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第4話 狭間《はざま》の森
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一週間後、僕ら生徒達は、校舎裏の森に集合させられた。
「またこの森かよ、今日はなにするんだ全く、なあ神無」
「そうだね、まあ実技かな、座学はこの学園にくる人なら知っていることばかりだからね」
僕と灰が話していると、
「鬼灯さん、あなたなんでそんなに、神無様に馴れ馴れしいんですか」
雅がずいと前に出て灰を睨んでいった。
「あん? ダチだからに決まってるだろうが」
「ダ、ダチ、友達ってことですか! 神無様! こんな不良と一緒にいては行けません!」
「雅、大丈夫だよ。 灰はいい奴だから」
雅は愕然とした表情で、ぷるぷる震えると、
「か、神無さまが、グレて不良になってしまわれた......」
雅は目に涙を貯め、あわあわとうろたえている。
その時、虎堂先生が大きな声で言う。
「今日は実戦試験を行う。 三人一組となり、この森にいる魔物を倒せばこの試験合格となる」
「いきなり実戦なんですか!?」
ある生徒が聞くと、
「貴様らは、ある程度術士としての知識や戦闘技術があるからな。 だから、早く実戦経験を積み、在学中からでも、陰陽師として任務に出てもらわねばならない。 あくまでこの学園が陰陽師を育てるのは、この現世《うつしよ》を守る為であり、普通の学校とは違い良い社会人や人格者を育てる為ではない。 端的にいえば戦力が欲しいからだ」
先生はそう言いきった。
「なんか、身も蓋もない言い方だね」
「世の中を守るには同意するが、良い人間はいらないってのがな、引っ掛かるぜ」
僕達がそう話をしていると、金形代君が、
「馬鹿かお前らは、当然だろう、わざわざ強くしたり、術を教えたり、手伝ったり、何も得られずにしてくれるわけがないだろう」
そう馬鹿にするように煽った。
「だから、お前みたいな、人を見下す人間をつくればいいってのかよ」
「ふん、何で今、術士が足りないか知ってて言ってるのか、それは、愚かな一般の人間のせいだからだ」
「どういうこと?」
僕が聞くと、金形代君は僕を蔑んだ目でみると
「なにも知らんのだな、魔物や怨霊てのは人の悪意や欲によって現世に呼ばれるのさ。 愚かしい人間の悪意や欲が増えに増えてる、それが魔物や怨霊どもをこの世に産み出してるんだ。 それを俺達が命を掛けて倒してやってるのに、術士に感謝もせずのうのうと生きているのだから、蔑むのも当然だろうが」
吐き捨てるようにいうと去っていった。
「本当なの、雅......」
「そうですね......確かに貧富の差や社会への閉塞感の増大等で人々の心が濁り、それに呼ばれて魔物や怨霊が多くなっているのは事実です。 実際術士と一般人との確執も......その事で術士の中には公然と一般の人々を支配しコントロールすべきと声高に主張する者すら出てきています......まあ昔からそのてあいの者はいましたが......」
(知らなかった......人の負の想いが魔物達を呼ぶのは知ってた。 けれど、術士と普通の人達の間にそんな壁があったなんて......)
そういえば小さい頃、僕だけが見えるものを人に伝えたら、とても怯えられたことがあったっけ、それを母に言うと、
「それは、とても凄いことなのよ。 あなたは人を救うことができるのだから」
そう言われたけど、それ以来、誰にも言わなくなったな......と僕が思い出していると、
「では、土光薙、鬼灯、犬境、の三人はひとつのチームとして、森に入れ、この森は|《狭間の森》《はざまのもり》、現世と隠世の間にある。 この森にいる三体の妖《あやかし》を狩れ。 いいか、これは一歩間違えたら死ぬ可能性もあるぞ。 心してかかれ」
そう言われて僕達三人は薄暗い森の中に入っていった。
森は明らかに普通じゃなかった。 異様な妖気が立ち込め、生えている植物や虫も見たことの無い異形の姿をしていた。
「ねえ雅、現世《うつしよ》って僕らの住む世界だよね。 隠世《かくりよ》って結局は何なの? 詳しく知らないんだけど異界か何かだとしか......」
「隠世とは、普通の人々には見えず触れずの異界です。 そこの住人が魔物や妖、鬼、神と言って現世にでてくる異形の者達です。 ここはその現世と隠世の間にある場所......そういう場所はいくつもあるのですよ」
「お前そんな事も知らないのな」
呆れたように灰が言うと、
「お前!? 神無様になんて口の聞き方を! 謝りなさい!」
灰に雅が食って掛かる。
「誰が謝るか! ダチにタメ口聞いて何が悪い!」
「なんですって! あなたなんか神無様のご学友に相応しくありません!」
「ダチに相応しいも何もないんだよ! 大体お前こそなんだ、神無の彼女か」
「か、彼女だなんて、べ、別に私は......」
両手を振りながら、耳まで真っ赤にして雅は照れている。
「灰は僕の修行に付き合ってくれてるし、この霊力を無くす方法も一緒に探してくれてるんだ」
