8 / 49
第八話『クランチ一家との接触──裏社会の扉』
しおりを挟む
細い路地を進み裏通りにでると、この街のもうひとつの真実があった。 そこでは大勢の力なく横たわった人や痩せ細り座ったものたちがいる。
「これは......」
「これがこの領地のもう一面です。 他の街にもスラムのような場所はありますが、ここほどはひどくはない。 どこからか連れてこられた者や、流れ者、犯罪者たちが多くいます」
そう悲しげにイオリシアは言う。
「おい...... お前ら金持ってるな。 よこせ」
そう窪んだ頬をした覇気のないボロボロの服の男がナイフをもち、こちらによろよろと近づく。
「悪いが何ももっていない」
「それなら腰にある剣でも鎧でも服でも、なんでもいい......」
そう言った男の目は虚ろで、怒りや恐怖も見えない。
(もうどうにでもなれって感じだな)
俺は剣を持つ。 男は動じず前に進む。
「ほれ」
剣を男に渡した。
男は無言でそれを掴むと何もいわずよろよろと去っていった。
「......同情ですか」
「そうだな。 かわいそうだと思った。 それはいけないことか」
「それは相手への侮辱にもなるのでは」
「かもな...... それでもかわいそうだと思うのは自然なことだ。 同情がいいことだと思わないが、同情しないで見捨てることが良いことでもないだろ。 どちらが良いとかはないなら、俺のしたいようにするだけだ」
「......あの男、あの剣でなにするかわかりませんよ」
「問題ないさ。 ただあれは刃を丸めてた模造剣だ。 殴るぐらいしか使えん。 あの男の体力じゃ、まともに振れやしない。 どうせ売って金に変えるだろ」
「模造剣、そんなもの持ってたのですか」
驚いたようにイオリシアは言った。
「ああ、護身用の短剣は持ってる」
腰につけた短剣を見せた。
(長い剣だと、もし拡張した場合、俺までダメージがあるからな。 あの洞窟のあと、身体中切り傷だらけだったし...... おかげで人に見せられない、見せる相手もいないけど......)
「それで、どこにクランチ一家がいるんだ」
「この先に、彼らが使っているアジトがあるはず......」
「全員倒して、証言させるほうが早いか」
「それでは、口を割らないと思います。 なにせ領主と通じているのです。 奴隷オークションをすると聞いていますから、彼らと話をしてそれに参加しましょう」
「オークションか...... イオリシアは帰ったほうがいいんじゃないか。 危ないぞ」
「......覚悟の上です。 私も剣術の心得と魔法を使えますから、ご心配にはおよびません」
「魔法...... 具体的になにができるんだ」
「氷を撃ち出したり、防御壁を作ったり、治療もできます」
「すごいな......」
「......カイトさま、あれです」
他の建物から隠れてみると、奥に大きな建物がある。 その前には人相の悪い男たちが背を丸めて周囲を見ている。
「あれがアジトか...... でも話をするってなにを話す?」
「私に考えがあります」
「なにもんだ......」
見張りの男たちが、俺たちを囲んだ。
俺はイオリシアを連れて、アジトの前に来ていた。
「ああ、クランチに用があってきた」
「うちのボスに...... お前みたいなガキがか」
「いいから通してくれ、仕事の話だ」
「どうする?」
「こんなガキじゃ、襲撃もできねえだろ」
「だな。 まあいい、こい」
一人に連れられて、建物の中へとはいった。 そこには大勢の手下と思われる男たちがカードゲームに興じて酒をあおっている。
階段を登り、上の階へと向かう。 ある部屋の前にたつ。
「ボス...... 変なガキが仕事できたといっていますが」
「変なガキ、追い返せ」
「それが、上玉の女を連れてまして......」
「......中に入れ」
俺たちは中にはいる。 そこには強面の男がソファーに座っていた。 その周りに手下たちがいる。
(こいつがクランチか。 ずいぶん警備が厳重だな。 恨みを買ってるだろうし、裏社会で生きていても自由なんかないんだな)
「ほう......」
俺の後ろのイオリシアを見ている。
「それでなんのようだ」
「俺はカイト、あんたが奴隷オークションをしてるって噂があってな」
俺がそういうと、その目を見開く。
「......どこでそれを......」
「蛇の道は蛇っていうだろ...... それより、こいつはどうだ? 没落貴族の令嬢だ。 俺が貴族の親から買った。 奴隷として売りたい」
「......ふむ、お前のようなガキが貴族から買った......」
不審そうにクランチはそのギョロッとした目を向けた。
(嘘とはいえ、不快な気持ちだ......)
