イセカイトレーダー ~取引《トレード》で異世界に建国する~

曇天

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第二十九話

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 俺たちがギルドに向かうと、ギルド内が騒がしい。

「なにかしら?」
 
「ああ、コウミさま! アンナさま!」
  
 受付嬢マイアが俺たちを見つけ声をあげた。

「どうした?」

「実は...... 冒険者ギルドに対抗するギルドができて」

 マイアは狼狽して話した。

「対抗するギルド?」

「ええ、オルターギルドです......」 

「オルターギルド? 確かギルドは独立組織だったよな」

「はい、いくつかの国が支持しているようです......」

「まあ、当然のことでもあるな。 こんな力のある独占、独立組織なんて、国からしたら邪魔だし、いくつかのギルドがあった方が競争にもなる」

「......ですが、このギルドは社会には必要なものなんです!」

 そうマイアが語気を強めた。

「そうね。 確かにギルドの行動で、盗賊や犯罪者とつながる貴族や商人、王族なんかの悪事が露見することも多いもの」

 アンナがそういって腕組みする。

「だから潰そうとしてるっことだろ。 権力者のやりそうなこった。 それでそのギルドはいまどうしてるんだ?」

「各国や所属の冒険者たちに働きかけをしているようです。 さらに問題はそのギルドのトップ、ギルド長なんです」  

「ギルド長?」 

「ええ、かつてギルドから追放されたガリアスという人物です......」

「ガリアス...... 聞いたことがあるわね。 確か四年ぐらい前にギルドの幹部だった」 

「はい、ですが貴族とつながり悪事を揉み潰すなど悪行を重ねたため、除名された男です」

「ふーん、悪人がトップか......」

「ですので! あちらには所属しないでください!」

「うーん、報酬しだいかな」

「こらっ!」

「いてててて!!」

 アンナが俺の耳を引っ張る。


「もう、あなたって人は!」 

 アンナに怒られながらギルドをでる。

「でも仕事だからな。 上は俺たちには関係ないだろ」

「悪事に荷担させられかねないわよ」

「それでも国が許可するんじゃ、そこで仕事する身としてはしかたないだろう?」

「......それはそうだけど」

「Bクラス冒険者のコウミさまとアンナさまですね」

 ギルドをでたところで話しかけられる。

 そこには露出高めの女性がいた。

「そうだけど、それで色っぽいお姉さんは?」

「私はオルターギルドのディルヒアと申すものです。 Bクラス以上の方を勧誘していまして......」

(いきなりか...... もう有名メンバーは知られてるってことか、ならギルドにも内通者がいるのかもな)

「それで条件は?」

「ちょっ、ちょっとコウミ!」

「移籍金1000万ゴールドと依頼取り分の八割ではどうでしょう」

「ずいぶん大盤振る舞いだな」

「ただ、我々の依頼をクリアーした方のみとさせていただきます」

「テストって訳か......」

「ええ、我々は低い能力の者は必要としておりませんので」

 ディルヒアはそういいながら俺の眼をみすえた。

「......わかった。 その依頼を聞こう」

「はい、では明後日、ここから南、グレエ山脈までお越しください」

 そういうとディルヒアはにこやかに去っていった。

「ちょっと! 本当に入るつもり」

「少し気になるからな」

「気になる......」 

「ただ俺たちだけじゃ危険だ。 グナトリアから助っ人を呼んでこよう」

 俺たちは一度グナトリアへ戻る。


「外の町は久しぶりです!」

 クリュエが楽しそうにいった。

「クリュエ、ターナはどうだ」

「今はお薬のおかげで進行は止まっていますね。 でもいずれ増えてきた魔力をおさえきれなくなるかも...... だから治療のために私も魔力の最大値をあげようと思ってたんです」

 そうクリュエが杖をにぎる。

「クリュエまで巻き込んで......」

 アンナがあきれている。

「それでアンナ、オルターギルドの話を聞いてくれたか」

「ええ、かなりの人間を引き抜いてるわね。 冒険者ギルドを乗っ取ろうとしてるみたい。 それに協力する国は小さいけど独裁的な国が多いわ」

「......やはり、ギルドを潰した方が得になるものたちか...... とりあえず魔法を覚えておこう」

「ええ、でも、たくさんは覚えない方がいいです」

「なんでだ?」

「魔法を覚えると、使ってなくてもその魔法分、魔力の最大値が少なくなるんです。 多くの魔法を使えても、発動させるだけの魔力がなければ意味がないから」

「魔力の最大値が減るのと同じか......  なら厳選しないと」

 俺たちは準備をして、約束の日、グレエ山脈まで向かった。
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