだよね?」

 橘さんはそういった。 

「ああ、おそらく魔法で隠してんじゃないかってはなしだ。 でもマモル......」   

「あれか......」

 俺はガルムにいわれてリュックから大きな玉をだした。 

「それがザイガルフォンさまが持っていたトゥルースフィアだね」

「魔法でかくされたものを見つけるアイテムだな」

 ラクレイとガルムがそういった。

「確かにそれなら隠されているアグラディバラスを見つけられるかも」

 橘さんが両手をポンとたたいた。

「ああ、セレンティナさんから渡されていて......」

(これもしかして魔族の依頼か? セレンティナさんが...... ここは魔族の管理下じゃないっていってたし)

 俺たちは遺跡ないを探索する。 多くの強力なモンスターが現れて戦いになる。

「ここのモンスター結構強いがやれるな」

「ああユウナのバフなしじゃひとたまりもねえけど」 

「うん! 十分戦えてるね!」

「でもみんなすごいよ! こんな強いモンスターを倒すなんて!」  

 俺たちは更に現れる強力なモンスターを蹴散らしながら進む。

「お前らもバルディオの稽古で強くなってるな」

「ああ、剣技だけじゃなく、高等魔法も覚えたしな」

「うん! まあそのうち見ててよ!」

 ガルムとラクレイが自信満々で言った。
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