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第六十四話
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ヴァルヘッドたち五国連合が敗走してから一週間、追撃にでたマルキア、シモンズ、セーヌ、ハイレンの部隊によって、すべての国は降伏した。
「それでどうすんだあの五か国、簡単に降伏したけどお前が統治するんだろ大陸一の巨大国家になるぞ!」
興奮ぎみにシモンズがいう。
「ん? そのまま不戦協定結んで外交樹立するだけだよ。 ヴァルヘッドもリミエレに戻したしな」
「なんだと!?」
シモンズは驚きの声をあげた。
「統治はしないんですか!? もしかしたらまた兵をあげるかもしれませんよ!!」
セーヌはそう聞いてきた。 ハクレイもうなづく。
「ああ、統治はしない。 支配したら他の国は自分たちもされると考えるだろ」
「確かに支配しなければ、少なくとも警戒は安らぎますね......」
リリンがうんうんと納得する。
「ああ、だから交易などもこちらが優位な交渉はしない。 支配しないのが建前だと思われかねないからな。 あと統治なんてめんどい」
「もう あきれても仕方ないわね...... それにしても、ケイオスはよく協力してくれたわよね」
アンナが聞くとケイオスは横を向いた。
「ふん、少なくともこの体をもとに戻してくれた恩ぐらいは返す。 幻覚の魔法ぐらい教えてやるぐらいはな」
「しかし、あの湖にいたファントムシェルの幻覚魔法で魔王を作り出すとはな」
マルキアがそういう。
「あれはファントムファクト。 実際には存在しないものを作り出し、あたかも本物のようなもの反応をする魔法だ。 ぶつかった音や感覚までもな」
ケイオスはそういった。
「ああ、だから実際にはなにも起こってない。 それを本物に見せるため、お前たちに隠れて魔法を使ってもらってた」
「ああ、私が隠れて使ったリフレクトもな。 それであの男はどうするつもりだ?」
「ベインツか...... アンナお前の国を滅ぼした仇敵でもある。 どうする?」
俺はあの時、ベインツをチリに変えたように、隠蔽の魔法で消えたように見せた。 今は牢屋に一時的にとらえている。
「そうねとくに何もないわ。 あいつを殺しても死んだものは戻らない...... なんて、そんな綺麗事をいうつもりはないけど、私が国になにもできなかったことがなかったことにできる訳じゃないし」
アンナはそう答えた。
「うん、まあアンナがいいならいいよ」
俺たちは一応の日常を取り戻した。
その日の夜、俺はローブをきて一人旧グナトリア王宮跡にいた。
「いるんだろ。 でてこいよ」
「......どうしてわかったんですか......」
砕けた柱の影からベインツが姿を現した。
「何となくだな...... それでこれが目的か」
俺はもうひとつの神界晶をポケットからみせた。
「......そうです。 よくお分かりですね」
「でもお前一人で俺と戦えると思ってるのか? 俺は魔王を操れるんだぞ」
「幻覚だということはわかっています......」
そう確信したようにいう。
「......それでも、お前一人で俺を倒すのは無理だろ」
「そうですね...... あなたの力はもはや個人で太刀打ちできるものではないことはわかっていますよ...... うおおおおおお!」
ベインツが声をあげるとおでこから角が生えてきた。
「その姿...... 魔人か!」
「神がお与えになってくれました!! さあ、その神界晶を神に返すのです!!」
そういうと、高速で近づいてくる。 魔力で作ったであろう黒い剣をふるってくる。
「うおっ!」
何とかかわし、赤爆球をぶつけると爆炎に包まれた。
「ふん!!」
だが、炎を剣で切り裂いてベインツはでてくる。
(やっぱ魔人相手はきつい。 でも早くしないと......)