「まあ、もったいないがな、その霊力上手く使えるようになれば、最強に成れるのにな」
その話を聞いて、雅は驚いている。
「霊力を無くす!? 神無様! 本当なのですか!」
「うん、僕は普通の暮らしがしたいだけだからね。 この力が無くなれば、一般人として生きていけるし、あの家からも出ていけるじゃない、それに、雅も僕付きの世話係をしなくてもよくなるし」
「私は......」
雅が沈黙すると、僕は何かが近づくのを感じた。
「何か来るよ......右からだ、二人とも警戒して」
「......何も感じねえけど」
「私も......」
遠くから茂みを掻き分けて進んでくる大きな何かの音がしてきた。
「こいつ! デカイぞ!」
「神無様! ここは私が!」
「ううん、僕が灰に教わった技を試してみるよ」
僕は雅にそう言って前に出た。
「危ない、お止めください! 敵の力もわからないのに!」
黒い影が茂みから出てきた、巨大な猿のような妖だった。
「あれは、鉄狒狒《くろがねひひ》まずい! 人喰いの妖! 速い上に体が鉄のように固い! いくら神無様の霊力でも......」
「大丈夫だ、あいつに任せろよ」
鉄狒狒が凄い速さで殴りにくる。 僕は霊力を腕に纒い受けると、凄い衝撃音がして、猿が吹き飛んだ。
吹き飛んだ猿は何が起こったかわからないようで、キョロキョロしていたが、自分の腕が逆に曲がっていることで、事態に気付き咆哮をあげ突進してきた。 僕は腕に纏った霊力を手の先に移動させ刃を作り、それを伸ばすと振り下ろし猿を両断した。
「ふう、うまく行った」
「神無様、今のは......」
「ああ、灰から僕は無駄に霊力を放出してるから、意識して形を留めた方がいいと言われてね。 その練習に付き合ってもらってできるようになったんだ。 体の一部で留めるのが霊甲《れいこう》、手の先に留めるのが霊刃《れいじん》さ」
「まあ、お前の膨大な霊力だから出来る芸当だけどな。 まさか一日で出来るようになるとは思いもしなかったがな」
雅はそれを聞いて、ぷるぷる震えると、
「これで勝ったと思わないでくださいね! 私の方が神無様のお役にたてるのですから!」
灰に指を差し言いはなった。
「何いってんだ? お前」
灰はそう言って困ったように眉を潜めた。
「またこの森かよ、今日はなにするんだ全く、なあ神無」
「そうだね、まあ実技かな、座学はこの学園にくる人なら知っていることばかりだからね」
僕と灰が話していると、
「鬼灯さん、あなたなんでそんなに、神無様に馴れ馴れしいんですか」
雅がずいと前に出て灰を睨んでいった。
「あん? ダチだからに決まってるだろうが」
「ダ、ダチ、友達ってことですか! 神無様! こんな不良と一緒にいては行けません!」
「雅、大丈夫だよ。 灰はいい奴だから」
雅は愕然とした表情で、ぷるぷる震えると、
「か、神無さまが、グレて不良になってしまわれた......」
雅は目に涙を貯め、あわあわとうろたえている。
その時、虎堂先生が大きな声で言う。
「今日は実戦試験を行う。 三人一組となり、この森にいる魔物を倒せばこの試験合格となる」
「いきなり実戦なんですか!?」
ある生徒が聞くと、
「貴様らは、ある程度術士としての知識や戦闘技術があるからな。 だから、早く実戦経験を積み、在学中からでも、陰陽師として任務に出てもらわねばならない。 あくまでこの学園が陰陽師を育てるのは、この現世《うつしよ》を守る為であり、普通の学校とは違い良い社会人や人格者を育てる為ではない。 端的にいえば戦力が欲しいからだ」
先生はそう言いきった。
「なんか、身も蓋もない言い方だね」
「世の中を守るには同意するが、良い人間はいらないってのがな、引っ掛かるぜ」
僕達がそう話をしていると、金形代君が、
「馬鹿かお前らは、当然だろう、わざわざ強くしたり、術を教えたり、手伝ったり、何も得られずにしてくれるわけがないだろう」
そう馬鹿にするように煽った。
「だから、お前みたいな、人を見下す人間をつくればいいってのかよ」
「ふん、何で今、術士が足りないか知ってて言ってるのか、それは、愚かな一般の人間のせいだからだ」
「どういうこと?」
僕が聞くと、金形代君は僕を蔑んだ目でみると
「なにも知らんのだな、魔物や怨霊てのは人の悪意や欲によって現世に呼ばれるのさ。 愚かしい人間の悪意や欲が増えに増えてる、それが魔物や怨霊どもをこの世に産み出してるんだ。 それを俺達が命を掛けて倒してやってるのに、術士に感謝もせずのうのうと生きているのだから、蔑むのも当然だろうが」
吐き捨てるようにいうと去っていった。
「本当なの、雅......」
「そうですね......確かに貧富の差や社会への閉塞感の増大等で人々の心が濁り、それに呼ばれて魔物や怨霊が多くなっているのは事実です。 実際術士と一般人との確執も......その事で術士の中には公然と一般の人々を支配しコントロールすべきと声高に主張する者すら出てきています......まあ昔からそのてあいの者はいましたが......」
(知らなかった......人の負の想いが魔物達を呼ぶのは知ってた。 けれど、術士と普通の人達の間にそんな壁があったなんて......)
