虹彩異色のネクロマンサー

曇天

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第三十四話

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「ずいぶん騒がしいな」

「ええ、すみません......」

 黒服たちが慌ただしく動く中、エルダリィーさんにカジノマネージャーが謝る。 ぼくはもうけたエルダリィーさんに部屋から解放され帰ろうとしていた。

(ネクロマンサーは感覚共有していた。 あれを倒したからあわててるな)

「まあ、勝ったからいいけど、今日はついていたなあ」

 そうほくほく顔でエルダリィーさんはいった。

(よくいうよ。 いままではわざと負けて、怪しまれるのを避けてただけだ。 ネクロマンシーを使えば相手の手札をみることや、ルーレットの操作なんか簡単だから)


「なるほど、やはりそうか......」

 ぼくはみてきたことをエルダリィーさんに話した。

「ただすぐに突入しないと、あの臓器移植用のディシーストは隠されてしまいますよ」

「いや、このまま泳がせる」

『なんだと! せっかく調べたのに!』

「確認ができなかったから、本腰の捜査ができなかったんだよ。 その事実があれば、かなり大がかりな捜査も可能だ。 帝国との繋がりや、白き聖者《ホワイトセイント》への手がかりも見つけられる」

「確かにニーディーだけを逮捕しても尻尾を切られるだけですね。 このまま放っておいたほうが、繋がりをみつけられるか」

「そういうことだよ。 おつかれ、二人はカイル隊長に新しい任務をもらってねー」

 そういってエルダリィーさんは上機嫌で帰っていった。

『......あいつが違法にもうけたことカイルに言おうな』

「......うん、そうしよう」

 ぼくたちはそう話した。

 
「......わかった。 エルダリィーからは回収しておく」

 カイル隊長が電話局越しでそういった。

「それで平和の盾《ピースシールド》以外に怪しい団体はないんですか?」

「それだが、平和の盾《ピースシールド》を調べるうち、ひとつ引っ掛かることがでた」

「ひっかかること?」

「細かくはシュリエに伝えたから合流してくれ」

「わかりました」

(......すこしおかしいな。 どうかしたのか)

 ぼくたちはソークタウンという町でシュリエさんをまった。

「う......」

 オープンカフェでまっていると、シュリエさんが近づいてきたが、及び腰だ。 ミーシャが姿勢を低くして尻尾を揺らし、近づくシュリエさんをまっていた。

「ミーシャ飛びかかろうとしないで」

『わかったよ』

「ふぅ...... ガリッ」

 ミーシャがすこし離れて丸くなると、なんとか落ち着いたようで、氷をかじりながらシュリエさんはおそろおそる近づく。 

「それでぼくたちはなにを?」

「ああ、ある新聞社を調べる」

「新聞......」

「【アイディアイムス】だ」

「アイディアタイムス、かなり偏った報道をする新聞ですね」

「ああ、帝国への警戒と危機感をあおったり、対決と軍の増強などを提唱したりしている」

「公平、中立をむねとしている報道である以上、あまり誉められたことじゃないですが、軍にとってはそれほど問題はないのでは?」

「ああ、だが他の隊の調べでは、議員【ヤングマン】と接触があるらしい」

『はぁ!』

「ひっ! ガリッ」

 ミーシャの声でシュリエさんは氷を噛み砕いた。

『どういうことだ!! ヤングマンは帝国と近しい議員だぞ!』 

「まあミーシャ、シュリエさんが怯えているから」

 仕方なくミーシャはまるまる。 シュリエさんは安心したようだ。

「そ、そうだ。 考えの対立している両者の接触は変だろう。 ヤングマンは次期大統領ともくされる人物」

「確かに...... アイディアタイムスはよく、ヤングマンを親帝国派と称して批判的に記事にも書いている」

(その議員と接触...... 取材ならあり得るが)

 ぼくたちはアイディアタイムスを探るべく、本社に向かった。

 
 そこは大きなビルで人の出入りが激しい。

『とはいえ、どうやって探るんだよ。 さすがに人の行き来が激しい、ヒラメがなくなったから、隠れて入るのは難しいぞ。 カジノは暗がりだったからはいれたけど...... って遠い!』

 シュリエさんは遠まきでみていたが、こちらにゆっくりと近づく。

「す、すまない。 確かに侵入は困難だが尾行はできる」

「尾行、誰か怪しい人物がいるんですか?」 

「【リスト】という女性で社主だ」

『新聞社のトップか。 それでそいつがなんなんだ』

「あ、ああ、奴が直接議員にあう」

『まあ取材と称して会うことはおかしくはないか...... わざわざ社主が?』

「いきましょう」

 ぼくたちはリストを尾行することにした。

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