「そんな攻撃では神の加護を受けた私には効きませんよ!! ひゃはははははは」
狂ったように笑うベインツに、俺はポケットから黒い玉を取りだして投げつけ横にとんだ。
「こんなもの!!」
その玉をベインツが斬りつけると、火花がはじけ、黒い霧のような魔力がベインツを包みこんだ。
「ぐわああああああ!! なんだこれは!! 魔力!! ぐあああああ!!!」
黒い魔力に包まれベインツは苦しんでいる。
「ああ、それは魔王ケイオスから奪った魔力だ。 アンナはお前のことを許したみたいだが、俺は許さん。 したことの報いは受けるべきだ。 苦しませたものたちの分、お前も苦しめ」
「ぐおおおおおお!! 神よ!! お力を!! 神よ!!! お答えくださいぃぃい! な...... ぜです!! か、か...... みぃぃぃぃぃ......」
黒い魔力が消えると、ベインツは炭のように真っ黒になり、倒れるとチリとなって消えた。
「コウミ!!」
向こうから俺の方にアンナが走ってくる。
そのとき俺の周りが突然輝きだした。
「それでどうすんだあの五か国、簡単に降伏したけどお前が統治するんだろ大陸一の巨大国家になるぞ!」
興奮ぎみにシモンズがいう。
「ん? そのまま不戦協定結んで外交樹立するだけだよ。 ヴァルヘッドもリミエレに戻したしな」
「なんだと!?」
シモンズは驚きの声をあげた。
「統治はしないんですか!? もしかしたらまた兵をあげるかもしれませんよ!!」
セーヌはそう聞いてきた。 ハクレイもうなづく。
「ああ、統治はしない。 支配したら他の国は自分たちもされると考えるだろ」
「確かに支配しなければ、少なくとも警戒は安らぎますね......」
リリンがうんうんと納得する。
「ああ、だから交易などもこちらが優位な交渉はしない。 支配しないのが建前だと思われかねないからな。 あと統治なんてめんどい」
「もう あきれても仕方ないわね...... それにしても、ケイオスはよく協力してくれたわよね」
アンナが聞くとケイオスは横を向いた。
「ふん、少なくともこの体をもとに戻してくれた恩ぐらいは返す。 幻覚の魔法ぐらい教えてやるぐらいはな」
「しかし、あの湖にいたファントムシェルの幻覚魔法で魔王を作り出すとはな」
マルキアがそういう。
「あれはファントムファクト。 実際には存在しないものを作り出し、あたかも本物のようなもの反応をする魔法だ。 ぶつかった音や感覚までもな」
ケイオスはそういった。
「ああ、だから実際にはなにも起こってない。 それを本物に見せるため、お前たちに隠れて魔法を使ってもらってた」
「ああ、私が隠れて使ったリフレクトもな。 それであの男はどうするつもりだ?」
「ベインツか...... アンナお前の国を滅ぼした仇敵でもある。 どうする?」
俺はあの時、ベインツをチリに変えたように、隠蔽の魔法で消えたように見せた。 今は牢屋に一時的にとらえている。
「そうねとくに何もないわ。 あいつを殺しても死んだものは戻らない...... なんて、そんな綺麗事をいうつもりはないけど、私が国になにもできなかったことがなかったことにできる訳じゃないし」
アンナはそう答えた。
「うん、まあアンナがいいならいいよ」
俺たちは一応の日常を取り戻した。
その日の夜、俺はローブをきて一人旧グナトリア王宮跡にいた。
「いるんだろ。 でてこいよ」
「......どうしてわかったんですか......」
砕けた柱の影からベインツが姿を現した。
「何となくだな...... それでこれが目的か」
俺はもうひとつの神界晶をポケットからみせた。
「......そうです。 よくお分かりですね」
「でもお前一人で俺と戦えると思ってるのか? 俺は魔王を操れるんだぞ」
「幻覚だということはわかっています......」
そう確信したようにいう。
「......それでも、お前一人で俺を倒すのは無理だろ」
「そうですね...... あなたの力はもはや個人で太刀打ちできるものではないことはわかっていますよ...... うおおおおおお!」
ベインツが声をあげるとおでこから角が生えてきた。
「その姿...... 魔人か!」
「神がお与えになってくれました!! さあ、その神界晶を神に返すのです!!」
そういうと、高速で近づいてくる。 魔力で作ったであろう黒い剣をふるってくる。
「うおっ!」
何とかかわし、赤爆球をぶつけると爆炎に包まれた。
「ふん!!」
だが、炎を剣で切り裂いてベインツはでてくる。
(やっぱ魔人相手はきつい。 でも早くしないと......)
「そんな攻撃では神の加護を受けた私には効きませんよ!! ひゃはははははは」
狂ったように笑うベインツに、俺はポケットから黒い玉を取りだして投げつけ横にとんだ。
「こんなもの!!」
その玉をベインツが斬りつけると、火花がはじけ、黒い霧のような魔力がベインツを包みこんだ。
「ぐわああああああ!! なんだこれは!! 魔力!! ぐあああああ!!!」
黒い魔力に包まれベインツは苦しんでいる。
「ああ、それは魔王ケイオスから奪った魔力だ。 アンナはお前のことを許したみたいだが、俺は許さん。 したことの報いは受けるべきだ。 苦しませたものたちの分、お前も苦しめ」
「ぐおおおおおお!! 神よ!! お力を!! 神よ!!! お答えくださいぃぃい! な...... ぜです!! か、か...... みぃぃぃぃぃ......」
黒い魔力が消えると、ベインツは炭のように真っ黒になり、倒れるとチリとなって消えた。
「コウミ!!」
向こうから俺の方にアンナが走ってくる。
そのとき俺の周りが突然輝きだした。
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