イセカイトレーダー ~取引《トレード》で異世界に建国する~

曇天

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第三十八話

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「こちらは二十五人...... 向こうは四十人の犠牲ですか......」

 朝になり、アリシエのもとで戦略を練る。

「ああ、だがAクラスの冒険者二名は大きすぎる痛手だ」

 ジオスが眉をひそめそういう。 

「......しかしこれも任務、彼らも覚悟の上だ。 とりあえず補充の連絡はした。 ただAクラス二人もやられたんだ。 すぐ補充のきくBクラスでは力不足、おそらく明日までは来ないな......」

 そうジオスは続ける。

「兵士の人数を増やしたかったのですが、私の元につくものは限りなく少ないので......」

 アリシエはそう椅子で考えている。

「大丈夫です! 今日さえ守りきれば、明日朝には万全の状態になっているでしょう」

 ジオスがそういって励ます。

「お願いします...... 彼には王位を与えてはいけません! 必ず阻止しなければいけない!」

 アリシエは語気を強めた。

 俺たちは外にでる。

「俺の地面にはっていたトラップ見事にかわされたな」

「何か魔法を探知するレアな魔法を持つ者がいたのかもしれない...... なにせAクラス二人がやられたんだ」

「どうやられていたの?」

 アンナがいうと、ジオスは考える。

「剣のようなもので一閃、声も出せずに倒されたようだった」

「おそらく防御魔法とかはってただろうに、簡単だな......」

「それほどの手練れがいるということだ」 

 そうジオスが話す。

「しかも単純に攻めてきた。 勝てるとふんできたのか? ばれるリスクとか考えてないのか?」

「おなじ程度の兵力だったからな。 ただ身元を隠すために鎧なんかを身に付けてなかったからこの犠牲差になった。 ばれることを考えないのは、もうこの王位をめぐる戦いも周知の事実だからだろう」

「じゃあ貴族や家臣たちも皆どちらに傾くか様子見か......」

「そうだ。 勝った方に皆つく」

 アンナが不思議そうに聞く。

「ならどうして、全ての兵力を投入しないの」

「ミルディン側も暗殺される可能性を排除できないからか?」

「ああ二人共倒れになって欲しい第三者がいるかもしれないからな。 両方死ねば王位が自分のもとに転がり込む」

 アンナと俺の問いかけにジオスはそう答えた。

「恐ろしい話ね......」

「今まで関係ないと決めていたやつらも、手に届く範囲にお宝が転がり込むなら、野心ももつだろ」

 アンナに俺がいうと、ジオスもうなづく。

「......人の欲は際限がない。 チャンスがあればその眠っていた欲が呼び覚まされる...... ミルディン王子もそれはわかってる。 だから防御の兵は動かせない。 それでもアリシエ王子より三倍以上の兵がいる、だから次の攻撃は本気でくるぞ。 王位を失えば自分が危ういからな」

 見回りをすると言ってジオスは離れた。

「どうするの? あなたの罠も簡単に突破されたわ」 

「ああ、そうだな。 多分攻めてくるなら夜だろうな......」

 罠を見回しアリシエ王子に話をした。

 そして日が暮れる。


「かなり夜もふけた。 本当にくるのかしら......」

 アンナは不安そうにそういった。

「ああ、ここを切り抜けられたら、王位を取れない。 自分の身も危ぶまれる。 コウミ、罠を回収したのか?」

 ジオスがそういった。

「ああ、おいておいても無駄だからな。 全て回収済みだ」

「それにしてもコウミ、君はすごいアイテムを使うな」

 微笑んでジオスそういった。

「まあ、これで、Aクラスになったからな。 剣や体術、魔法は大したことはないよ」

「そうか...... 私も怪我で全力はだせない。 最後にこの仕事で引退だ」

 ジオスは残念そうに笑う。


 その夜、今度は消せないように数を増やされた松明の炎が揺れる。 

 ガサ、ガサガサガサ

 周囲を囲む森がざわついた。

「きたわ!」

 アンナは弓をひいた。 

 オオオオ!

 森から一斉に鎧を着こんだものたちがでてくる。

「もう隠しもしないな!」

 ジオスが前にでていく。

 そこかしこで剣の打ち合う音がする。

「マジックメジャーメント」

 周囲の魔力をはかる。 かなりの魔力を持つものが数多くいる。

(魔法も使える騎士たちも多くいるな......)

 俺は蒼氷球を投げつけながら、周囲の加勢をする。 アンナは弓を確実に当てて兵を削っている。

「アンナにコウミ!! 前の敵が強い!! 加勢を頼む!」

 そうジオスの声が乱戦のなか前から響く。
 
(ということは、そろそろか......)

「アンナ!!」

 俺はアンナを呼び、屋敷へと駆け出す。

「ちょっ、ちょっと、持ち場を離れるの!」

「ちゃんと王子の許可はとってる」

 屋敷に入り、王子のいた部屋にはいる。 

 そこには剣を抜き背を向けたジオスがいた。

「なぜジオスがここに!? さっき前の方で声がしたのに!!」

 アンナが驚いている。

「......なるほど、私ははめられたようだね」

 ジオスがそう冷たい目でこちらに振り返る。

「ああ、王子は別の部屋だ」

「なぜ私が裏切り者だとわかった」 

「昨日の襲撃のとき、大きな声が聞こえるまでに、二つの魔力が激減したからだ」

「魔力探知ができるのか!? そんな!! まさかあの手紙には!」

 ジオスが狼狽した。

「でも、おかしい、リビテイラは私たちに屋敷に向かえっていってた......」

「声を使う魔法を使うんだ。 俺たちに前に行くよういったのもその魔法だ」

「生きてたように見せかけたのね!!」

「......Aクラス冒険者がいれば、アリシエ暗殺は難しいからね。 せっかく前のやつを始末したのに、アーシェイカが更に増やしてくるなんて予想外だったよ」
 
「なんのため!?」

 アンナが聞くと剣をかまえる。

「私はミルディンにも雇われているんだ。 貴族としての待遇でね。どうだい君たちもミルディン側に鞍替えしないか、私がとりなそう。 ミルディンについたところでたいして違いはないだろう?」

 そうジオスは不敵に笑みを浮かべた。

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