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第六十六話
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「ここか」
俺たちは大きな川沿いを歩いていた。
「ああ、この先からサードエリアになってるな」
ガルムがスマホをみながらいうと、ラクレイが首をかしげる。
「これ川が分断されてたのかな?」
「そうみたい。 元々大きな川が分けられて小さな川になってたんだって」
橘さんがそういって川を指差した。 川のなかをのぞくと知らないカラフルな魚が泳いでいる。
「確かによくみると、みたことない魚もいるな」
「ひとつになったことで生物も混じっているからな」
「元々別々の環境で適応した生き物だからね」
ガルムとラクレイが答える。
「そういえば、そもそもなんで世界は分けられたの。神が人間を守るためといってたけど、人間もそっちにいるよね」
そう橘さんが聞く。
「それがよくはわからんな。 かなりふるい話で神話みたいなもんだからな。 ただこっちの人間が魔法を使えなかったから、そういう人間だけ助けたかったんじゃないか、モンスターとかいるし、戦争もしてただろうしな」
「うん、一応そう伝わってるし、実際世界は分かたれてたしね。 事実だったと思うけど......」
二人もよくは分かってないようだ。
「確かに不思議ではあるな。 俺や橘さんが魔法を使えるってことは、全くこっちの人間が魔法を使えなかったわけでもなさそうだしな」
「ふむ、そうだな...... 神なんていないだろうし、多分多数の複合魔法かなんかで世界を分けたんだろうが正確にはわからんな」
「神さまはいないの? 魔法があってモンスターも妖精も精霊もいるんだから、神さまがいてもおかしくはないと思うんだけど」
橘さんが不思議そうに聞いた。
「さすがに、神さまはどうなんだろう? 一応多神教だから、炎とか水とかの神さまは信仰対象にいるけど、信じてる人は少数だよね」
ラクレイが答える。
「そうなのか? 何でだ?」
「昔からモンスターという脅威がいて、それを自力で倒してきてからな。 そんな他力本願なやつはあんまりいないんだよ」
「そうそう、それに魔法が当たり前にあるから、奇跡とかそういうのは信じないんだ」
ガルムがいうとラクレイがうなづいた。
「不可思議なことは魔法で説明がつくってことね」
橘さんが納得する。
(なるほどな。 それで信心深くはないのか......)
俺たちはそう話ながらサードエリアに入っていく。
「かなり強いな。 ここのモンスター......」
倒したモンスターをみながら俺が言うと、ガルムたちがうなづいた。
「ああ、みたことあるやつも通常より強い」
「うん、魔力が倍か三倍はある...... でも戦えなくもないね」
「うん、この装備すごいよ」
橘さんがいうとおり、クエリティの作ったこの装備は、高い性能を誇ってモンスター駆除を容易くしていた。
「ああ、俺の双剣は魔力で炎と氷を操れるから、斬って凍らせられるし、燃やせる。 こいつはかなり使えるぜ!」
「うん、僕のハンマーも手袋のお陰で、長く巨大にしておもいっきり叩ける! 巨石も粉砕できるよ」
「私も魔力が漏れないから、今までより魔法を多くつかえるし、魔力をうちだせるから攻撃も出きるようになったよ」
「俺も剣の切れ味がすさまじいな。 鎧も軽い」
モンスターを駆除しながら先を進む。
「これって...... 遺跡か......」
しばらく川の上流近くを探索していると、石のように朽ちた巨大な樹木の根が幾重にも絡み付き入り口を塞いでいる。 その隙間から遺跡の入り口らしきものを見つける。 かなり古い遺跡のようだった。
「......みたいだな。 わかれる前に誰かが作ったものなんだろうな」
ガルムはそういいながら、スマホで写し送信している。
「どうする? 一応ここまででも依頼探索としては十分な気もするけど......」
「でも、まだ魔力もかなりあるし、このまま中も少し調べた方がいいんじゃない」
ラクレイに橘さんがいった。
「そうだな、入って見るか。 サードエリアのことがなにかわかるかもしれない」
俺たちは石のような根を切り裂いて中へと進んだ。 意外にもモンスターの魔力は感じない。 かなり深く地下へと階段を進んだ。
「魔力は感じないな...... 中の石壁も古そうだが、崩れたりせずきれいな感じだな」
「ああ、でも外の感じだと古いはずなのに、きれいすぎやしないか?」
「うん、ガルムのいうとおり、あんな巨木が石化するくらいの年月は経過してるよね。 でも中の石はかけてもいない...... 古代の技術にそんな感じのはあったけど、だとすると数万年クラスの古い遺跡だよ」
ラクレイがそういって壁をさわる。
「そんなに...... でもモンスターとかいないね」
橘さんがそういうとガルムは思い出したかのように話し始めた。
「そういやモンスターも遥か昔はいなかったらしいな」
「本当か?」
「ああ、古い地層なんかから、骨は出てこないからな...... せいぜい数万年ぐらいだそうだ」
「突然現れたのか」
「そうそう、だから誰かが創造したんじゃないかって...... 昔は大きな戦争がいっぱいあったらしくて、魔法で作った兵器なんじゃないかって話もあるね」
ラクレイがそういった。
(兵器か...... ん?)
