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第四十九話 最終話『選択と幸福の終焉』
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「なぜ、ヴェルザグは消えてしまったのですか?」
ヴェルザグがいなくなった場所を見てイオリシアは聞いた。
「返還した生命力が戻ったから、体が耐えられなかったんだと思う。 人にはあり得ない生命力だったからな」
「過ぎた力で自分を滅ぼしたのか......」
リゼルダインは哀れみを向けた。
「ですが、元は奴隷ゆえの苦痛が彼を作り上げた。 それがなにもなく消えてしまったのはあまりと言えばあまり......」
イオリシアは目を伏せる。
「ああ、だがあいつは人を捨てていたが、最後に人に戻った。 それが幸せかはわからないが、人として死ねたんだ......」
その時、部屋にディルセアとガーランドに背負われたレンドが来た。
「しっかりしなさいよ」
「......カイトさん」
ディルセアがレンドに言った。
「王子、もう終わりましたかね」
「ああ、カイトがヴェルザグを倒してくれた。 それでカイト、オールバンクをお前はどうするつもりだ......」
そうリゼルダインは俺の目を見据え、イオリシアも不安げに見つめた。
「......そうだな」
「なにオールバンクがどうしたの?」
不思議そうなディルセアとレンドに俺は事情を話した。
「ええ!? オールバンクを手に入れた!」
「すごいじゃない!!」
二人は驚いた。
「ああ......」
「なによその反応、なんだって叶うのよ」
「そうっすよ!」
「......まずはオールバンクと話そう。 オールバンクみんなに聞こえるようにできるか」
『はい、可能です』
そう虚空から声がする。
「な、なに!? 声がどこからかする!」
「頭の中か!」
レンドたちが驚いている。
「お前はなんなんだ」
『私は人間の欲望と嘆きより生まれたものです』
「人の欲望と嘆き......」
『人は自分の行った行為に対価を求めます。 自分が行った行為と対価が見合ってないと、怒り、嘆き、悲しむ、そんな思いから私は生まれた存在......』
「対価を与える存在......」
リゼルダインが考え込む。
「それって神さまってこと?」
ディルセアがいうとオールバンクは答える。
『神、悪魔、精霊、さまざまな呼び方をします』
「そうだろうな。 対価で欲しいものと交換をする存在なら、人にとっては神のようなものだ」
ガーランドがうなづく。
「すごいっすよ! それが対価なしで使えるなんて! 貧困も戦争もモンスターもなくせる! まさに神にカイトさんはなる!」
興奮気味にレンドは答えた。
「なられるのですか......」
イオリシアのその目はなにかを訴えかけるようだった。
(確かに、この力は無限だ。 長く世界を見てきた、ひどいことや辛いこと、それを正せる。 不死になればこの世界を、いやもとの世界たって、だが......)
「オールバンク、お前を消せるか」
「なっ!?」
「なに言ってるのよ!」
レンドたちは驚いている。
「確かに神にでもなれるんだろう。 ただ長く生きれば、俺がヴェルザグみたいに歪んでしまうかもしれない。 それはもう俺じゃない」
「そんなことないっすよ! カイトさんはカイトさんです!」
「......仮にならなくても、俺がこの世界を正しい方向に導けたとして、それは人の望む選択のない世界だ。 世界を支配していることに変わりはない。 俺はそんなことをしたくない。 自分の選択で生きられるべきだ」
「それは......」
「それがあなたの選択ですか。 この世界を幸福へと導ける可能性を捨てるのですか」
イオリシアは真剣に俺の目をみる。
「自分の幸福は自分しかわからない。 人に与えられた幸せはどれ程のものを得られたとしても偽りだと思う。 幸せになりたければ自分で選択するしかない」
「......そうだな。 私もそう思う」
リゼルダインが静かに言うと、ガーランドもうなづいた。
「......そうね」
「そうっすね」
「やはり、あなたは私の思った通りの人でした」
そうイオリシアは微笑んだ。
「すまないが、オールバンク、消えてもらえるか」
『はい、わかりました。 しかし膨大な量の対価が私に蓄積されています。 それをなにかに返還しないと消えられません』
「なにか...... そうだな。 それならほんの少しの幸せを、この世界に分け与えてくれ、できるか」
『わかりました...... それでは』
オールバンクの声が途切れると、遺跡の天井を光の柱が突き破り、光が空に四散していく、俺たちには仄かな光が雪のように舞い降りた。 この光はきっと世界の全てに届くのだろう。
「なんか、暖かいね」
「ああ、傷の痛みが引いた」
「心から暖まるようだ」
「おそらくこれがほんの少しの幸せなのだろうな」
「カイトさま...... これでよかったのです」
「ああ」
イオリシアがそう言ったとき、俺は考えていた。
俺がこの世界に来たのは、ヴェルザグの望みだったのかもしれない。 だが同時に、この世界がほんの少しの幸せを求め、俺を選んだのだ。 その答えを選び取るために──
ヴェルザグが求めた永遠は、虚しく崩れ去った。 俺たちが選んだのは、ただ一瞬の温もり。 それこそが、この世界に必要な答えだった。
