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第五十話
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「向こうは大丈夫かしら、こっちには追跡者はいないけど」
深い森を歩きながらミリアナが心配そうにいう。
おれたちは証拠が隠されているという遺跡へと向かっていた。
「大丈夫だよ。 メリムたちとバルジャンさん、エルティッタさんもいる。 危ないのはむしろおれたちの方だ」
「確かに...... そうですわね」
ミリアナは周囲を注意深く丹念にみている。
(姿を消すのも魔力を大きく消費するから、ミリアナにまかせよう)
「ありましたわ...... クオール遺跡」
木々の隙間から石の宮殿のような建造物が現れた。
「ここが、バルジャンさんのいってた遺跡か」
「ええここが国になるまえ。 神匠ザフトイールが作ったとされる遺跡...... こんなところに証拠を隠すなんて」
「おれの霊体で中を探ってこよう。 その間体を頼むよ」
おれは霊体となって遺跡に入った。
(ただの宮殿みたいだ。 だれもいないし特に変なところはないな。 どこにあるかはバルジャンさんも知らなかった。 三人で合流したのち、向かう予定だったといってたしな)
宮殿内はがらんとしていて柱ぐらいしかない。 奥に進むと、台座にかなり幅広の大剣が刺さっていた。
(これ神剣か...... まさかこれを抜いたもの...... な訳はないな。 それならだれにも証拠は手に入らなくなる)
戻ってミリアナにみたことを伝える。
「なにもなかった...... そんなことは、もう一度いきましょう。 私ならばみれるかもしれないですわ」
ミリアナと共に遺跡へとはいる。
「でもなんでこんなところにこんなものを建てたんだろう?」
「鉱山を見つけ巨万の富を手に入れた神匠ザフトイールはここに自らの財産を隠したとされます」
「財宝があるの!?」
「ふふっ、もちろん噂ですわ。 それから何人もがここには入り捜索しましたが、見つかってはいませんもの。 特に隠し部屋らしきものはないですわね......」
「ほら、あれが神剣だ」
神剣のささっている台座が奥にある。
「あれが...... あれは!!? 本物の神剣ではありませんわ!」
「えっ!?」
おれたちは台座に近づく。 剣を握り抜くと抜けない。
「柄を少しねじってみてください」
ミリアナに言われて柄をねじるとくるくると回転し抜けた。 なかには丸めた書類らしきものがいくつかと赤い宝石がでてきた。
「これは書類...... 証拠の書類か! あとこれは魔石かな」
「トーマ! 誰か来ます!」
入り口の方からカツカツと靴が響く音がする。
「お前たち、それを渡せ......」
そういいながら、短剣を腰に携えた短髪の筋肉質な女性が一人近づいてきた。
「神剣士......」
「私はリズベンダの王女ミリアナ。 あなたは何者です」
「なぜここにリズベンダの王女が......」
少し驚いた顔をしたが、すぐに真顔に戻る。
「私は十剣将のジェガリア、あなたが本物の王女であるという証拠はない。 それにあくまでも禁止区域であるこの遺跡にたちいる侵入者です。 すぐに投降しなければ少々荒っぽくなりますがよろしいか」
そういって前へと進み出てくる。
(この人がジェガリアか、確かにすごい圧迫感がある......)
「あなたは元々アルガラン派だったはず、なぜバルステアに与するんですか!」
「......君には関係がなかろう」
そういって剣に手を掛けた。
(神剣とはいえ短剣だ...... 距離をとってなら分がある。 風で飛ばして拘束する!)
「フォラール!!」
突風がジェガリアをおしかえす。
「ヴェイルガ!」
短剣を抜くと膝まずいて石の床に短剣をさした。
(あんな長さでは風にたえられない!! 今のうちに【糸魔力】で......)
すると石の床が盛り上がりジェガリアの体をおおい鎧のようになった。
「なっ!?」
ドドドッ、ドガンッ!!
そのまま突進してぶつかられ、壁に叩きつけられる。
「ぐはっ! くっ!」
(鐵柔躯《アイアンソフトボディー》でこのダメージ...... 回復量が足りない...... こんなの何度もくらったら死ぬ!)
「たいしたタフさだが、魔力か...... 立ち上がるなら、倒れるまで戦う」
また突進してくる。
(一か八か、まだ試してもいないけど! 【糸魔力】、【鉱魔力】)
おれは糸を張り巡らせ、突進してきたジェガリアに当たった。
「なっ!? これは糸!」
金属になった糸はジェガリアの体にまとった石を砕いた。
「よし! 【糸魔力】、【縛束糸】《リストレインスレッド》!」
さらに糸を放ち、体をを拘束する。
「なるほど、確かに監視していたものたちを排除できる力をもつな。 ヴェイルガ!」
体にまとった石をくだくと、それがこちらにうち出してきた。 剣でうちおとすが、何発かはミリアナをまもるために被弾した。
「くっ!」
「大丈夫ですの! トーマ!」
「大丈夫だ......」
「ヴェイルガ!」
また石をまとった。 短剣が石をまとい巨大な石の剣になり、振り下ろしてきた。
ドガァァン!!
地面を抉る石の剣をかわす。 なんとか収縮してうちだした鋼拳《アイアンフィスト》でジェガリアを離し距離をとる。
「確かにその金属化はかなりの威力。 だが無駄だ.....」
そういってゆっくり歩いて近づいてくる。
(くそっ、あの石の鎧、固すぎて壊せない! 拘束すると外される。 外せば石を放たれる! 逃げるか、いや後ろからの石の的になるだけか......)
「何かあの石の鎧の中に入れられれば......」
ミリアナがそうつぶやく。
(石の中...... そうか!)
おれは剣を持ち収縮して、飛び上がるとジェガリアにきりつけた。
「無駄だといっている!」
おれは地面に叩きつけられた。
「もはやこれまでだ...... これが最後のチャンスだ。 投降しろ」
「い、いいや、終わりはあなただ......」
「なんだと...... なっ、体が動かない......」
ジェガリアが動かなくなった。
深い森を歩きながらミリアナが心配そうにいう。
おれたちは証拠が隠されているという遺跡へと向かっていた。
「大丈夫だよ。 メリムたちとバルジャンさん、エルティッタさんもいる。 危ないのはむしろおれたちの方だ」
「確かに...... そうですわね」
ミリアナは周囲を注意深く丹念にみている。
(姿を消すのも魔力を大きく消費するから、ミリアナにまかせよう)
「ありましたわ...... クオール遺跡」
木々の隙間から石の宮殿のような建造物が現れた。
「ここが、バルジャンさんのいってた遺跡か」
「ええここが国になるまえ。 神匠ザフトイールが作ったとされる遺跡...... こんなところに証拠を隠すなんて」
「おれの霊体で中を探ってこよう。 その間体を頼むよ」
おれは霊体となって遺跡に入った。
(ただの宮殿みたいだ。 だれもいないし特に変なところはないな。 どこにあるかはバルジャンさんも知らなかった。 三人で合流したのち、向かう予定だったといってたしな)
宮殿内はがらんとしていて柱ぐらいしかない。 奥に進むと、台座にかなり幅広の大剣が刺さっていた。
(これ神剣か...... まさかこれを抜いたもの...... な訳はないな。 それならだれにも証拠は手に入らなくなる)
戻ってミリアナにみたことを伝える。
「なにもなかった...... そんなことは、もう一度いきましょう。 私ならばみれるかもしれないですわ」
ミリアナと共に遺跡へとはいる。
「でもなんでこんなところにこんなものを建てたんだろう?」
「鉱山を見つけ巨万の富を手に入れた神匠ザフトイールはここに自らの財産を隠したとされます」
「財宝があるの!?」
「ふふっ、もちろん噂ですわ。 それから何人もがここには入り捜索しましたが、見つかってはいませんもの。 特に隠し部屋らしきものはないですわね......」
「ほら、あれが神剣だ」
神剣のささっている台座が奥にある。
「あれが...... あれは!!? 本物の神剣ではありませんわ!」
「えっ!?」
おれたちは台座に近づく。 剣を握り抜くと抜けない。
「柄を少しねじってみてください」
ミリアナに言われて柄をねじるとくるくると回転し抜けた。 なかには丸めた書類らしきものがいくつかと赤い宝石がでてきた。
「これは書類...... 証拠の書類か! あとこれは魔石かな」
「トーマ! 誰か来ます!」
入り口の方からカツカツと靴が響く音がする。
「お前たち、それを渡せ......」
そういいながら、短剣を腰に携えた短髪の筋肉質な女性が一人近づいてきた。
「神剣士......」
「私はリズベンダの王女ミリアナ。 あなたは何者です」
「なぜここにリズベンダの王女が......」
少し驚いた顔をしたが、すぐに真顔に戻る。
「私は十剣将のジェガリア、あなたが本物の王女であるという証拠はない。 それにあくまでも禁止区域であるこの遺跡にたちいる侵入者です。 すぐに投降しなければ少々荒っぽくなりますがよろしいか」
そういって前へと進み出てくる。
(この人がジェガリアか、確かにすごい圧迫感がある......)
