ケットシーの異世界生活

曇天

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第十八話

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(かなり走るな...... この先はいったことない地域だ)

 馬車をおい木の枝を飛びながらついていく。

 遠くに町のようなものがみえてきた。 そのとき体になにかに触れた感覚があった。

(なんだ...... 今のは) 

 すると遠くに一度馬車が止まり、また走り出す。 追いかけようとしたとき、毛が逆立った。

(なっ!?)

 とっさに木を蹴って後ろに跳ぶ。 空気をさく音がして枝が切れた。 地面に落ちるように着地した。

 後を振り向くと白いローブがこちらに迫っているのがわかった。

(なぜばれた!? 逃げないと!)

 すぐに走り出す。

「風よ、流れ、切り裂け、ウィンドエッジ」

「!!?」

 毛がさがだち、かわすと隣の木が切れ倒れた。

(なんだ!? 突然木が! まさか、これは風の魔法!!)

 なんとか茂みを走る。

(なぜばれた......)

 風の斬撃が次々放たれ、周囲がきざまれる。

「くっ!」

 かなり近くまで来ていた。

(攻撃の精度があがっている! それに人間なのにこのスピードに追い付けるなんて!)

 逃げきれないと判断して、姿をだして走りづらい道からでて、舗装された道をはしる。

「......とまれ」

 だが目の前にフードで顔をかくした人物が、こちらに剣を向けてたっていた。

(なっ! ぼくより速い!)

「貴様か、ケットシー...... まさか追跡していたとはな」

(なんで...... みえたんだ。 王女から姿を消す魔鉱石を借りて使っていたのに......)

 その外套の下にネックレスがゆれ、赤い玉があった。

(あれは魔法珠、あれでみえているのか......) 

「うっ」

 一瞬フードの人物は頭を抱える。

(なんだ!?)

「なにをみた...... それさえいって二度とかかわらないと誓えば見逃してやる」

(なにもみてないけど、それをどうせ話したとしても、ぼくを生かしてくれると思えない......)

 ナイフを抜いて、ぼくは左に跳躍してにげる。

「くっ、愚か者め......」

 ローブの人物は一瞬でそばにくると、ぼくはその剣で両断された。


「はぁ、はぁ、ここまで来れば......」

 しばらくしてぼくは別の場所にいた。

(危なかった。 分身をだしておいてよかった)

 ぼくは元々分身をつくり、姿を消して先に走らせていた。 斬らせたのはその分身だった、前のとき刺客にみせたやり方だ。 本体は姿をかくし離れたところにいた。 

(分身と反対の方向に逃げてたすかった。 あの人すごいスピードで動いた。 あれは魔法か......)

 なんとか城まで逃げ帰った。


「......なるほどね。 よく帰ったわ」

 城に帰り事情をはなすと、王女はこむぎにうずもれながらそういった。 それをみてリディオラさんが眉をひそめてみている。

「......でも貴族も、もう一人のローブの人物も正体はつかめませんでした......」

「かまわないわ。 その先はリンブラントという土地で領主がいる。 バルデスと繋がっているのはおそらくその者本人か、関係者ね。 君がはいった空間に魔法結界がはってあったんでしょうね。 町やこの城にもはってあるわ」

(ぼくが触れた変な魔力、あれは結界だったのか)

「リンブラント、あそこはカルバインさまの領地ですね......」

 リディオラさんは考え込むように腕を組む。

「そうね。 あとそフードの者、風の魔法、それに魔法珠をもっていた...... 話から推察するにかなりの地位にあるわね」

(王女は真剣なようで、こむぎをさわりながら時折にやけてるから、すごく不真面目にみえる......)

「正直、あの人は戦闘技能があるのようなので、素人のぼくではまともに戦えませんでした」

「......そうね君は戦闘訓練をしている訳じゃない。 君は彼らに知られてるから店に戻すのも危険か...... しかたないやはり枕にするしか」 

「ひぃ!」

 そう手をわきわきしながら迫ってくる。

「お止めください! 王女!」

 リディオラさんがとめた。

「ま、ま、まってください!」

「なに?」

「このままだとずっと店に帰れませんので、やはりあの貴族を調べます」

「危険ですよ! そんな手練れ、今度会えば確実に殺されます!」

 リディオラさんがとめた。

「一つ考えがあるんです」

「へぇ、話してみて」

 王女にその考えを話した。

「......なるほど、でも危険なことは間違いないわ。 それでもやるの?」

「ええ」

「ですが...... 危険すぎます」

 リディオラさんが不安そうな顔をしている。

「ただ、最悪のときは......」

「わかったわ。 こちらも覚悟はしましょう...... あとこれを持ってきなさい」

 王女から許可をもらい、ぼくは再びあの場所に向かった。
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