──ほんの少しの幸せが、永遠よりも尊いことを俺たちは知った──
ヴェルザグがいなくなった場所を見てイオリシアは聞いた。
「返還した生命力が戻ったから、体が耐えられなかったんだと思う。 人にはあり得ない生命力だったからな」
「過ぎた力で自分を滅ぼしたのか......」
リゼルダインは哀れみを向けた。
「ですが、元は奴隷ゆえの苦痛が彼を作り上げた。 それがなにもなく消えてしまったのはあまりと言えばあまり......」
イオリシアは目を伏せる。
「ああ、だがあいつは人を捨てていたが、最後に人に戻った。 それが幸せかはわからないが、人として死ねたんだ......」
その時、部屋にディルセアとガーランドに背負われたレンドが来た。
「しっかりしなさいよ」
「......カイトさん」
ディルセアがレンドに言った。
「王子、もう終わりましたかね」
「ああ、カイトがヴェルザグを倒してくれた。 それでカイト、オールバンクをお前はどうするつもりだ......」
そうリゼルダインは俺の目を見据え、イオリシアも不安げに見つめた。
「......そうだな」
「なにオールバンクがどうしたの?」
不思議そうなディルセアとレンドに俺は事情を話した。
「ええ!? オールバンクを手に入れた!」
「すごいじゃない!!」
二人は驚いた。
「ああ......」
「なによその反応、なんだって叶うのよ」
「そうっすよ!」
「......まずはオールバンクと話そう。 オールバンクみんなに聞こえるようにできるか」
『はい、可能です』
そう虚空から声がする。
「な、なに!? 声がどこからかする!」
「頭の中か!」
レンドたちが驚いている。
「お前はなんなんだ」
『私は人間の欲望と嘆きより生まれたものです』
「人の欲望と嘆き......」
『人は自分の行った行為に対価を求めます。 自分が行った行為と対価が見合ってないと、怒り、嘆き、悲しむ、そんな思いから私は生まれた存在......』
「対価を与える存在......」
リゼルダインが考え込む。
「それって神さまってこと?」
ディルセアがいうとオールバンクは答える。
『神、悪魔、精霊、さまざまな呼び方をします』
「そうだろうな。 対価で欲しいものと交換をする存在なら、人にとっては神のようなものだ」
ガーランドがうなづく。
「すごいっすよ! それが対価なしで使えるなんて! 貧困も戦争もモンスターもなくせる! まさに神にカイトさんはなる!」
興奮気味にレンドは答えた。
「なられるのですか......」
イオリシアのその目はなにかを訴えかけるようだった。
(確かに、この力は無限だ。 長く世界を見てきた、ひどいことや辛いこと、それを正せる。 不死になればこの世界を、いやもとの世界たって、だが......)
「オールバンク、お前を消せるか」
「なっ!?」
「なに言ってるのよ!」
レンドたちは驚いている。
「確かに神にでもなれるんだろう。 ただ長く生きれば、俺がヴェルザグみたいに歪んでしまうかもしれない。 それはもう俺じゃない」
「そんなことないっすよ! カイトさんはカイトさんです!」
「......仮にならなくても、俺がこの世界を正しい方向に導けたとして、それは人の望む選択のない世界だ。 世界を支配していることに変わりはない。 俺はそんなことをしたくない。 自分の選択で生きられるべきだ」
「それは......」
「それがあなたの選択ですか。 この世界を幸福へと導ける可能性を捨てるのですか」
イオリシアは真剣に俺の目をみる。
「自分の幸福は自分しかわからない。 人に与えられた幸せはどれ程のものを得られたとしても偽りだと思う。 幸せになりたければ自分で選択するしかない」
「......そうだな。 私もそう思う」
リゼルダインが静かに言うと、ガーランドもうなづいた。
「......そうね」
「そうっすね」
「やはり、あなたは私の思った通りの人でした」
そうイオリシアは微笑んだ。
「すまないが、オールバンク、消えてもらえるか」
『はい、わかりました。 しかし膨大な量の対価が私に蓄積されています。 それをなにかに返還しないと消えられません』
「なにか...... そうだな。 それならほんの少しの幸せを、この世界に分け与えてくれ、できるか」
『わかりました...... それでは』
オールバンクの声が途切れると、遺跡の天井を光の柱が突き破り、光が空に四散していく、俺たちには仄かな光が雪のように舞い降りた。 この光はきっと世界の全てに届くのだろう。
「なんか、暖かいね」
「ああ、傷の痛みが引いた」
「心から暖まるようだ」
「おそらくこれがほんの少しの幸せなのだろうな」
「カイトさま...... これでよかったのです」
「ああ」
イオリシアがそう言ったとき、俺は考えていた。
俺がこの世界に来たのは、ヴェルザグの望みだったのかもしれない。 だが同時に、この世界がほんの少しの幸せを求め、俺を選んだのだ。 その答えを選び取るために──
ヴェルザグが求めた永遠は、虚しく崩れ去った。 俺たちが選んだのは、ただ一瞬の温もり。 それこそが、この世界に必要な答えだった。
──ほんの少しの幸せが、永遠よりも尊いことを俺たちは知った──
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