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第七十三話

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「なるほど、それでこの国に......」

 そう事情を話す。 骸骨騎士だった青年はクリエスラといい。 かつてここにあった国アドレティアの皇太子だといった。

「アドレティア帝国、古代にあったが、もっと巨大で中央にあったはずだわ」

 エルティッタさんが怪訝そうにいうとクリエスラはうなづいた。

「我らは戦争に負け、この地に落ちのびてきたのです......」

「それでここで国をつくったのか」

「ええ、そして父オルグレアス大帝がガイルクーダを使い、我々は死者となってここでさまよっていた」

「オルグレアス大帝か、確か大陸全土を支配するため、残忍な手段を多く使ったというけどな」

「......そうです。 その野心と欲望で悪逆非道な行いをしつくし、人々からいみ嫌われた存在...... だが私はあの男を討つことごできなかった......」

 クリエスラは悲しげに目を伏せた。

「オルグレアスはガイルクーダをなぜ使ったんだ?」

「父は復讐心にとらわれ、死者の軍を率い大陸へ侵攻しようとしました」

「そんなことが可能なの?」

 エルティッタさんがいうと、クリエスラは唇をかむ。

「ここに運び込んだ巨大な巨魔石、それを用いガイルクーダを使った。 しかし制御できず死者となりさまよった......」

「セファイラと同じ方法か......」

「セファイラ......」

 おれたちはセファイラと復神教団のことを話した。

「復神教団か......」

「しってるの?」

「ああ、かつてこの国にやってきたその教団の男がいた。 グエムスという男だ。 父にグランティ族を滅ぼすように進言していた」

「そんな昔から......」

「とても紳士的でありながら、本性は冷徹、冷酷、人を虫けらのようにみていた」 

 そうクリエスラ思い出すように眉をひそめた。

(......セファイラみたいだな。 復神教団は昔からそんな奴らの集まりか、ずっとこの世界で暗躍していたのか)

「そのセファイラがここで魔石と八極剣なにかしようとしているの。 なにかしらない?」

 エルティッタさんがそうきいた。

「八極剣...... 確かにグエムスは父に八極剣を集めるように話していた。 手に入れればこの世界を手に入れられると、儀式ならば城裏にある塔の地下だ。 あそこで父はガイルクーダを使ったはず」

 おれたちは塔へと向かった。


「こっちだ......」

 クリエスラに塔地下へと案内してもらう。 エイゼルマンの魔力を奪う剣、吸魔剣ライベルトで塔まわりの骸骨たちを倒していく。

 大きな塔の入り、姿を消して地下深くへ螺旋状の石段をおりると、大きな部屋に黒いローブを被ったものたちがいる。 その前には二つの大きな魔石がある。

「また魔力を集めているのか...... 何に使うつもりだ」

「グランティ族のだけでは足りなかったみたいね」

「あれがガイルクーダだ」

 クリエスラが指差す。 そこには禍々しい姿の剣が地面にささり、それが赤色の怪しい光放っている。

「これをつかって戦争でもしようというのか、あそこにセファイラがいる」

 奥の玉座に骸骨の騎士とその傍らにセファイラがいた。

「あれは父だ。 あわれな......」

「さてどうする...... セファイラを倒したいが......」

「一太刀でとらないと、逃げられるわね。 一番厄介なのは全てをもって逃げられることだわ」

「それならば私がやつを仕留めよう」

 そうエイゼルマンがいう。

「だが、問題は父だ。 あの腰に携えているのは神剣、キリングとワーメル、反射と爆発の魔力をもつ」

「それなら、四人で近づき、おれとエイゼルマンでセファイラ、オルグレアスはエルティッタさんとクリエスラで頼む」

 そしてゆっくりと黒いローブのものたちの後ろをすすむ。

(魔石に近づくと魔力が吸いとられ、その場所がばれる。 遠回りでいこう)

 おれたちは魔石を避けてセファイラに近づく。

「もうすぐだ...... あと二本」

(いや、あと三本のはずだ......)

 そうセファイラが唇を震えさせる。

「......なんだ?」

 セファイラが真顔になり、体をみている。

 その懐から一筋の光がこちらにうっすらと延びる。

「ジュウザイン!」

「くっ! ばれた!」

「問題ない! この距離ならあとは頼む!」

 エイゼルマンがそういうと、みんないっせいに飛び出した。

 セファイラの剣が高速で振り下ろされる。 

 ガチッ!

「なに!」

 おれは霊体糸を具現化《リアライズ》させ動かし、セファイラの腕を止める。
 
「もらった!」

 エイゼルマンの剣がセファイラの防ごうとした左腕をきりおとし、胴に入り込んでいく。

 ガキィィン!

「!!?」

 切り裂くはずの斬撃が胸辺りで止まる。 セファイラは腰にあった短剣を抜いた。

「ライディオ!」

 その瞬間、突然の輝きで目がみえなくなる。

 目を開けると、剣と魔石のそばにセファイラがいた。

「くそっ!」

「おしかったですね......」

 そういうと片腕て剣を抜き魔石とともに影へと消えていった。

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