光が漏れる地下へと降りていくと、広い空間にでる。
「ここは、街か......」
そこは石造りの家が立ち並ぶ巨大な町らしき場所だった。
「スゲーな。 どうやら古代の街だな」
「明るい、外みたいだ。 上の方が光ってる魔法かな」
俺たちはその街を探索する。 それぞれの家にはいると、その当時使っていた食器や家具が残されていた。
「時間がとまってるみたい......」
橘さんが部屋をみてそういう。
「町を放棄したのか...... でもなぜ?」
「わからん。 でもかなり古いな」
「なのに金属加工の加工技術はあるね」
そういって、ラクレイは金属製のスプーンを手に取る。
「高度な文明があったってことか...... まあ、俺たちの世界ならすごいけど、お前たちの世界ならどうなんだ?」
「数万年前にはさすがにここまでの金属の加工技術はなかったはず...... 正直、ここは異常だ......」
ガルムが少し考えこむように言った。
(そうなのか...... ならここは、それにここにいた人間はどこに)
俺たちが近辺の家を探索するがめぼしいものはなかった。
「あ、あれ」
橘さんが指差した方に、大きなドーム状の建造物がみえる。
「いってみよう」
俺たちはそのドームに近づき中に入ってみる。
「ここは、なんだ?」
そこには何もない空間があり、真ん中に黒い石のようなものがひとつポツンとたっていた。
「野球とか、サッカースタジアムみたいなものかな」
橘さんがいうと、ガルムのは首をふる。
「スポーツしてたって感じじゃないな......」
「そういや、お前らの世界ってあんまスポーツやってる人いないな......」
「まあ、貴族たちが魔力のボールを打ち合うルガードっていうスポーツをやってるけど、魔力の少ない一般人は、布で作ったボールをけって穴にいれるイーダイムか、剣術や弓術、槍術、斧術とかかな」
「でも、ネットでみて、最近サッカーをやり始めた人もいるみたいだよ」
「まあ、ボールがあればできるから、取っつきやすいもんね」
そんな話をしながら、黒い石に近づく、それは二メートルぐらいあり、上が曲線を描き、わかりやすくいえば切った食パンのような形をしていた。
「なんだ。 この石、大理石みたいに反射して映るな」
黒い石に近づくと自分の姿が映る。 その時、急に黒い何もない表面が青く光る文字が浮かび上がる。
「これは......」
「古代文字か......」
「写真撮っとこう」
「石碑みたいなものね」
俺たちは写真を撮る。
「この文字わかる人間がいるかな」
「もしかしたら、ボカミンさまならわかるかもしれない......」
ラクレイがそういう。
「びんちゃんが!!?」
「うん、バルディオさまがいってた。 ボカミンさまは精霊だから、古代から生きているって、もしかしたら......」
「あー、そんなこと言ってような......」
ガルムが思い出したように言った。
「いや、覚えとけよ」
「そんな暇ないんだよ! 俺たちがあの人との修行で何回死にかけたと思ってるんだ!」
「いやああああ!」
ラクレイが頭を抱える。
(だいぶトラウマを植え付けられてるな。 俺でいえばセレンティナさんか......)