「俺は冒険者だ。 金ならある......」
そう言うと、俺は袋に入った金をテーブルにおいた。
「すげぇ......」
手下の一人が声を出した。
「確かにその体の傷から見て、それなりの修羅場を潜ったようだな」
俺の体を見てクランチは葉巻に火をつけた。
「それだけ稼げるやつが、わざわざ違法の奴隷に手を出すのか......」
「この仕事はいつも死と隣り合わせだ。 この傷だ。 正直やめたい。 残りの人生を遊んで暮らすためには、もっと金がいる。 あんたならわかるだろ」
「......まあな、金はいくらあっても、ありすぎることはないからな。 いいだろう。 ただ信用しているわけじゃないからな。 こっちのやつをつける。 それでいいか」
「かまわない」
商談がまとまり、オークションの当日までクランチの手下がつくことになった。
「これは......」
「これがこの領地のもう一面です。 他の街にもスラムのような場所はありますが、ここほどはひどくはない。 どこからか連れてこられた者や、流れ者、犯罪者たちが多くいます」
そう悲しげにイオリシアは言う。
「おい...... お前ら金持ってるな。 よこせ」
そう窪んだ頬をした覇気のないボロボロの服の男がナイフをもち、こちらによろよろと近づく。
「悪いが何ももっていない」
「それなら腰にある剣でも鎧でも服でも、なんでもいい......」
そう言った男の目は虚ろで、怒りや恐怖も見えない。
(もうどうにでもなれって感じだな)
俺は剣を持つ。 男は動じず前に進む。
「ほれ」
剣を男に渡した。
男は無言でそれを掴むと何もいわずよろよろと去っていった。
「......同情ですか」
「そうだな。 かわいそうだと思った。 それはいけないことか」
「それは相手への侮辱にもなるのでは」
「かもな...... それでもかわいそうだと思うのは自然なことだ。 同情がいいことだと思わないが、同情しないで見捨てることが良いことでもないだろ。 どちらが良いとかはないなら、俺のしたいようにするだけだ」
「......あの男、あの剣でなにするかわかりませんよ」
「問題ないさ。 ただあれは刃を丸めてた模造剣だ。 殴るぐらいしか使えん。 あの男の体力じゃ、まともに振れやしない。 どうせ売って金に変えるだろ」
「模造剣、そんなもの持ってたのですか」
驚いたようにイオリシアは言った。
「ああ、護身用の短剣は持ってる」
腰につけた短剣を見せた。
(長い剣だと、もし拡張した場合、俺までダメージがあるからな。 あの洞窟のあと、身体中切り傷だらけだったし...... おかげで人に見せられない、見せる相手もいないけど......)
「それで、どこにクランチ一家がいるんだ」
「この先に、彼らが使っているアジトがあるはず......」
「全員倒して、証言させるほうが早いか」
「それでは、口を割らないと思います。 なにせ領主と通じているのです。 奴隷オークションをすると聞いていますから、彼らと話をしてそれに参加しましょう」
「オークションか...... イオリシアは帰ったほうがいいんじゃないか。 危ないぞ」
「......覚悟の上です。 私も剣術の心得と魔法を使えますから、ご心配にはおよびません」
「魔法...... 具体的になにができるんだ」
「氷を撃ち出したり、防御壁を作ったり、治療もできます」
「すごいな......」
「......カイトさま、あれです」
他の建物から隠れてみると、奥に大きな建物がある。 その前には人相の悪い男たちが背を丸めて周囲を見ている。
「あれがアジトか...... でも話をするってなにを話す?」
「私に考えがあります」
「なにもんだ......」
見張りの男たちが、俺たちを囲んだ。
俺はイオリシアを連れて、アジトの前に来ていた。
「ああ、クランチに用があってきた」
「うちのボスに...... お前みたいなガキがか」
「いいから通してくれ、仕事の話だ」
「どうする?」
「こんなガキじゃ、襲撃もできねえだろ」
「だな。 まあいい、こい」
一人に連れられて、建物の中へとはいった。 そこには大勢の手下と思われる男たちがカードゲームに興じて酒をあおっている。
階段を登り、上の階へと向かう。 ある部屋の前にたつ。
「ボス...... 変なガキが仕事できたといっていますが」
「変なガキ、追い返せ」
「それが、上玉の女を連れてまして......」
「......中に入れ」
俺たちは中にはいる。 そこには強面の男がソファーに座っていた。 その周りに手下たちがいる。
(こいつがクランチか。 ずいぶん警備が厳重だな。 恨みを買ってるだろうし、裏社会で生きていても自由なんかないんだな)
「ほう......」
俺の後ろのイオリシアを見ている。
「それでなんのようだ」
「俺はカイト、あんたが奴隷オークションをしてるって噂があってな」
俺がそういうと、その目を見開く。
「......どこでそれを......」
「蛇の道は蛇っていうだろ...... それより、こいつはどうだ? 没落貴族の令嬢だ。 俺が貴族の親から買った。 奴隷として売りたい」
「......ふむ、お前のようなガキが貴族から買った......」
不審そうにクランチはそのギョロッとした目を向けた。
(嘘とはいえ、不快な気持ちだ......)
「俺は冒険者だ。 金ならある......」
そう言うと、俺は袋に入った金をテーブルにおいた。
「すげぇ......」
手下の一人が声を出した。
「確かにその体の傷から見て、それなりの修羅場を潜ったようだな」
俺の体を見てクランチは葉巻に火をつけた。
「それだけ稼げるやつが、わざわざ違法の奴隷に手を出すのか......」
「この仕事はいつも死と隣り合わせだ。 この傷だ。 正直やめたい。 残りの人生を遊んで暮らすためには、もっと金がいる。 あんたならわかるだろ」
「......まあな、金はいくらあっても、ありすぎることはないからな。 いいだろう。 ただ信用しているわけじゃないからな。 こっちのやつをつける。 それでいいか」
「かまわない」
商談がまとまり、オークションの当日までクランチの手下がつくことになった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる