そのメンダコ、異世界にてたゆたう。

曇天

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第九話

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「かなりお金がはいったね。 これで旅も少し楽になるかな」

「いいなあ、その剣」

 腰にさしたおれの神剣をメリムが羨ましそうに見ている。

「あげても使えないしなあ」

「......しかたない。 それでその神剣の話聞いた?」

「確か酒場のおっちゃんが【風麗剣】フォラールっていってた。 風を操れるらしいよ」

「風か...... ちょっと試してみてよ」

 メリムにいわれて剣を抜いた。

「確か魔力を加えて剣をふるうと......」

 シュバッ!!

 魔力を少し加え剣を振るうと遠くにあった木に傷が付いた。

「おお! なんか切れた」

「すごいね! 見えなかったけど、多分風の刃だよ!」

(そうかこれならモンスターも楽勝かな)

 おれたちはとなりの国がある山道を登り始める。


「ここを越えると、セメンドリアっていう国があるわ。 そこにも神剣があったはず」

「おれの探してる魔力を使う人はいないかな......」

「そのセメンドリアに詳しい人はいると聞いたわ」

「そうなのか! よし!」

(これで姿を変えてもらえば、このヘンチクリンなからだともおさらばだ。 ちょっともったいない気もするけど...... さすがにいつかはばれるからな)

 こちらを不思議そうにメリムが見ている。

「きゃあああ!」

 けたたましい叫び声がきこえた。

 おれたちはその場に向かった。

「トーマ! あれ!」

 そこには複数の荷馬車を囲む武装した男たちがいた。

「盗賊か!」

「いくよ! トーマ!」

 駆け出していくメリムについていく。
 
 一人の女性が盗賊に引っ張られている。

(人質にされたら困る)

 フォラールに魔力をこめはなつ。

「ぐわっ!」

 風が女性をつかむ盗賊の腕にあたり、出血させた。

「なんだ!? 子供! なめやがって!」

「やれ!! やっちまえ!」

 盗賊がこちらに武器を向ける。

「せい!! やっ!! てや!」

 メリムがその場にいた盗賊たちをつぎつぎ叩き伏せる。 あっという間に地面に盗賊たちが転がった。

「こいつ、強い!」

「あれは神剣だ! 一旦引く!!」

 そういうと盗賊たちは仲間をかついで逃げていく。 追撃はしなかった、まずは安全をはかりたかったからだ。

(なんにもしないまま終わった。 メリムはやっぱ強いな)

「あ、ありがとうございます」

 そう礼をいった女性ハイメルさんは商人で盗賊に襲われたという。
傭兵をやとっていたが、皆すぐ逃げ出してしまったらしい。

(傭兵は使えないな)

「じゃあ、町まで送りますね」

「いいんですか!」

「どうせおれたちもいきますから」

 そういうと安心した顔でハイメルさんたち商人は頭を下げた。


「そんなに治安が悪いんですか?」

 荷馬車の荷台でゆられながら、おれが聞くとハイメルさんがためらいながら頷く。

「......ええ、最近は盗賊が頻繁にあらわれて、商人たちは困っています」

「あれ? セメンドリアって神剣士の王が統治していますよね? それで治安が悪いなんて」

 メリムが首をかしげると、ハイメルさんが目を伏せる。

「王は、ガルバイン王は変わってしまわれたのです......」

「変わった?」

「......元々は賢君と呼ばれるほど民に慕われた王だったのですが、最近になり、城に引きこもると重税や苦役をかすようになりました」

「なにか理由があるんですか?」

「妻であるセアメリス妃が奇病に伏せてからです。 どうやら病を治すためにお金が必要とか、それで金策されているようです」

「奇病......」

「国の警備が緩いのをいいことに、ここに盗賊たちが集まってきていて、先ほどのようなことに......」

 ハイメルさんは困った顔をし、ため息をつく。

(盗賊か......)

 おれたちは王都にハイメルさんたちを送り届けた。 そこはかなり大きなお店だった。 従業員がで向かえてくれている。

「ありがとうございました。 助かりました。 トーマさん、メリムさん」

 そう深々とハイメルさんたちは頭を下げた。

「何かご用があれば、このハイレルのアム商会になんでもお聞きください」

「あっ、魔力に詳しい人がいるって聞いたけど、どこにいるんですか?」
 
「魔力に詳しい人ですか? ああ、ムナビさん。 それなら、あの店です」

 そういって杖の看板を掲げている店を指差した。
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