冒険者ギルド始めました!

曇天

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第九話

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「ご依頼の品こちらでよろしいですか?」

 私はアークライトの原石を机に並べる。
 
「まあ! まあ! なんてこと! こんなにアークライトの原石を見つけてくださるなんて!」

 ルネールさんは驚いて声をあげると、机の上の原石をいとおしそうに見ている。 私は渡された依頼料を受け取り数える。

「こちら依頼料金いただきました! では全てお持ちください!」

「い、いえ、全てなんてその額ではいただけませんわ! ミイエ」

 ミイエと呼ばれた女性はうなづくと、鞄より袋を出した。 

「では、こちらを」

 そういってルネールさんたちは袋を机に置くと、嬉しそうに雑談しながら帰っていった。 それを見送ってペイスと二人でお茶にする。

「やったね! 依頼料プラスこれ!」

 机におかれた袋をたたくと、じゃらじゃらと音がした。

「ええ、ラッキーですね。 では歳費の記入があるので」

 袋をペイスがあけると、その手が止まった。

「ん? どした?」

「こ、これ、全て白金貨ですよ!」

「白金貨、確か金貨の上だよね...... ということは!」

 その金額は100万にもなった。

「ひ、100万...... ど、どうしよう、金庫、金庫買わないと!」

「ち、ちょっと落ち着きましょう。 落ち着いて金庫をかいましょう」

 二人であわてふためき、わたわたする。 そしてしばらくして落ち着いた。

「ま、まあ、とりあえず当面の運転資金は確保できました」

「そうだね! こんなにあるもんね...... いや最悪だ! 月末にギルドに半分持ってかれる! 隠しとこうか!」

「ダメですよ! ばれたら犯罪者ですよ!」

「く、くぅ、しかたない...... 断腸の思いで諦めるか」
  
「あの、だったらそのしっかり抱き締めてる袋を返してください」

 ペイスは私がぎゅっと抱いていた袋を非情にも持っていった。

「......しかたない、切り替えるぅ」

「涙目でこちらをみないでください。 心が痛むから...... しかたないんですよ」  

「うー、わかった」 

 その時ドアがノックされる。 出ると中年の男の人がいた。

「あのすまんが、ここがなんでも依頼を受けてくれるって店かな」

「ええ! そうです! 冒険者の店です。 まあ中へ!」 

 席に招くと、男の人はイスにすわり、部屋を見ている。

「二人だけかい?」

「ええ」
  
 そう答えると、男の人はがっかりしたようだった。

(まあかよわそうなかわいい女の子二人だけだと、不安なのはしかたないか)

「ですが、私たちはもう一人と一緒にコアモンスターを二体倒していますよ」 

「それは聞いてはいるが、遺跡絡みだとな......」 

 いいづらそうにおじさんはいいよどんだ。 
 
「遺跡? コアモンスターを倒せと、それはさすがに」

「いやそこまでは...... 俺はクローグ、グエスクにすんでいるんだが元漁師でね。 本当はこの町の西にあるワーゼンの村出身なんだが、漁ができなくなり、グエスクにすんでいるんだ」 

「ワーゼンは漁師町でしたからね」

 ペイスがお茶を運んでそういった。

「ああ、だがモンスターの出現で漁ができなくなってな。 ほとんどの村の者が移り住むしかなくなったんだ......」

 苦悶の表情でクローグさんはいった。

「それで私たちに依頼って?」

「実は元々海にはモンスターがいたんだが、それを俺たちの村の奥にある遺跡が守ってくれていたんだ」

「遺跡が守る?」

「正確には遺跡の前の台座に奉られてた宝玉だ。 それがモンスターの接近を阻止していたらしいんだが、数年前地震と津波でその宝玉が遺跡に流れたらしい」

「それ以来モンスターが増えたと」

「うむ、元に戻そうと俺たちも遺跡までいたんだが、遺跡の中間でモンスターが侵入していて入れなかったんだ」

「おそらく台座に宝玉があって発動する魔法のようなものでは?」

 ペイスがそういう。

「なるほど、それを台座に戻せばいいってことですね」

「だ、だが二人なんて、俺たちは三十人でいって逃げ帰ってきたんだ。 やはり、頼むのは......」

「その話聞かせてもらった!」

 ドアが勢いよくあき、カンヴァルが大きな荷物を背負って現れた。

「カ、カンヴァル!?」

「ああ、ヒカリそれあたしたちで解決しようじゃないか!」

 そう宣言する。

「だ、だれかね」

「ええ、コアモンスターを倒したときの仲間ですけど」

「そうか、そんな三人なら...... 一応逃げ帰っても依頼料は支払うから一応いってみてくれるか、ムリならすぐ引き返してもかまわない」

 ペイスと顔を見合わせうなづく。

「わかりました! 私たちがやってみます!」

 そうその依頼を受けることにした。


「カンヴァルなんでここに?」

「あれだよ! あれメタルクラブの加工したんだよホレ」

 そういうと大きな鞄を床におき、中から胸当てやすね当て、盾、小手などをとりだす。

「加工できたんだ!」
 
「ああ、かなり固い素材で熱量がかなり必要だったから苦労した。 ちょっとだけ不格好だけど防御と強度はかなりのもんだ。 ペイスにはスタッフ胸当てや各防具、ヒカリは防具とナイフとロングソードも作ってきた」

