イセカイトレーダー ~取引《トレード》で異世界に建国する~

曇天

文字の大きさ
58 / 66

第五十八話

しおりを挟む
「ここは城だったのか」

 今は瓦礫となり柱ぐらいしか残っていない。

 アンナはすたすたと奥へと進んでいく。

「おい、どこ行くんだ」

 アンナについて奥へと進んだ。

「ここに......」

 奥の行き止まりにいくと落ちた瓦礫を持ち上げた。  俺とマルキアは顔をみあわせ、それを手伝う。 

「これは......」

 瓦礫をのぞくと、石の地面がみえる。 アンナはその隙間にナイフを差し込みはずすと、地下への階段が現れた。

「行きましょう......」

 こちらをみずに地下へと進んでいく。

「アンナ......」

 そう問いかけようとするマルキアを俺は止め、無言のアンナについていった。

 地下へおり、暗いが真っ直ぐの通路を進む。 アンナが壁のランプにあかりをともす。

 そして大きな扉の前にたつ。 そこには大きな紋章が描かれている。 鍵穴はなく真ん中に六角形の穴がある。

「なにも聞かないのね......」

 アンナは足を止め背中ごしにそういった。

「いいたいのか?」

 そう俺が聞くと、少し沈黙がある。

「私は、昔、この国の王女メルディアンナだったの......」

「王女......」

「王女!? そういえばグナトリアには王女がいたと聞いた...... それがアンナだったのか」

 マルキアが驚いている。

「......そう。 私はその日、なぜか従者につれられて国を離れていた。 そして国が燃えたの......」

「それは、国が危険だと誰かが考えたからか」

「わからないわ...... でも突然、国から理由もなく連れ出されたのは覚えている。 そうそれはベインツ、あの男が王宮にきたその日の事だった」

「ベインツ!?」

「ええ、私も忘れていた。 いえ、思い出したくなかったのね」

「それでベインツはなぜ王宮に」

「王であるお父様に、この国にあるはずのものをいただきたいという話だった。 その時のあのベインツの恐ろしい顔は覚えているわ」

「この国にあるもの!?」

「ええ、それが何かは私もわからなかったけど、城の地下に閉ざされた扉があるのは知っていた。 鍵もなく開けられたこともないけど......」

「それがこれがその扉か...... それで王さまは渡さなかったんだな」

「ええ、それを拒否した。 そして国が燃えた」

「ということは、もしかして......」

 マルキアが考え込む。

「ヴァルヘッドが仕組んだのかもな...... ただそれは、ここになにかあるということか」

「でも扉には魔法がかけられているわ。 鍵がないと開けられない」
 
 そういって自分の首にかけていたペンダントをみた。
 
「それ確か運命の六角鍵それか......」

「ええ、国から離れるときこれを渡された。 運命を導いてくれる
古代の魔法がかかってるって...... そして、あなたにであった」

「古代の魔法か...... 俺たちがここにきたのも偶然じゃないのか......」
 
 アンナはペンダントを扉の穴に押しこんだ。

 すると鍵が光り、扉の紋様が青い光をはなった。

 ゴゴゴゴ......

 大きな扉がゆっくりと開いた。

 中は小さな部屋で六角形の柱の上に箱がおいてある。

「これは......」

 アンナが箱を開けると、青い宝石のようなものがおいてある。

「それ神界晶だろ......」 

 俺は取引《トレード》で調べる。 やはり前のと色は違うが神界晶だった。

「やっぱりそうだ」

「でもそれは初代女王コスモシアが作り出したとされる秘宝かも、この鍵と同じように......」

「秘宝......」

「コスモシアはものを交換する特異な力をもっていたという伝説があるの」

「そういや、最初あったときそんな話をしていたな。 それって取引《トレード》か......」

「わからないけど、その力をもって秘宝を作り出したという話、でもお父様は自由のための力だと伝わっていると、ベインツに渡すのは拒否した......」

(自由の力......)

 アンナがポケットからもうひとつの神界晶をとりだす。   

「一緒ね。 どういうことかしら、とりあえずこっちはあなたがもってて」 

 そういって赤い神界晶を渡してきた。

「ああ」

「こっちは私がもっておくわ」

「ベインツが欲しがってたのは、これか......」

 マルキアがそういう。

「おそらく魔王復活のための魔力にするためだったのね」

 俺たちは王宮からでる。

 ドゴオオン!!

 遠くで大きな音がしている。 周りの木々もざわざわしだした。

「なんだ!? なにが起こってる!!」
 
「あれ!!」 

 アンナが指差す。 町のほうで煙があがる。

「町だ!! 教われているのか!」

「まて! コウミどの! あれを!!」

 マルキアが指差す方をみると、モンスターたちが森を一気に走り町のほうへと向かっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...