「じゃあ帰ったら、びんちゃんに聞いてみるよ」
「ああ、なんかわかったらみんなに連絡をしてくれ」
そう橘さんにいい、俺たちは遺跡を後にした。
俺たちは大きな川沿いを歩いていた。
「ああ、この先からサードエリアになってるな」
ガルムがスマホをみながらいうと、ラクレイが首をかしげる。
「これ川が分断されてたのかな?」
「そうみたい。 元々大きな川が分けられて小さな川になってたんだって」
橘さんがそういって川を指差した。 川のなかをのぞくと知らないカラフルな魚が泳いでいる。
「確かによくみると、みたことない魚もいるな」
「ひとつになったことで生物も混じっているからな」
「元々別々の環境で適応した生き物だからね」
ガルムとラクレイが答える。
「そういえば、そもそもなんで世界は分けられたの。神が人間を守るためといってたけど、人間もそっちにいるよね」
そう橘さんが聞く。
「それがよくはわからんな。 かなりふるい話で神話みたいなもんだからな。 ただこっちの人間が魔法を使えなかったから、そういう人間だけ助けたかったんじゃないか、モンスターとかいるし、戦争もしてただろうしな」
「うん、一応そう伝わってるし、実際世界は分かたれてたしね。 事実だったと思うけど......」
二人もよくは分かってないようだ。
「確かに不思議ではあるな。 俺や橘さんが魔法を使えるってことは、全くこっちの人間が魔法を使えなかったわけでもなさそうだしな」
「ふむ、そうだな...... 神なんていないだろうし、多分多数の複合魔法かなんかで世界を分けたんだろうが正確にはわからんな」
「神さまはいないの? 魔法があってモンスターも妖精も精霊もいるんだから、神さまがいてもおかしくはないと思うんだけど」
橘さんが不思議そうに聞いた。
「さすがに、神さまはどうなんだろう? 一応多神教だから、炎とか水とかの神さまは信仰対象にいるけど、信じてる人は少数だよね」
ラクレイが答える。
「そうなのか? 何でだ?」
「昔からモンスターという脅威がいて、それを自力で倒してきてからな。 そんな他力本願なやつはあんまりいないんだよ」
「そうそう、それに魔法が当たり前にあるから、奇跡とかそういうのは信じないんだ」
ガルムがいうとラクレイがうなづいた。
「不可思議なことは魔法で説明がつくってことね」
橘さんが納得する。
(なるほどな。 それで信心深くはないのか......)
俺たちはそう話ながらサードエリアに入っていく。
「かなり強いな。 ここのモンスター......」
倒したモンスターをみながら俺が言うと、ガルムたちがうなづいた。
「ああ、みたことあるやつも通常より強い」
「うん、魔力が倍か三倍はある...... でも戦えなくもないね」
「うん、この装備すごいよ」
橘さんがいうとおり、クエリティの作ったこの装備は、高い性能を誇ってモンスター駆除を容易くしていた。
「ああ、俺の双剣は魔力で炎と氷を操れるから、斬って凍らせられるし、燃やせる。 こいつはかなり使えるぜ!」
「うん、僕のハンマーも手袋のお陰で、長く巨大にしておもいっきり叩ける! 巨石も粉砕できるよ」
「私も魔力が漏れないから、今までより魔法を多くつかえるし、魔力をうちだせるから攻撃も出きるようになったよ」
「俺も剣の切れ味がすさまじいな。 鎧も軽い」
モンスターを駆除しながら先を進む。
「これって...... 遺跡か......」
しばらく川の上流近くを探索していると、石のように朽ちた巨大な樹木の根が幾重にも絡み付き入り口を塞いでいる。 その隙間から遺跡の入り口らしきものを見つける。 かなり古い遺跡のようだった。
「......みたいだな。 わかれる前に誰かが作ったものなんだろうな」
ガルムはそういいながら、スマホで写し送信している。
「どうする? 一応ここまででも依頼探索としては十分な気もするけど......」
「でも、まだ魔力もかなりあるし、このまま中も少し調べた方がいいんじゃない」
ラクレイに橘さんがいった。
「そうだな、入って見るか。 サードエリアのことがなにかわかるかもしれない」
俺たちは石のような根を切り裂いて中へと進んだ。 意外にもモンスターの魔力は感じない。 かなり深く地下へと階段を進んだ。
「魔力は感じないな...... 中の石壁も古そうだが、崩れたりせずきれいな感じだな」
「ああ、でも外の感じだと古いはずなのに、きれいすぎやしないか?」
「うん、ガルムのいうとおり、あんな巨木が石化するくらいの年月は経過してるよね。 でも中の石はかけてもいない...... 古代の技術にそんな感じのはあったけど、だとすると数万年クラスの古い遺跡だよ」
ラクレイがそういって壁をさわる。
「そんなに...... でもモンスターとかいないね」
橘さんがそういうとガルムは思い出したかのように話し始めた。
「そういやモンスターも遥か昔はいなかったらしいな」
「本当か?」
「ああ、古い地層なんかから、骨は出てこないからな...... せいぜい数万年ぐらいだそうだ」
「突然現れたのか」
「そうそう、だから誰かが創造したんじゃないかって...... 昔は大きな戦争がいっぱいあったらしくて、魔法で作った兵器なんじゃないかって話もあるね」
ラクレイがそういった。
(兵器か...... ん?)