「あんがと!! でカンヴァルもついてくるの?」

「ああ、前からワーガンの村の遺跡には興味があったけど、村の聖域だから、村人以外入れなかったんだ。 絶対いい素材があるはずだ」

「カンヴァルかいてくれると心強いです」

 ペイスが笑顔でそういう。

「じゃあ! さっそくいってみよう!」


 私たちはワーガン村へと立ち寄る。 そこは打ち捨てられた廃墟のようになっており、人の気配はしない。

「何か数年の割には、家とかボロボロじゃない?」

「人がすまなくなると劣化が速いですしね」

 ペイスが悲しそうにそういった。

「クローグさんは仲間をつれてついて一緒にくるといってたけど、置いてきてよかったかな」

「守る人が多くなると余計に危険ですから」

「それより、遺跡はどこだ?」

 カンヴァルはキョロキョロと辺りを見回している。
 
「確か村の北側にある海岸を先にいったところにある小島だって」 

 私たちは海岸に向かって村をあるいていると、人ほどもある大きな岩が道を塞いでいる。

「ん? 道が塞がってる」

「まあ、ぶっ壊していこう!」

 カンヴァルがハンマーをふり砕こうとすると岩が動き出し、ハンマーをかわした。

「モンスターです!!」

 ペイスがそういうと、岩のしたからハサミが出て振り下ろしてきた。 それを剣で防ぐ。

「この剣なら切れるか!」

 ハサミを弾き、そのまま岩を上から切ると岩はまっぷたつになった。 カンヴァルもハンマーで岩のモンスターを砕いた。

「切れ味もすごいね! このメタルクラブの剣!」

「だろ! 並みのモンスターなら刃こぼれひとつしないぞ! このハンマーもな!」

 ヴァルカンは背丈もある黒い大きなハンマーに持たれ胸を張る。

 私たちは海岸にでて、砂浜を歩く。

「あっ、あれです。 あの小さな島」

 ペイスが指差す方に砂浜から続く細い道のさきに、小さな島がある。 私たちはたえず襲ってくるモンスターを蹴散らしながら、島へと上陸した。

「あれかな」

 島の真ん中に遺跡らしきものがある。 その前に石でできた柱が円状に八本立っていた。 その真ん中に四角の石の台座があり、その真ん中にへこんだ穴があった。

「ここに宝玉があったのか」

「みたいですね。 それが津波に流されて遺跡のなかに」

 私とペイスが話していると、カンヴァルがモンスターをさがしている。

「まあ、入ってみればわかるだろ。 倒したモンスターじゃ、いい素材にならないからさっさといこう」

 遺跡に入ると、石の壁が続いている。

「カニの遺跡とつくりは同じようだね」

「同じ人たちが建てたのでしょうか?」

「そんなことより、モンスターだ! モンスターを狩るぞ! 素材を手に入れるんだ!」

 カンヴァルはどんどん先にいく。

「カンヴァル! あぶないって!」

「ええ、ですけど、私の魔法もかけてますし、少しは大丈夫かと」

「ああ、あたらしく覚えたっていうなんだっけ?」

「【マテリアルディフェンス】物理耐性の魔法です」

「確かに身体強化のストレングスを使ってたから覚えたのか...... 私はまだサンダーボルト以外覚えてない......」 

「まあ、魔力を使えば覚えていきますから、ヒカリは銃で魔力を使っていますので、すぐ覚えると思います」

 ペイスはそうフォローしてくれる。

(ペイスはいいこだ)

「きたぞ!!」 

 先に進むカンヴァルが叫ぶ。 すぐに駆けつけると通路の角から先に大きな青い蛇が三体見えた。

「あいつはアクアスネーク。 あいつの皮は腐食に耐性がある。 欲しい! ただ魔法をつかってくる」

「モンスターが魔法使うの!?」

「知らなかったですか? そういえば今まで魔法を使うモンスターはであってませんね」

 驚く私にペイスがそういった。

「なら、さっさと倒した方がいいね」

 私は角から出ると銃を撃つ。 正確に三体の眉間に穴を空ける。

「すこいな! 三体とも一撃か!」

「スキルを使えば正確に撃てるようになったよ」

 カンヴァルはさっさとアクアスネークを解体し始める。

(今の......)

「どうしましたペイス?」
 
「なんか今魔法で倒すか、銃で倒すか迷ってたんだけど、撃つとき銃がいつもと違うような感じがして...... まあ、気のせいか」

 何か気になるがとりあえず先にいくことにした。 それからもモンスターがでてはカンヴァルは素材を確保する。

「もうカンヴァル持てないよ。 少し置いてきなよ」

「いやだ! 持って帰る! これがあればいろんな効果の装備が作れる!」

「まあ、仕方ないですね。 持っていきましょう」

「さすがペイスはわかってる!」

 階段があり、下へと降りると、そこはとても大きな部屋で奥まで続いている。 そして部屋のほとんどが水に浸かっている。

「どうやら津波のときの海水がたまったみたいだね」

「あたし泳げないんだけど......」

 カンヴァルはそういって後ずさりしている。

「でも床は見えていますし、そこまでの深さでは無さそうですね」

「うん、ちょっといってみよう」

 私が足をつけると、だいたい腰の辺りに水がきた。

「ちょっと冷たいけど、まあ進めるね」

「ですね。 モンスターも視認できそうです」

 ペイスも水につかる。
 
「ええ!! いくつもり!?」 

 カンヴァルは不服そうにいう。

「当然でしょ、私たちは宝玉をさがしにきたんだから、まあカンヴァルはそこで待っててくれてもいいよ」

「ま、待てよ! 行くよ! ひゃ、冷た!!」

 いやがりながらもカンヴァルはついてきた。
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