異世界アパートを取り戻す! ~魔王と俺の大冒険~

曇天

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第五十七話

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「う、う、寒いところを抜けたらまた寒い......」 

 俺とディン、ティンクル、グラディスは魔族大陸北のワークデイズにきていた。

「う...... う」  

「大丈夫ですか? お二人とも」

 そういうティンクルの翼でかばわれながら、ディンと俺は凍えながら白い雪の降りしきるなか震え歩いていた。

「ね、ネメイオに転移させてもらえばよかった......」

「て、転移場所の指定でミスると、石や深海の中に飛ばされて即死だぞ」

 俺にディンがいった。

(やはり、願いを使って転移の魔法でも覚えるか......)

 そう思っていると、グラディスが足を止めた。

「白い城だ」

 目の前には雪のように白い城が現れた。

「ああ、アマラセウスさまの居城だ......」

 懐かしそうにグラディスが話した。

「行こうぜ」

「まて!」

 ガン!

 グラディスが止めるのと同時に俺は何か見えない壁にぶつかる。

「いてえ!!」

「ここは結界が張られている...... アマラセウスさまがなくなってから、私もはいることができなかったのだ」

「ふむ、アマラセウスの結界か...... 並みの魔法では通れんな」

「じゃあはいれないのか」

「うむ......もしかしてサキミ、ヴァルディオンだ」

 ディンが思い出したようにいった。

「えっ、これ?」

 俺は背負った剣を見せた。

「ああそれはアマラセウスから譲り受けたもの。 たしかあやつは必要なときがくるまでもっておけといっていた。 もしやと思うが試してくれ」

「わかった。 まあ切ればいいんだろ」

 魔力をこめ、ヴァルディオンをふるう。

 何もない空間が歪む。 そこに穴ができた。

「開いた...... なぜアマラセウスさまは、その剣を」

「わからん...... ただあやつはなにかを考えていたようだ」

 グラディスとディンの二人の会話を聞きながら、城へとはいる。 ティンクルは番をするといい、そこに残った。


 そこはチリ一つない真っ白な内装をしていた。

「千年前と変わらん。 時が止まってるようだ」

 ディンとグラディスは懐かしそうに周囲をうかがう。

「ここになにかあるか?」

「まて、この城は浄化の魔法を発していて感知がうまく働かん...... ああ、中央に大きな魔力があるな。 行ってみよう」

 中央へと足早に近づく。 大きな扉が見える。

「ここは玉座の間だ」

 グラディスがゆっくり扉をあける。

 中には大きな椅子があり、そのとなりに丸い小さなテーブルがある。 そして部屋全体にステンドグラスのような窓から光が降り注ぐ。

「何もないな...... そういやグラディス以外の部下は?」

「いない...... 私だけだ」

「アマラセウスは部下を持たん。 国と行っても誰もすまぬ土地に住んでいた世捨て人のようなもの...... ライゼもオーガ以外の部下は持たなかった。 王とは敬称にすぎん。 魔王には国を持たぬものも結構いた」

 ディンが補足してくれた。

「ふーん、それででかい魔力って」

「あれだな」

 椅子の隣にテーブルがあり、その上に丸い青い水晶玉があった。

 ディンがその玉に触る。

 すると映像が部屋に投影された。 美しい青い髪の女性がうつるアマラセウスだった。

「アマラセウスさま......」

 グラディスがそう目に涙をためつぶやいた。

「きたのですね。 ディン」

 そう微笑んで優しく語りかける。

「これは私があなたに残した記憶、これから話すことをよく聞いてください......」

 そう悲しげな表情になる。

「もうすぐ私はきえさる。 その前にあなたに伝えることがあるのです。  彼らは恐ろしい計画を進めています。 人間、魔族すべての脅威となるでしょう」

「人間と魔族......」

 ザシュッ

「えっ......」

 一瞬だった。 たった一瞬でディンが崩れ落ちた。 胸から赤い液体がしみだしてくる。 俺は怒りのあまり剣をふるう。  

「ぐはっ!」

 空中に鮮血がほとばしり、血でその姿を見せた。

「クックック...... 魔王ディンプルディ...... とった...... うっ」

 そういってリザードマンは倒れた。

「ディン!! ディンプルディ!! しっかりしろ」
 
「あっ...... サキミ、大丈夫だったか......」

 ディンは開かない目でそういう。

「ばか! 早く回復しろ!!」

「無理だ...... この剣は魔力を封じる...... 回復はつかえん」

 そう剣を拾ったグラディスが話す。

「ふざけんな!! 何かあるはずだ! 何か!」

「サキミ...... 私のことはいい...... それよりアマラセウスの話を......」

 そうつぶった目から一筋の涙がこぼれた。

「なにがいいだ...... 死ぬのは怖いくせに......」

(諦めるな! 何とか、そうだ!)

「ディン願いだ! 俺の願い! 早くしろ! ディンの回復! 神なら神の力ならできるだろ!」

 俺ははじめて神に祈る。

「たのむ! 契約の力!! ディンを助けてくれ!」

「おい! サキミ」 
 
 目を開けるとディンの体が光り、ゆっくりとディンの目が開いた。

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