光が漏れる地下へと降りていくと、広い空間にでる。
「ここは、街か......」
そこは石造りの家が立ち並ぶ巨大な町らしき場所だった。
「スゲーな。 どうやら古代の街だな」
「明るい、外みたいだ。 上の方が光ってる魔法かな」
俺たちはその街を探索する。 それぞれの家にはいると、その当時使っていた食器や家具が残されていた。
「時間がとまってるみたい......」
橘さんが部屋をみてそういう。
「町を放棄したのか...... でもなぜ?」
「わからん。 でもかなり古いな」
「なのに金属加工の加工技術はあるね」
そういって、ラクレイは金属製のスプーンを手に取る。
「高度な文明があったってことか...... まあ、俺たちの世界ならすごいけど、お前たちの世界ならどうなんだ?」
「数万年前にはさすがにここまでの金属の加工技術はなかったはず...... 正直、ここは異常だ......」
ガルムが少し考えこむように言った。
(そうなのか...... ならここは、それにここにいた人間はどこに)
俺たちが近辺の家を探索するがめぼしいものはなかった。
「あ、あれ」
橘さんが指差した方に、大きなドーム状の建造物がみえる。
「いってみよう」
俺たちはそのドームに近づき中に入ってみる。
「ここは、なんだ?」
そこには何もない空間があり、真ん中に黒い石のようなものがひとつポツンとたっていた。
「野球とか、サッカースタジアムみたいなものかな」
橘さんがいうと、ガルムのは首をふる。
「スポーツしてたって感じじゃないな......」
「そういや、お前らの世界ってあんまスポーツやってる人いないな......」
「まあ、貴族たちが魔力のボールを打ち合うルガードっていうスポーツをやってるけど、魔力の少ない一般人は、布で作ったボールをけって穴にいれるイーダイムか、剣術や弓術、槍術、斧術とかかな」
「でも、ネットでみて、最近サッカーをやり始めた人もいるみたいだよ」
「まあ、ボールがあればできるから、取っつきやすいもんね」
そんな話をしながら、黒い石に近づく、それは二メートルぐらいあり、上が曲線を描き、わかりやすくいえば切った食パンのような形をしていた。
「なんだ。 この石、大理石みたいに反射して映るな」
黒い石に近づくと自分の姿が映る。 その時、急に黒い何もない表面が青く光る文字が浮かび上がる。
「これは......」
「古代文字か......」
「写真撮っとこう」
「石碑みたいなものね」
俺たちは写真を撮る。
「この文字わかる人間がいるかな」
「もしかしたら、ボカミンさまならわかるかもしれない......」
ラクレイがそういう。
「びんちゃんが!!?」
「うん、バルディオさまがいってた。 ボカミンさまは精霊だから、古代から生きているって、もしかしたら......」
「あー、そんなこと言ってような......」
ガルムが思い出したように言った。
「いや、覚えとけよ」
「そんな暇ないんだよ! 俺たちがあの人との修行で何回死にかけたと思ってるんだ!」
「いやああああ!」
ラクレイが頭を抱える。
(だいぶトラウマを植え付けられてるな。 俺でいえばセレンティナさんか......)
「じゃあ帰ったら、びんちゃんに聞いてみるよ」
「ああ、なんかわかったらみんなに連絡をしてくれ」
そう橘さんにいい、俺たちは遺跡を後にした。
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