「あなたは元々アルガラン派だったはず、なぜバルステアに与するんですか!」
「......君には関係がなかろう」
そういって剣に手を掛けた。
(神剣とはいえ短剣だ...... 距離をとってなら分がある。 風で飛ばして拘束する!)
「フォラール!!」
突風がジェガリアをおしかえす。
「ヴェイルガ!」
短剣を抜くと膝まずいて石の床に短剣をさした。
(あんな長さでは風にたえられない!! 今のうちに【糸魔力】で......)
すると石の床が盛り上がりジェガリアの体をおおい鎧のようになった。
「なっ!?」
ドドドッ、ドガンッ!!
そのまま突進してぶつかられ、壁に叩きつけられる。
「ぐはっ! くっ!」
(鐵柔躯《アイアンソフトボディー》でこのダメージ...... 回復量が足りない...... こんなの何度もくらったら死ぬ!)
「たいしたタフさだが、魔力か...... 立ち上がるなら、倒れるまで戦う」
また突進してくる。
(一か八か、まだ試してもいないけど! 【糸魔力】、【鉱魔力】)
おれは糸を張り巡らせ、突進してきたジェガリアに当たった。
「なっ!? これは糸!」
金属になった糸はジェガリアの体にまとった石を砕いた。
「よし! 【糸魔力】、【縛束糸】《リストレインスレッド》!」
さらに糸を放ち、体をを拘束する。
「なるほど、確かに監視していたものたちを排除できる力をもつな。 ヴェイルガ!」
体にまとった石をくだくと、それがこちらにうち出してきた。 剣でうちおとすが、何発かはミリアナをまもるために被弾した。
「くっ!」
「大丈夫ですの! トーマ!」
「大丈夫だ......」
「ヴェイルガ!」
また石をまとった。 短剣が石をまとい巨大な石の剣になり、振り下ろしてきた。
ドガァァン!!
地面を抉る石の剣をかわす。 なんとか収縮してうちだした鋼拳《アイアンフィスト》でジェガリアを離し距離をとる。
「確かにその金属化はかなりの威力。 だが無駄だ.....」
そういってゆっくり歩いて近づいてくる。
(くそっ、あの石の鎧、固すぎて壊せない! 拘束すると外される。 外せば石を放たれる! 逃げるか、いや後ろからの石の的になるだけか......)
「何かあの石の鎧の中に入れられれば......」
ミリアナがそうつぶやく。
(石の中...... そうか!)
おれは剣を持ち収縮して、飛び上がるとジェガリアにきりつけた。
「無駄だといっている!」
おれは地面に叩きつけられた。
「もはやこれまでだ...... これが最後のチャンスだ。 投降しろ」
「い、いいや、終わりはあなただ......」
「なんだと...... なっ、体が動かない......」
ジェガリアが動かなくなった。
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