そういえば小さい頃、僕だけが見えるものを人に伝えたら、とても怯えられたことがあったっけ、それを母に言うと、
「それは、とても凄いことなのよ。 あなたは人を救うことができるのだから」
そう言われたけど、それ以来、誰にも言わなくなったな......と僕が思い出していると、
「では、土光薙、鬼灯、犬境、の三人はひとつのチームとして、森に入れ、この森は|《狭間の森》《はざまのもり》、現世と隠世の間にある。 この森にいる三体の妖《あやかし》を狩れ。 いいか、これは一歩間違えたら死ぬ可能性もあるぞ。 心してかかれ」
そう言われて僕達三人は薄暗い森の中に入っていった。
森は明らかに普通じゃなかった。 異様な妖気が立ち込め、生えている植物や虫も見たことの無い異形の姿をしていた。
「ねえ雅、現世《うつしよ》って僕らの住む世界だよね。 隠世《かくりよ》って結局は何なの? 詳しく知らないんだけど異界か何かだとしか......」
「隠世とは、普通の人々には見えず触れずの異界です。 そこの住人が魔物や妖、鬼、神と言って現世にでてくる異形の者達です。 ここはその現世と隠世の間にある場所......そういう場所はいくつもあるのですよ」
「お前そんな事も知らないのな」
呆れたように灰が言うと、
「お前!? 神無様になんて口の聞き方を! 謝りなさい!」
灰に雅が食って掛かる。
「誰が謝るか! ダチにタメ口聞いて何が悪い!」
「なんですって! あなたなんか神無様のご学友に相応しくありません!」
「ダチに相応しいも何もないんだよ! 大体お前こそなんだ、神無の彼女か」
「か、彼女だなんて、べ、別に私は......」
両手を振りながら、耳まで真っ赤にして雅は照れている。
「灰は僕の修行に付き合ってくれてるし、この霊力を無くす方法も一緒に探してくれてるんだ」
「まあ、もったいないがな、その霊力上手く使えるようになれば、最強に成れるのにな」
その話を聞いて、雅は驚いている。
「霊力を無くす!? 神無様! 本当なのですか!」
「うん、僕は普通の暮らしがしたいだけだからね。 この力が無くなれば、一般人として生きていけるし、あの家からも出ていけるじゃない、それに、雅も僕付きの世話係をしなくてもよくなるし」
「私は......」
雅が沈黙すると、僕は何かが近づくのを感じた。
「何か来るよ......右からだ、二人とも警戒して」
「......何も感じねえけど」
「私も......」
遠くから茂みを掻き分けて進んでくる大きな何かの音がしてきた。
「こいつ! デカイぞ!」
「神無様! ここは私が!」
「ううん、僕が灰に教わった技を試してみるよ」
僕は雅にそう言って前に出た。
「危ない、お止めください! 敵の力もわからないのに!」
黒い影が茂みから出てきた、巨大な猿のような妖だった。
「あれは、鉄狒狒《くろがねひひ》まずい! 人喰いの妖! 速い上に体が鉄のように固い! いくら神無様の霊力でも......」
「大丈夫だ、あいつに任せろよ」
鉄狒狒が凄い速さで殴りにくる。 僕は霊力を腕に纒い受けると、凄い衝撃音がして、猿が吹き飛んだ。
吹き飛んだ猿は何が起こったかわからないようで、キョロキョロしていたが、自分の腕が逆に曲がっていることで、事態に気付き咆哮をあげ突進してきた。 僕は腕に纏った霊力を手の先に移動させ刃を作り、それを伸ばすと振り下ろし猿を両断した。
「ふう、うまく行った」
「神無様、今のは......」
「ああ、灰から僕は無駄に霊力を放出してるから、意識して形を留めた方がいいと言われてね。 その練習に付き合ってもらってできるようになったんだ。 体の一部で留めるのが霊甲《れいこう》、手の先に留めるのが霊刃《れいじん》さ」
「まあ、お前の膨大な霊力だから出来る芸当だけどな。 まさか一日で出来るようになるとは思いもしなかったがな」
雅はそれを聞いて、ぷるぷる震えると、
「これで勝ったと思わないでくださいね! 私の方が神無様のお役にたてるのですから!」
灰に指を差し言いはなった。
「何いってんだ? お前」
灰はそう言って困ったように眉を潜めた。
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