不完全なる世界にて、契約魔王と怠惰の徒は歩む

曇天

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第七話『魔王の城跡で出会ったのは、勇者の子孫でした』──ポンコツ魔王と有能少年の落差がすごい。

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「ここ......」

 次の日、ディムリアに教わってきた場所にきた。 町から遠くはなれたそこはなにもない雑木林だった。

「うむ、ここに我が城があった。 だがなにもないな」

 懐かしそうだが、すこし寂しそうにディムリアはいった。

「それでどこですわ? なにもないですわ」

「この地下に我が勇者と戦った場所があったのじゃ。 そこには宝物がのこっておる。 ほらあそこに地下への階段がある」

 ディムリアの指差す方に歩くと地下へと続く階段がある。

「確かに、下はくらいな......」

「なにかとても嫌な気配がするですわ」

 おれは耳を増やし地下の音をきいた。 

「まさか、この音! モンスターがいるんですか!」

「ふーむ、確かにいるようじゃな......」

「そんな!」

「まあ大事ない。 そんな者共は我が魔法でこっぱみじんじゃ」

 そう拾った木の棒をふりディムリアはいう。

(心配だな...... 本当にこいつ戦えるのか)

 おれたちは地下へとむかった。


「かなりいりくんでる。 迷宮みたいだな」

 暗い通路をミリアの魔法で照らしながらすすむ。 高い天井の通路をあるくとさまざまな方向に道がある。 それをディムリアの記憶を便りにすすんでいく。

「それでモンスターはいますのですわ?」

「いや、なにも聞こえんな...... さっきは聞こえたんだが」

「ほうシュン、貴様そんなことが分かるのか?」

「ええ、まあ...... いや、なにか前からくる。 離れよう」

「何を申すか。 我にまかせよ!」

 角から人よりでかいカエルが現れた。

「ディープフロッグですわ! 人食いがえるですわ!」

「ふん、カエルか。 では、我が極炎魔法で!」

「おお極炎魔法! 強そうだ!」

 ーー灼たる息吹をもって、眼前の敵を焼き尽くせーー

「グレートプロミネンス!!」

 一瞬、場が赤い光に包まれたが、なにも起こらなかった。

「ディムリアさま!?」

「はて? おかしいな」

 カエルがその巨体をゆらしてこちらにはってくる。

「ま、まずい!! ミリア頼む!」

「わ、わかったですわ! ファイアボール!!」 

 ミリアの炎がカエルを怯ませているうち、おれは見えない腕で弓を構え矢を放ち、カエルを倒した。

 
「なんとかなった......」

「......ええ、つかれましたですわ」

「ふむ、よくやった」

「どうなってんですか! 魔王なんでしょ!!」

「そうですわ! ただ一瞬光る魔法ですわ!」

「ふむ、どうやら封印されているうちに魔力を失ったようじゃ。 もとに戻るには時間をようするな。 はははっ」

 ディムリアはへらへらしている。

(笑い事じゃない! くそっ! 何が魔王だ! お宝を手に入れたら国にあずける!)

 そう心に誓いおれたちは先へとすすむ。


 しばらく通路を進むと奥から音が聞こえてきた。

「なにか聞こえるな...... これは部屋のなかか」

「なんですわ! またモンスターですわ」

「ああ、だが剣の音も聞こえるな」

「誰かが戦っておるということか」

「ええ、まあ、いってみますか」

 ゆっくりと近づきみえてきた大きな部屋を覗いた。

 そこでは、小学生ぐらいの子供が大剣を振り回しカニとわたりあっていた。

「あれはマッドクラブですわ! とても強いモンスターですわ!」

「戦ってるのは子供!?」

 しかし少年は押されているようだ。

「シュン! あの童《わらべ》を早く助けるのじゃ!」

「わかってるよ! ミリア援護を頼む!」

「わかったですわ!」

 おれは見えない腕で弓を構え、矢をつがえ弦をひくとねらいすます。 

「ミリア!!」

 ミリアがカニに風の魔法をはなつ、カニはその動きをとめた。

 少年がこちらに気づき距離をとるのをみて、一気に矢をはなった。

 ドシュ! 

