イセカイトレーダー ~取引《トレード》で異世界に建国する~

曇天

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第四十話

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「よくやってくれた」
   
 アーシェイカはそういって俺たちの労をねぎらう。 

 俺たちはギルド本部に呼ばれていた。

「それで頼んだこと、どうなっている?」 

「君のいうとおり、バストゥールの避難民をアンカレスに護衛したよ。 それに防衛もね」  

「ギルド長、それでバストゥールは今どうなってるんですか? いきなり滅んだといわれても......」

 困惑したアンナがアーシェイカに聞く。

「ふむ、アリシエが王位についた時、隣国タスキンとラクレア、それにギルドヘルム、ワグリスに攻められ滅んだ。 その時アリシエも捕縛され処刑されたというね」

「あの大きな国が...... そんなあっさり滅ぶなんて」 

 アンナがそうつぶやく。

「いくら大きな国とはいえ、国を分ける争いで消耗していたからね。
どちらつかずの兵の統率もままならず、侵攻を防ぎきれなかったのだろう」

「あなたがいってた宝が転がってくるって、他の国のことだったのね」

「ああ、バストゥールは軍事や経済で他国を圧迫してた。 弱ったらその報復にあうのは明白だろ。 そうだろアーシェイカ」

 俺がアーシェイカをみる。

「まさか!? ギルド長はこれを見越して護衛させたの!」

「いやいや、たまたまさ」

 そうアーシェイカは椅子にすわりお茶を飲む。
 
「嘘をつけ、わざわざ弱っているアリシエに俺たちを送ったのは、アリシエとミルディンを拮抗させるためだろうが。 ミルディンが圧勝して王になられたら、そのままあの国が存続するからだろ。 だから俺にジオスの魔法のことをおしえた」

「あきれた。 どこが中立なのよ」

「中立だよ。 どちらの命も守った。 仕事の依頼は護衛だからね。 とはいえ、バストゥール公国が大きくなると戦争が広がって困るものが増えるのも事実、もちろん我々ギルドもね」

 そう目をつぶりうそぶいた。

「......やっぱりあんたは欲深な魔人だよ」

「どうもありがとう」

 俺がいうと事も無げに微笑んでそう返した。


「どうした? 浮かない顔だな」

 ギルド本部からグナトリアへ向かう途中、アンナの顔をみて俺は聞いた。

「アリシエが王になったら融和のみちもあったんじゃないかって......」

「正直それはないな」

「えっ? まさか......」

「ああ、あいつもまあまあクズだよ」

「でも、前王やミルディンの姿勢を批判してたじゃない」

「ああ、でもあいつは政治なんかのことはわかっていなかった。 だから簡単にミルディンを滅ぼしたんだ」

「後顧《こうこ》の憂いをたつって事じゃないの」

「それは正しい、でも国の内情をより深く考えていれば、寛容な処罰で少なくともミルディン以外は許せた。 そうすれば国のダメージもずっと少なかっただろ」

「まあ、兵が分けられていなければ、他国の侵攻を止められたのかも......」

「問題はそれを指摘してくれるような側近も協力者もいないってことだ。 どれだけ優秀でも全てのことがわかる人間なんていない。 でかい国ならなおのこと、知識だけじゃなく人脈とその信頼も必要だった。 だから結局滅ぶしかなかったのさ」

「一人じゃ国なんてもの治めようもないものね......」

 そうアンナが自分に言い聞かせるようにいった。


「コウミどの、すまぬが貴公がこの国を統治してはくれぬか......」

 俺たちがアンカレスの王宮に招かれると、そうエントレス王がいった。

「それは無理だね。 俺はクズだし、二つの国は離れすぎているから、両方の統治は不可能だ。 それにグナトリアはヴァルヘッドに狙われている。 最悪両国とも狙われかねない」

「そうか...... 正直、わたしには王としての資質がない。 このままでは再びモンスターや他国の侵攻をうけ、この国を奪われかねない......」

 そう自身なさげに王はいった。

「王としての資質なんてどうでもいい。 あんたが恐れてるのは国民を危険にさらすことだろう」

「そうだ...... だから」

「少なくとも、ここにはあんたを捨てて逃げるような者はいない。 
その人たちのためにあんたがやるしかない」

「むう......」

「そうです! みな王のために自分のためにここにいる。 あなたが導いてくださいエントレス王!!」

 セーヌがそういうと、家臣たちがうなづいた。 それをみて王はうなづく。

「そうだな...... 嫌だなんだといってはおれぬ。 力がないなら他者にでもすがり、守らねば...... すまぬが力を貸してもらえるか」

「ああ、ギルドには貸しをつくったから冒険者をただで使える。 こちらから人材も貸しだそう」

 俺は王へとそういった。


「セーヌ、王のそばにいなくていいの?」

「ええ、アンカレスの民がギルドのおかげでかなり帰還して参りました。 そしてバストゥールの民や兵たちも加わり、かなりの人数になっております。 それよりも......」

 セーヌは俺の方をじっとみる。

「なに?」

「クズだの何だのいっていましたが、正直あなたからは何か得体のしれなさを感じます。 アンカレスに災いなきように監視も必要だと思いました」

「そうね。 私もそう思うわ。 そもそも、なにも話さなさすぎだわ......」

「ええ、全くです...... それにあの時も......」

 そう二人は笑いながら俺の愚痴を延々話していた。
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