 数本はなった矢が殻を貫き、動きが鈍くなったカニを少年はその大剣で両断した。


「助けていただきありがとうございました!」

 そう聡明そうな少年は丁寧に頭を下げた。

「かまわぬ。 気にするでない」

「いやあなたはなにもしてないですわ」

「まあいい、それでこんなところでなにしてるんだ?」

「ええ」

 少年はセリエスといい、ある人物から情報をえてこの地下へとやってきたという。

「こんな子供をモンスターのいるここに...... いったい誰だそんなこと言うばバカは?」

「アバレスト公爵さまです。 それにぼくがかってにきただけです」 

「アバレスト公爵...... どっかできいた名前だな」

「ここの領主ですわ」

「そうか、それでセリエスはなんでこんなところに用がある?」

(まさか宝狙いか......)

「ここにはかつて魔王の居城があったというのです。 そこにリアベールがつかった宝珠があるとききました」

「リアベール!! そなたしっておるのか!」

「は、はい。 ぼくの祖先です」

「な、なに...... 確かに面影があるな」

 ディムリアはセリエスの顔をまじまじみると、なにかを考えているようだ。

(リアベール...... もしかして勇者か)

「それでその宝珠がなんなんだ?」

「両親からぼくの祖先は魔王を倒した勇者だときかされてきました。 ですが、その名は歴史から消され、リアベールは暗黒騎士とよばれさげすまれてきました。 その汚名をそそぐため僕の一族は生きてきたんです......」

「ぬぬぬ...... 許せぬ! まさしくリアベールは勇者! 我を封印したのはやつだ!」

 そうディムリアは憤慨している。

「? どういうことですか?」

「まあいい、それでなぜここにきたんだ?」

「ここにあるという宝珠があれば、アバレスト公爵さまは真実だと認めてくださると約束してくださいました」

(ディムリアよりはるかに使えるな。 さすがのおれでもこんな子供を戦わせるのは不本意たが、我々の戦力だとこの先に行くのは危険...... セリエスにとってもそうだろう)

「まあ事情はわかった。 その宝珠をみつければいいんだな。 なら一緒に行こう」

「いいんですか!」

 少女のような顔のセリエスは満面の笑みでこたえた。

 
 おれたちはモンスターを避けながら、地下へともぐっていく。

「すごいですねシュンさん! モンスターに全くであわない」

 そうセリエスは驚く。

「ああ、セリエスはどうやってここまできたんだ? まさか」

「ええ、お恥ずかしながら、ぼくは剣でモンスターを倒してきました」

 そう照れながらセリエスはいう。

(それでモンスターの動く音がなくなったのか。 とんでもない強さだな。 勇者の子孫というのはあながち間違いじゃないかもしれん...... それに比べて)

「腹がへったのう...... なにかくいものはないか」

 ディムリアは疲れて歩けくなったといい、おれが背負っていた。

(こいつは本当に魔王なのか? ミリアの話とちがうし、とはいえ道案内には必要だ)

「しかたないな。 すこし休憩するか」

「ではぼくがなにかつくりましょう」

 大きなリュックを肩からおろしたセリエスはそういって手際よくもってきた食材を調理している。

「料理ができるのですわ!」

「ええ、両親がモンスターとの戦いでなくなったあと、独り暮らしでしたので......」

「料理もつくれない、どこかのおばか二人に聞かせたいですわ」

 そうミリアがこちらをじとっとした目でみてくる。

「ぐっ......」

「かかっ、シュンよ言われておるぞ」

(お前もだよ。 しかしできるこだな)

 セリエスのつくったとても美味しい料理を食べながらそう思った。
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